暴君王子は恋を知る

まぁ

文字の大きさ
1 / 43

1

しおりを挟む
 何故自分がこんな場所にいて、こんな状況になっているのかわからない。
 自分は見慣れない部屋のベッドに横たわり、そして自分を見下ろす男。男は意地悪そうな笑みを見せた。
「恋がどんなものか知りたいのですよね?なら教えてあげますよ」
 いや、鈍感な自分でもこれが恋の手ほどきだとは思えない。しかし抵抗しようにも両手は男の手で拘束されている。このままでは危ない。どうすればいいのか……アンリは悩みに悩んだ。


 事はアンリがイギリスで仕事をしている時に起こった。
「な、なんだって!兄さんが日本で恋人を?」
 その知らせを知り合い筋から聞いたアンリは激高した。そして仕事を放り出して部屋を出ようとするので、秘書がアンリを止めた。
「アンリ様!どちらへ向かわれるのですか!」
「もちろん日本だよ!兄さんの恋人って奴を見に行く!ウィード!飛行機を直ぐに用意して!」
「し、しかし仕事は?」
「そんなの飛行機の中でも出来る!早くしてよ!」
 一度火が着けば止められない。そんなわがまま放題なアンリに秘書のウィードは大きなため息を漏らしながら、彼のプライベートジェットを手配する。
 アンリ・フリード・ヒースルーは世界的財閥のヒースルー一族の一人だ。歳は二十歳で、イギリスにある超有名大学を飛び級で卒業後、一族の束ねる会社の一部を任され今に至る。兄アレンはヒースルー一族が持つ貿易関係の会社CEOで、現在その日本支社に長期出張中だ。まさかそこで恋人を作るとは思いもしなかっただけに、その恋人がアンリも納得の才色兼備の超絶美女なのかを見ないと気が済まなかった。


 ロンドンから日本までは約十二時間のフライト。もちろん任された仕事は投げ出したわけではなく、ちゃんと飛行機内で行った。そして疲れ知らずのアンリはその足でアレンが買ったという日本のマンションへと向かった。
「山下陽菜?日本海運商事の特別編性の秘書課?その前は第二営業課って事は……かなりの才女?」
 兄アレンの恋人とされる山下陽菜について、このフライト中に調べさせていた。日本海運商事はアレンの会社の日本支社にあたる会社だ。しかも特別編成秘書課はアレン滞在中の身の周りの世話をする為の、元々ある秘書課でも更にエリート達で構成された課だ。そこに秘書課でもない第二営業課という部署から大抜擢された陽菜は、かなりの秀才なのだとアレンは思った。
「まぁでも……中身はどうあれ、顔は平凡だな」
 ザ・日本人女子と言った感じで、これといってとびぬけた美人でも可愛いわけでもない。アレンはそんな平凡、いわばモブな日本女子のどこがいいのか理解出来なかった。
 それからマンションへ向かっていると帰宅する山下陽菜を見つけたので、後ろから声をかけてみた。陽菜と対峙したアレン。エコバック片手に振り返った陽菜は目を丸くして驚いた。アンリが英語で声をかけたからだろうか、陽菜は覚えたてと言っていいほど酷い英語で対応した。
「酷い発音……」
 日本語で返してやると、陽菜はさらに驚き困惑したようだ。
「ねぇ、あんたがアレンの女?」
「えっ……いや、あの……」
 戸惑う陽菜に対し、とどめのように「おまえのようなブスにアレンは渡さないからな!」と言ってその場を後にした。
 兄は何がよくて陽菜を選んだのか理解出来ない。顔は平凡、英語も出来ない。理解に苦しむアンリが益々イライラする。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

炎の精霊王の愛に満ちて

陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。 悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。 ミヤは答えた。「俺を、愛して」 小説家になろうにも掲載中です。

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

処理中です...