暴君王子は恋を知る

まぁ

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 それからアンリは徹底的にアレンと陽菜の邪魔をしようとした。まずはアレンが買収したマンションに自分も住んだ。もちろん自分の部屋はアレンの隣だ。そしてアレンが会食がない日は必ず陽菜の部屋で食事をするので、邪魔をしてやろうと何故か自分も夕食を食べる。
(平凡女は料理まで平凡なのか?)
 食べさせてもらっているとはいえ、いつもは専属シェフが作った料理を口にしているアンリにとって庶民の味にはかなり疎かった。
 仕事も自分の持つ仕事をしつつアレンの手伝いもする。元々出来る子アンリは特別編成秘書課の面々からも重宝された。だが肝心のアレンは陽菜一筋で弟アンリに冷たい。というよりは相手にもしてくれない。苛立ちを見せながらも、これまで遊びのような恋愛ばかりをしてきた兄を知っている分、陽菜に対しては本気なのだというのも理解出来た。
 理解出来ないとは思いながらも、自分はこのまま兄の邪魔ばかりしていいのかという気持ちも芽生えてはきた。
 そんな気持ちを抱えながら、アンリはその日、日本のボーイズバーへと足を運んだ。兄にも一族にも黙っている自分の秘密。それは自分が男しか好きになれないという事だ。もちろん兄の事は好きだが、それは兄弟としてであってそれ以外の感情はない。そうは言っても二十年間恋愛をした事のないアンリは、恋がどんなものかも知らない。実際好きになった相手はいないが、女を見ても興味がわかず、逆にゲイ向けの雑誌を見てドキドキはしたものだ。なので自分の性指向は男なのだと思った。
 兄への気持ちを清算したいのか、自分も恋をしたいのかはわからないが、答えを求めてボーイズバーに来たのかもしれない。
「君、ここは初めて?」
 一人で飲んでいると、綺麗な英語で話しかけられた。振り返ると四十前後の男がそこにはいた。
「そうだけど何?」
「いや、一人で飲んでいる姿が目に入ってね。綺麗な子だし、声をかけてみたくなったんだ。みんなそうしたそうだったけど、君が外国人だから声をかけにくかったみたいだ」
 英語の話せる自分が声をかけたというわけか?だが男はアンリよりも背が高く、切れ長な一重の目にスッとした立ち姿。どこか一般的な人とは違う感じがした。もっと言うなら大人の、危険な感じがするのだ。危険を感じ去ろうとしたアンリだが、男の口車に乗せられ、男と酒を交わしながら会話をした。
「一体あのモブのどこがいいのかわからないけど……兄さんが恋する姿を見て今までとは違うんだって思えたよ」
 酒が回って来た頃、兄を追って日本に来た事などを放したアンリ。そんなアンリの話を男は聞いてくれていた。
「じゃあ君も恋をすればいいんじゃない?」
「恋?してみたいけど……でもわからない。恋ってなんだろ?」
「だったら答えは簡単だ。君は俺に恋すればいい」
「はぁ?なんであんたなんかに?」
「俺なら君を満足できるよ」
「自意識過剰……出来るものならさせてみろよ」
 そんな売り言葉に買い言葉のようなセリフを吐くと、男はにやりと笑みを浮かべた。
「俺の名前は和史だ。君は?」
「オレはアンリ……」
 名前を告げたがなんだか眠気が襲ってきた。今日は少し飲みすぎたのかもしれない。次第に意識が遠のいていくアンリが次に目を覚ましたのは見知らぬ部屋だった。 
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