私が死んだからって「彼のことは私に任せて!」とか勝手に言わないでよ!?

アニッキーブラッザー

文字の大きさ
5 / 5

5(ラスト)

しおりを挟む
『いやあ……君は凄い男の子と付き合っていたんだね……あんなかわいい子たちに加え、お姫様にまで好かれている男の子と……』

『そうっすね……つか、私はもう何で彼に好かれてたのかが、今になってよく分かんなくなってきました……』


 引き攣った顔で笑っている隣の幽霊のおじさんに私も項垂れながらそう言うしかなかった。
 妹。学園一の優等生。お姫様。なんで、この三人が同時に私の彼氏を寝取る宣言してるの!?


『嫌だなぁ……せめて成仏してからにして欲しいなぁ……していない間に、イチャイチャされたり……ましてや結婚とか……子供を見せにくるとか、そういうことあるかなぁ!?』

『あ~、あると思うよ? 成仏は個人差があるみたいで私もなんとも言えないけど、ほら、向こうのお爺さんは娘が結婚の報告に来たり、孫を連れてきたりとかってあるみたいだよ?』

『うおおおお、嫌だぁぁぁぁぁあ! そんなの耐えられないよぉぉぉぉお! なんとかできないのぉ!?』


 既に死んでいる私に何もできないし、ヴェリュートくんの幸せを考えたらってのもあるけど、心がどうしても許せないんだもん。
 何とかできないかな……せめて私が成仏するまで……ヴェリュートくんには私を好きなままで……

『なんとかか……まぁ、成仏するまでの間……』
『え!? 何かあるんですか!?』
『わわ、お、落ち着いて。いや、あまり……その……おすすめはしないんだけど……』

 そのとき、私は幽霊のおじさんの言葉に反応して、勢いよく詰め寄ってた。

『私たちは死んでしまっているので、この世の物とか人に干渉はできない……でも、『エクトプラズム』という魔法の一種で……ほんの一瞬だけ現実に干渉できるみたいなんだ』
『え……そんなことが!?』
『ああ。それでたまに肝試しにくる人とかを驚かしたりとか……かわいい女の子のスカートをめく……色々とあって、それで……』
『つまり、それをうまく使えば、皆の邪魔できたり怖がらせたり……うらめしや~! っていうのもできる!?』
『あんまり頻繁にはできないみたいだけどね……』
『よーし! そういうことなら、さっそく邪魔してくる! うおおおおおおおお、彼氏をまだ寝取られてたまるかぁぁぁぁあ!』

 なんと、幽霊にそんな力が……っていうか、幽霊の目撃情報とかひょっとしてそういう……まぁ、いいや。
 どうせ死んじゃってる私にできることなんて限られているし、死んだんだし、自分の気持ちに忠実に死後のライフを送ってやるんだから!
 そう心に決めて私は墓場から飛び出して……

『っていうか、墓場から幽霊って出れたんだ……なら、これからはヴェリュートくんの家に侵入できたり、部屋も、お風呂も……のぞき放題!? でへ、でへへへへ』

 あれ? なんか少し楽しくなってきたような……ん? いや!
 目的を忘れちゃダメだ。
 何故なら、私の彼氏を寝取ろうとするメギツネたちを見つけたからだ!

「えっと、あの……どうしたんだよ、みんな」

 うおおおおい、困った顔している私の彼氏を取り囲んで……

「ちょっと、いい加減にしてください。先輩は傷ついているんです。今は姉さんの妹として私が……姉さんに託されたのは私です!」
「何を言っているの? 親友の私が託されたのよ?」
「あら? 好敵手たるワタクシですわ」

 この野郎、覚悟しろ!
 どさくさに紛れて三方向からヴェリュートくんにくっついて、密着したり、おっぱい当てたり、三人密着して……三密は許さないから!


『くらぇぇぇえ! よくわかんないけど、えくとぷらずま~~~~!』

「「「ッッッ!!??」」」

「えっ、あっ!?」


 そのとき……私の放った何かしらはイタズラな風となって、三人のスカートを捲って……妹ピンク!? 親友白!? 姫紐!?
 
『あああああ、違う違う! こんなラッキーエッチな風……うわ、ヴェリュートくんが顔を背け……いや、これでいいのかな? これで三人が、今の見た? エッチ! 変態! もう知らない! なんて三人が怒れば……』

 すると、スカートを抑えた三人は顔を赤らめながら……

「ふふ……先輩に見られちゃいました♡」
「んもう、ヴェリュートくん……見たわね♡」
「おほほほ、見ましたわね♡」

 こいつらなんか誘惑できた?! 的なことを……このビッチどもめぇ! 私の感動を返せええ!


「ちが、今のは……その……」

「んもう、先輩ったら……でも、いいです。先輩なら……。ふふ、さぁ、学校へ行きましょう?」

「ほら、行くわよ。別に怒ってないし、気にしてないし……こんなのであなたが少しでも気がまぎれるなら……これからいくらでも……」

「ふふん、責任……取ってもらいますわよ?」


 そして、もはや私の気持ちなんて一切分からない三人は、私の彼氏と一緒に登校しようとしている。
 その瞬間、私の中で成仏するまでにやることが決まった。


『幸せになるのは……もうちょっと待っててね、ヴェリュートくん……私がまだ成仏しない間は……彼女なんて作らせないんだから! 勝負だよ、システィア! デイレちゃん! 姫様ッ!』


 大好きな彼氏を寝取られないように、怨霊となって邪魔しちゃうんだから!

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です

くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」 身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。 期間は卒業まで。 彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。 7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。 ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。 ※よくある話で設定はゆるいです。 誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...