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第6話 不意に出た言葉(2)

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 アークスは何を言った? どうしてそんなことを言った? 互いに訳が分からず呆然とする二人……だが……


「デリート」

「「ッッ!?」」

 
 二人の疑問に対して周囲は待ってはくれない。
 突如響いた抑揚のない声と共に、洞窟の天井に亀裂が走って崩落。
 このままでは生き埋めに――――

「させません! アークス、私の傍から離れないでください」
「はい、分かりました!」

 だが、次の瞬間クローナがその両手に二丁の銃を構えて上に向ける。
 禍々しい漆黒の二丁銃。


「穿て! 我が、『魔砲銃プルート』! 冥王の風……プルートウィンドシューーートッッ!!」

 
 銃から放たれたもの。それは荒ぶる風。
 クローナとアークス以外の周囲のものを全て吹き飛ばす荒々しい竜巻だった。

「わ、すご……お、おお……」

 可愛い顔に似つかわしくないほどの荒々しい力にポカンとしてしまうアークス。
 
「ふふん、どんなもんだいです……といきたいところですが……」
「うおっ!?」

 一瞬だけ「ふふん」とドヤ顔をするクローナだったが、すぐに苦笑する。
 それは、崩落する洞窟の天井も壁も全て吹き飛ばして、外に出てしまったことで、状況を二人は理解する。

「な、なん、こ、こいつは……」

 洞窟の外に居たのは、鉄の髑髏の顔をした謎の者たち。
 全身が鋼のようなもので出来ている。
 それが、まったく同じ顔と体躯の者が5人。
 いや、そもそも「人」なのかすらも分からない。

「デリート」
「デリート」
「デリート」
「デリート」
「デリート」

 そして、その5人は同時に同じ声で同じトーンで同じ言葉を口にした。

「なん……だ、こいつら……」
「キカイが5人も……」

 突如現れた謎の集団が徐々に自分に近づいてくる。
 その異様な空気にアークスは怯えて後ずさりする。
 この者たちは一体誰なのか? 何者なのか? 自分に何の用なのか?
 恐る恐る目の前の者たちの様子を伺うアークス。
 しかし同時に……

「なに、こいつら……分からない……だけど……」

 恐怖と共に別の感情が沸き上がり、気付けば……


「こいつら……オイシソウ……」

「逃げます、アークス! ……へ?」

「はい、逃げます! ……え?」

 
 またアークスは妙なことを口にした。
 だが、それでも先ほどと同様、目の前の者たちは一切待ってくれない。

「デリート」

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