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第17話 子守歌(1)
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――俺は死んだのか……?
深く暗い海の底のような世界で漂いながら、声が聞こえた。
それは自分の声だとアークスは気付いた。
するとその問いかけに答える声があった。
――死んでねえよ。ただ、普通ではなくなっちまったが……許してくれ……そうしなければお前は……あの事故で本当に……
聞こえてくるのは自分に対する懺悔の言葉。
本当に申し訳なさが滲み出ているような声だった。
――俺はもう……『人間』じゃないのかなぁ?
――『人間』だよ! お前はお前のままだ! ただ、色々な部分を人工物で代用してはいるけど……『人間』だ!
――それって『改造人間』ってやつなの?
――『人間』だ
――それって、『人間』って言うのか?
誰と会話しているのか分からない。だが、態度や会話の様子から、その人物が自分ととても近しい存在であることがうかがえる。
ただし、その者が誰で、どんな顔をしているのかも思い出せないのだが……
――バカ野郎! お前は人間だ! お前はこうして生きている! 悩むし、怒るし、笑うし、そりゃちょっと他人とは違うかもしれないけど、お前は生きている!
生きている。
それは誰の声かは分からない。
――こんなんで……人間って言われても……
――に、人間だって! えっと、そう! 女の子とエッチなこともできるぞ! それに、お前は強くて何でもできるようになったぞ! 力持ちだ!
――……何でもって……
――何でもだ! おう、間違いない! お前の辞書に不可能という文字はない!
その者の言葉に込められた想いが、アークスには非常に温かく、そして心に染み渡るような気がした。
しかし、同時に切なくもなった。
そして同時に……
「~~~♪」
意識の中から聞こえる会話とは違う声が……いや……歌が聞こえた。
温かく、優しく、癒されるような……でも……少し悲しい雰囲気がする。
その歌に引っ張られるように、アークスの意識が海の底から引き上げられる。
そこでようやく体の感覚が戻り、アークスはゆっくりと瞼を開けた。
「~~♪ あ……あら?」
「あんたは……」
後頭部に感じる柔らかい感触。
額に感じる優しく撫でられる手。
そして、瞼を開けて真っ先に目に入ったのは、少し瞳に涙を浮かべていたものの、自分と目が合った瞬間に笑顔を浮かべる美しい少女。
その表情に見惚れてしまい、一瞬言葉を失ってしまった。
「おめざめですか? おはようございます」
「あ、お、おはよ……えっと……クローナ……っ、お、お姫様だよな?」
「はい。ご無事で何よりです。お互いに。あと、クローナでいいですよ?」
「いや、でも……」
「でもではありません! 『クローナと呼びなさい』!」
「はい、呼びます……あれ?」
「はい、よろしいです♪」
思わず名前を呼び捨てにしてしまったが、目の前の少女が姫という高位の身分であることを思い出して慌てるアークスだったが、クローナはそのことを一切気にすることなく、ただ目が覚めたアークスの様子に安堵しているようだった。
深く暗い海の底のような世界で漂いながら、声が聞こえた。
それは自分の声だとアークスは気付いた。
するとその問いかけに答える声があった。
――死んでねえよ。ただ、普通ではなくなっちまったが……許してくれ……そうしなければお前は……あの事故で本当に……
聞こえてくるのは自分に対する懺悔の言葉。
本当に申し訳なさが滲み出ているような声だった。
――俺はもう……『人間』じゃないのかなぁ?
――『人間』だよ! お前はお前のままだ! ただ、色々な部分を人工物で代用してはいるけど……『人間』だ!
――それって『改造人間』ってやつなの?
――『人間』だ
――それって、『人間』って言うのか?
誰と会話しているのか分からない。だが、態度や会話の様子から、その人物が自分ととても近しい存在であることがうかがえる。
ただし、その者が誰で、どんな顔をしているのかも思い出せないのだが……
――バカ野郎! お前は人間だ! お前はこうして生きている! 悩むし、怒るし、笑うし、そりゃちょっと他人とは違うかもしれないけど、お前は生きている!
生きている。
それは誰の声かは分からない。
――こんなんで……人間って言われても……
――に、人間だって! えっと、そう! 女の子とエッチなこともできるぞ! それに、お前は強くて何でもできるようになったぞ! 力持ちだ!
――……何でもって……
――何でもだ! おう、間違いない! お前の辞書に不可能という文字はない!
その者の言葉に込められた想いが、アークスには非常に温かく、そして心に染み渡るような気がした。
しかし、同時に切なくもなった。
そして同時に……
「~~~♪」
意識の中から聞こえる会話とは違う声が……いや……歌が聞こえた。
温かく、優しく、癒されるような……でも……少し悲しい雰囲気がする。
その歌に引っ張られるように、アークスの意識が海の底から引き上げられる。
そこでようやく体の感覚が戻り、アークスはゆっくりと瞼を開けた。
「~~♪ あ……あら?」
「あんたは……」
後頭部に感じる柔らかい感触。
額に感じる優しく撫でられる手。
そして、瞼を開けて真っ先に目に入ったのは、少し瞳に涙を浮かべていたものの、自分と目が合った瞬間に笑顔を浮かべる美しい少女。
その表情に見惚れてしまい、一瞬言葉を失ってしまった。
「おめざめですか? おはようございます」
「あ、お、おはよ……えっと……クローナ……っ、お、お姫様だよな?」
「はい。ご無事で何よりです。お互いに。あと、クローナでいいですよ?」
「いや、でも……」
「でもではありません! 『クローナと呼びなさい』!」
「はい、呼びます……あれ?」
「はい、よろしいです♪」
思わず名前を呼び捨てにしてしまったが、目の前の少女が姫という高位の身分であることを思い出して慌てるアークスだったが、クローナはそのことを一切気にすることなく、ただ目が覚めたアークスの様子に安堵しているようだった。
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