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第3話 『よろず屋やまとなでしこ』の日常
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普段の継は『よろず屋やまとなでしこ』という、いわゆる何でも屋を経営している。
昨日の依頼は、家から逃げ出してしまったという猫の捜索と捕獲だった。
週に数回ほど持ち込まれる依頼は、迷子猫の捜索だけでなく、失せ物探しや、植木の剪定など多岐にわたる。
「けど、『後はよろしくー!』とか言って、俺に最後、猫を送り届ける役目を押しつけて、勝手に帰るとか意味わかんねー」
少しして、マグカップを二つ持った柊也が台所から戻って来た。
可愛い動物のキャラクターが描かれたマグカップの方を、継に差し出す。
「見たいテレビがあったんだよ。先週からずっと続きが気になっててさ」
継は、およそ成人男子には似つかわしくないであろうそれを嬉しそうに受け取ると、空いている方の手で机の引き出しを開けた。
そこからシュガーポットとコーヒーミルクの入っている容器を、いそいそと取り出す。
継専用のもので、ご丁寧に『社長専用』と書かれたシールが貼ってある。
その後、継は綺麗に流れるような動作で、コーヒーに砂糖とミルクをたっぷり入れた。
同じ動作を、何度も何度も繰り返す。もはや数回どころではない。
柊也の持ってきたコーヒーは、みるみるうちにブラックからホワイトコーヒーへと華麗な変貌を遂げた。
いつもと何一つ変わらない光景をぼんやり眺めながら、柊也は傍のソファーに腰を下ろす。
自分専用の、何の装飾もないシンプルなマグカップを静かにテーブルに置き、口を開いた。
「そんなもん、録画して後からゆっくり見ればいいだろ」
「柊也、何言ってるの!? 君は何もわかってない! リアルタイムで見たいんだよ!」
柊也の言葉に、継が大声で反論する。
「ますます意味わかんねーよ! 『何言ってるの』はこっちの台詞だ!」
意味不明のこだわりを披露する継に、柊也が仰々しく溜息をついてみせた。
「あ、そうだ。今日のおやつは?」
継が思い出したように手を叩き話題を変えると、柊也はさらにもう一つ大きく息を吐く。
「あー、はいはい。おやつねー」
仕方なしに、柊也が鞄と一緒に置いてあったエコバッグに手を突っ込むと、継は興味深そうにその手元を覗き込んだ。
そして出てきた物を見て、今度は露骨に不機嫌な顔をする。
「何で今日も煎餅なのさ! コーヒーには合わないから、ケーキにして!」
いい歳をして駄々をこねる大きな子供に、柊也が改めて切れた。
「煎餅しか買ってねーよ!」
「何でだよ!」
「俺が食いたいからだよ! そんなにケーキが食いたきゃ自分で買ってこい! だいたい、俺が買い物してくる代わりに好きな物買ってきていいって言ったのアンタだろーが!」
「確かにそれは言ったけどさぁ、もうちょっと社長に対する敬意みたいなのはないわけ!?」
「そんな大層なもん持ち合わせてねーよ!」
傍から見れば、とても馬鹿らしい言葉の応酬を繰り返す二人。
これが『よろず屋やまとなでしこ』の日常である。
しかし、このまま延々と続くかと思われたそれを、ふと小さな声が遮った。
「……あの、すみません……」
柊也と継が揃って、反射的に声のした方へと顔を向ける。
事務所のドアが少しだけ開いていて、そこから恐る恐る顔を覗かせる女性がいたのだった。
昨日の依頼は、家から逃げ出してしまったという猫の捜索と捕獲だった。
週に数回ほど持ち込まれる依頼は、迷子猫の捜索だけでなく、失せ物探しや、植木の剪定など多岐にわたる。
「けど、『後はよろしくー!』とか言って、俺に最後、猫を送り届ける役目を押しつけて、勝手に帰るとか意味わかんねー」
少しして、マグカップを二つ持った柊也が台所から戻って来た。
可愛い動物のキャラクターが描かれたマグカップの方を、継に差し出す。
「見たいテレビがあったんだよ。先週からずっと続きが気になっててさ」
継は、およそ成人男子には似つかわしくないであろうそれを嬉しそうに受け取ると、空いている方の手で机の引き出しを開けた。
そこからシュガーポットとコーヒーミルクの入っている容器を、いそいそと取り出す。
継専用のもので、ご丁寧に『社長専用』と書かれたシールが貼ってある。
その後、継は綺麗に流れるような動作で、コーヒーに砂糖とミルクをたっぷり入れた。
同じ動作を、何度も何度も繰り返す。もはや数回どころではない。
柊也の持ってきたコーヒーは、みるみるうちにブラックからホワイトコーヒーへと華麗な変貌を遂げた。
いつもと何一つ変わらない光景をぼんやり眺めながら、柊也は傍のソファーに腰を下ろす。
自分専用の、何の装飾もないシンプルなマグカップを静かにテーブルに置き、口を開いた。
「そんなもん、録画して後からゆっくり見ればいいだろ」
「柊也、何言ってるの!? 君は何もわかってない! リアルタイムで見たいんだよ!」
柊也の言葉に、継が大声で反論する。
「ますます意味わかんねーよ! 『何言ってるの』はこっちの台詞だ!」
意味不明のこだわりを披露する継に、柊也が仰々しく溜息をついてみせた。
「あ、そうだ。今日のおやつは?」
継が思い出したように手を叩き話題を変えると、柊也はさらにもう一つ大きく息を吐く。
「あー、はいはい。おやつねー」
仕方なしに、柊也が鞄と一緒に置いてあったエコバッグに手を突っ込むと、継は興味深そうにその手元を覗き込んだ。
そして出てきた物を見て、今度は露骨に不機嫌な顔をする。
「何で今日も煎餅なのさ! コーヒーには合わないから、ケーキにして!」
いい歳をして駄々をこねる大きな子供に、柊也が改めて切れた。
「煎餅しか買ってねーよ!」
「何でだよ!」
「俺が食いたいからだよ! そんなにケーキが食いたきゃ自分で買ってこい! だいたい、俺が買い物してくる代わりに好きな物買ってきていいって言ったのアンタだろーが!」
「確かにそれは言ったけどさぁ、もうちょっと社長に対する敬意みたいなのはないわけ!?」
「そんな大層なもん持ち合わせてねーよ!」
傍から見れば、とても馬鹿らしい言葉の応酬を繰り返す二人。
これが『よろず屋やまとなでしこ』の日常である。
しかし、このまま延々と続くかと思われたそれを、ふと小さな声が遮った。
「……あの、すみません……」
柊也と継が揃って、反射的に声のした方へと顔を向ける。
事務所のドアが少しだけ開いていて、そこから恐る恐る顔を覗かせる女性がいたのだった。
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