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第48話 危険な非日常の女
しおりを挟むその日、道場から自宅までの道のりを、とぼとぼ歩く女の子が一人
彼女の名前は千代。元気いっぱいの彼女だが、訳あって今日は少し落ち込んでいた
「ライバル・・・か」
みるみる強くなっていく服部半蔵と、置いていかれる自分。もしかしたら、ライバルと思っているのは私だけで、はんぞうは私なんて眼中にないのかもしれない
今日は一度もはんぞうに勝てなかった・・・ 相手にされなくなっちゃったらどうしよう。弱いお前なんか知らないって言われたらどうしよう
そんなの、嫌だよ・・・
「もっと・・・もっと強くならなきゃ。はんぞうを満足させるくらいに」
ぽつり、と呟く。夕焼け空に、ひぐらしの鳴き声。人通りの少ない道を、一人で、歩く。
すると突然、背後からたくさんの足音が。なんだろう、と振り返ると そこには、見知らぬ男達が十人ほど。
「お嬢ちゃん、服部半蔵という男を知っているね?」
「・・・知ってますけど」
恐る恐る、と言った感じで答える。見知らぬ男に囲まれているのだ。女の子なら、身の危険を感じるのは当たり前だろう。
「いま、その男がどこにいるのか分かるかな。分からなければ、どこに住んでいるのか教えて欲しいんだけど」
「・・・どうしてです?」
「捕らえるためだ」
「なっ・・・」
「私たちは、王の命令により服部半蔵を探している。情報提供を願いたい」
王の命令って、じゃあこの人たちは兵士ってこと?!なんではんぞうが兵士に追われているの?!
「し、知らないです。ごめんなさい」
ぺこりと頭を下げ、足早に逃げようとする女の腕を 一人の兵士が掴む
「ちょっと、離してください!」
「まぁ待ってよ。嘘をつかれていては困るからね。・・・おい、やれ」
命令された一人の男が刀を抜く。そして、切っ先を女の額に当てると そのまま目をのぞき込まれる
「お嬢ちゃん。俺の目をよーく見るんだ」
「い、いや!」
直感的。服部半蔵の居場所を教えてはならない。この男たちの言うことを聞いてはいけない!
パシィン!
鋭い痛みが頬を襲う。じんじんする頬を抑えていると、顎を強引に引かれ、無理やり目を合わせられる
「服部半蔵の居場所をしっているか。嘘はつかない事だ、俺の魔刀は嘘を見抜く」
「・・・しらない」
直後、男の魔刀が激しく光る。どうやら嘘がバレたのだろう、このままでは何をされるか分からない!
刀に手を伸ばし、男に向けて抜刀。男は身を引き間合いをとる
「おーおーおー。元気のいいお嬢ちゃんだね」
「私は、友達を売るなんて真似、絶対しないから」
全身から魔力を出す。体に纏い、刀を構える。
「へへ、なら無理やり吐かせないとなぁ」
「結構かわいいじゃん。可愛がってやろうぜ」
多数を相手にするのは不利だ。隙を見て逃げるしかない・・・
「おいお前、お嬢ちゃんを捕らえてみろ」
「へ、僕がですか?」
一番小さな男が驚く。私よりも小さいな、歳もそこまで高くなさそうに見える
「弱いお前だ。このお嬢ちゃんとなら、少しはいい経験が積めるかもしれない」
「そうですかね・・・ なんの経験にもならないと思いますが、先輩が言うならやりますよ」
なにやら、一人で相手してくれるらしい。こちらとしては好都合。全員で来られていたら、逃げ出す隙も無かっただろうから
「じゃ、お姉さん。行きますよ」
心の底でほっとしたのもつかの間、男が刀を抜いた瞬間。姿を見失う
「お姉さん、後ろです」
「っ!?」
ガキン!
咄嗟に振り向き受け止める。しかし、そこにはもう男の姿がない
瞬間、背中を蹴られ 肺から空気が強制的に出される
「かはっ!」
飛ばされ、受け身を取れず、ぐしゃりと倒れ込む。後ろからは、男たちの歓声が聞こえてくる。
ごほっごほっ、と咳き込んでいる所。髪を握られ、無理やり顔を上げさせられる
「っ・・・!」
「お姉さん、ホントの事言った方がいいよ。僕だからこれくらいにしてあげてるけど、先輩たちはもっとヤバいから。乱暴されたくなかったら、友達の居場所を教えるんだ」
「い、いや・・・」
「そっか。残念だよ・・・ せんぱーい、捕らえました」
続々と、周りを囲む男たち。乱暴されるというのは、そういう事だろう。女の目に、涙が溢れる
あーあ。初めては、はんぞうとが良かったのに
「はは!いいねぇその表情!ゾクゾクしてきたぜ!」
「長旅でご無沙汰だったからなぁ。みんな、兵長には内緒だぜ?」
「わーってるよ、お嬢ちゃん。俺たちを楽しませてくれよ?」
強引に仰向けにされ、着物に手をかけられる。
涙が頬を伝い、地面に落ちた。
その時
「うちの生徒から離れてもらえますか?」
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