堕天使 ～地獄に行かずに異世界に来た～

episode1 堕天使 異世界に行く？

「ぎゃー！！！！！わしの真っ白なペガサスがシマウマ柄にペイントされてる！！！！！」

「キャー！！！！！わたしが丹精込めて育てたお野菜が食べられている！！！！」

「ブフォ！！！！！オレの極上の酒がメンツユになってるぅぅぅぅぅぅ！！！！」

「イヤァ！！！！！寝てる間に妾の美しい顔が落書きされてるうううぅぅぅぅぅ！！！！」

「「ギャァーーーーー」」「「グワァーーーー」」「「ドリャァーーーー」」




普段は、静寂に包まれた世界が、今日はあちらこちらで叫び声が上がってる。




「「「「もう、ぜったいゆるさーーーーーーんん！！！！！」」」」




此処は神々と、その眷属が住まう世界。【天界】




その天界を混乱させている”堕天使ルシファー”

本当ならアケロン地獄から出れず管理しているはずなのに、何故かちょこちょことアケロン地獄を抜け出しては、天界で悪戯をし混乱させている。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「ルシファー！！！！まいどまいどアケロン地獄を抜け出しては、悪戯ばかりしおって、いい加減にせんかぁーーーーーー！！！」




宮殿の一室からゼウスの怒声が響き渡る。




「えーっと、父上殿、ごめんなさい？しかし、この行為には諸事情がございまｓ....。」




「言い訳をするんじゃなーーーーーい！！！」




「父上殿、あまり怒りますと血圧が上がりますよ？」




「だ、だれのせいで怒ってるとおもってんのじゃーーーー！！！」




「あらあら、まあまあ、あなたも、その辺で許してはいかがですか。ルシフェルも反省しているみだいですし。」




ゼウスの正妻ヘラがゼウスを宥める。




「しかしなぁ、ヘラよ、ペルセウスのペガサスをシマウマ柄にするわ、デーメーテールが育てた野菜を食いつくわ、バッコスの酒と麺つゆをすり替えるわ、アプロディーテーの顔に落書きをするわ、その他の神々からも、ルシファーの悪行の苦情が多々寄こされてるのじゃ。」




「あらあら、まあまあ、元気があって良いじゃありませんか。あなたも若い頃は随分とヤンチャしていたじゃありませんか。浮気したり、ウワキしたり、うわきしたり.....。（ジロリ）」




優れた情報収集力を持つヘラは、非常に嫉妬深くゼウスの浮気を監視していた。




「うっ、ご、ごほん、ルシファーよ、なぜ、アケロン地獄から抜け出せる？アケロン地獄から脱出が出来ない様に結界が施されているのに？」




「えーっと、ノリと勢い？......。かな？」




「ノリと勢いでアケロン地獄から出られる訳ないじゃろうぅ。わしの神威で結界を施してるのに！！！」




「父上殿、ちょっと親子喧嘩したからって、可愛い息子をアケロン地獄に閉じ込めて、無理やり統治させるなんて、パワハラですよ！」




「ああ言えばこう言う屁理屈ばかり言いおって、もう許さん！今度こそアケロン地獄から出られない様にしてやる。覚悟しなさい。」




ゼウスが叫ぶとルシファーの後方に大きな扉が現れた。




「あらあら、まあまあ、ルシフェル、もうアケロン地獄に帰るの？それじゃあ”ママ”も後で行くわ。美味しいお茶とお菓子を用意しといてね。」


まるで隣に住む息子の家に行く様な、軽い口調で言い放つヘラ。

隣ではゼウスが頭を抱えていた。



「いやいや、母上殿、僕はまだアケロン地獄には帰りませんｙ....。」




「何を言っておる！！！早よ行かんかぁぁぁ！！！」




ゼウスが叫ぶとルシファーの足元がバコーンと抜けた。




「あわあわ、父上殿、何をするぅぅぅ！？落ちるぅぅぅ！！！ギャー、クソ親父ぃぃぃ。覚えていろｙ.....。」




真っ逆さまに奈落へと落ちて行くルシファーは、微かな声を聴いた。




『かみさま、たすけて。』