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聖女召還

じゅう☆

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「え、フェルトナリウス様、ここから居なくなっちゃうんですか?」

晴天の霹靂。

「そうだ」

お腹も痛くなくなったので、パンツでも絶好調な私は図書室に来ていた。そこでまた、たまたまフェルトナリウス様と出くわした。仕事も一段落つく、との報告と共にこれだ

「何でなんですか!?」

「元来、私はこの宮の住人ではない。領主の命により滞在していたまでです」

「そんなぁ~」

なんたる事だ…フェルトナリウス様がどっか行っちゃう…

「それって、もう会えないってことですか?また会えます?」

「……………私は、本来ならばここへはこないほうが良い人間なのだが…そうですね、貴女がこの宮より他所に行くことになったのならば、会う機会があるかもしれませんね。」

それって、会えないって事じゃないか…
勝手に仕事をふってくるロン毛鬼畜美形野郎と憎たらしく思ったりもするけど、ここで、初めて心を開けた人だ…
それなのに、会えなくなるなんて…親友になれるかもって勝手に思ってたのに。

「……」

「ナスカ、何を拗ねているのです」

「………拗ねてませんっ」

フェルトナリウス様がこめかみを揉みだした

「ふむ、」

「べつに、会えなくなるのが寂しいとかじゃ無いですから。私は精々しますからっ」

「そうか」

「お手紙とか、出せますか」

「緊急の用以外はあまり受け取らないな」

もう!もう!もうもうもう!
むっとしちゃう!フェルトナリウス様は寂しくないのか

「私がこの宮を去る日は後3日ほどです」

「そんな!」

一週間も無いなんて!

「ナスカ、貴女はこれからどうするつもりです」

フェルトナリウス様は、今後は決まりましたか?と深い、深い、青い目で見つめてきた。まるで星が輝く美しい夜みたい。ここの空は明るい。星の数が地球にいた時より遥かに多いし、美しい。

「………やっぱり、私もここを、出たいです。仕事も、今までの生活も全部奪われたに居たくない。」

「……ここを出てどうする」

「昨日、リュンデルさん達とお裁縫したんです」

「貴女は針子になりたいと?」

「いえ!そうじゃなくって…向こうで、そう言うのが趣味だったのを思い出しました。」

フェルトナリウス様はじっと聞いてくれてる

「好きなものに囲まれて生活したいなって、お洋服とか、アクセサリーとか作ったり、料理したり。家庭菜園とかもしたい。自由気ままに、今までみたいに。仕事はそのうち、よく知ってから就ければなって。」

それって、甘いですか?とフェルトナリウス様に尋ねた。

「そうですね…」

フェルトナリウス様は何かを考えてる

「それに、向こうでは独り暮らしだったんです。街に出たいです。ここだと、なんだか…」

「ではナスカ、私と一緒に来ますか」

「へっ?」

何だって!?どうしてそうなった!
フェルトナリウス様の頭のなかでなにか繋がったらしい。やけにイキイキした顔になった。気がする。

「私と一緒に神殿に来なさい。」

「え、ええええ!?」






「………フェルトナリウス様、神殿の方だったんですね…」

私の部屋にフェルトナリウス様と移動してきた。

「知らなかったか?私は神官達を束ねる職に就いている。」

「聞いてないです!」

「わたくしはてっきりご存じかと…」

リュンデルさんがお茶を入れてくれながらそう言う
私も聞かなかったし、悪いんだけどさ…誰か1人でも教えてくれたって良いじゃない!

「だって…全然神殿の人っぽくないんだもん。フェルトナリウス様の服装とか…気付かなかったですよ…」

「それもそうだな。今は神殿での仕事で参ったわけでは無いので、神官服ではなかったな」

「学者さんとか、執務官とか、そう言うのかと思ってました」

フェルトナリウス様の長い髪しかり、暗い色で首もとまで詰めてる地味な服。私の中のイメージの昔の学者っぽい感じでそう思ってた。ミニ教会でもお祈りとかしてるの全然見なかったしね!!

「だが、髪型で解っただろう」

「………髪がどうしたんですか」

「髪が長いのは神殿に入っている証だ。教会では髪の長さでほとんどどの位置に居るかが分かる。」

「しらないですよぉ」

もー!何なのその無駄設定は!
フェルトナリウス様が説明してくれた話では、こうだ。

神殿に所属すると、皆髪を伸ばす。何でも魔力は髪にも宿る、的なあれで。それで立場によって伸ばせる長さが決まっていて、だいたいの長さで位が分かるそうだ。
後は細かく有るけど、服の色で神官達を見分ける。平民とか、誰かに追従してる、とか。黒、灰色、藍色、青、水色、白とだんだん明るい服になるそうな。
白は神殿長だけで、水色は、フェルトナリウス様ともう1人居るだけ見たい。
そこに髪の長さが加わる。どういう位なのかって。
貴族なのか、平民なのか、とか。

「ややこしいですね…」

「そうだな。初めは覚えるのに苦労するであろう。だが同じ青でも、貴族内で下級貴族、上級貴族となどあるから、何かと便利だが……」

「なるほど、」

その為の髪の長さ、って訳ね。

「フェルトナリウス様が神殿に招待してくれるのは、私が聖女の儀式でこっちに来たからですか?」

「儀式は一切関係無いが?」

「え!聖女って、神殿での保護対象とかじゃないんですか?」

「なぜだ。聖女を保護するのは、主に領主、ひいては王だ」

「そうでございますね。聖女様は領主の領分でございます」

リュンデルさんまで!また呆れてる!!?

「だからは領主の息子さんが…てっきり、聖って付くくらいだから聖なる者として神殿での管轄かと思っちゃいました。」

「ナスカ、疑問に思ったら周りの者に直ぐに聞きなさい。」

あ、フェルトナリウス様がこめかみを高速で揉んでる。

「はぁい。そうします」

「とにかくだ、聖女は関係無しに、街へ降りたいのならば、神殿へ行き、私の手伝いをしながら商人などを紹介するので、そこで街へ降りる手助けをしよう」

なんと!フェルトナリウス様優しい!!

「良いんですか!」

「あぁ。学びながら、慣らせばよい。但し、私の手伝いをすることが絶対の条件だ。」

「…………さいですか、」

フェルトナリウス様、絶対それがしてほしくってこの案出したとか無いよね…

「ナスカはあまりにも常識とかけはなれている。おちおち世に解き放ってはならないからな。」

「え!ひどい!そこまで常識外れじゃないですよね?」

パッとリュンデルさんを見たら、そっと目を伏せられた。なんで!

「では、私は神殿の方に話しておこう。失礼する」

席をたったフェルトナリウス様にあわてて付いていく

「あ、フェルトナリウス様!ありがとうございます!」

「良い。リュンデル、後は頼む。では」

「かしこまりました」

そのまま出て行くフェルトナリウス様。
リュンデルさんは片手を胸に当て、膝を折った
たまにその仕草してる人居るけど何だろ

「リュンデルさん、その胸に手を当てるやつ、なんですか?」

わからない事は、直ぐ聞く、ね
にこりと笑ってリュンデルさんは教えてくれた。

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