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崩壊と創造
そして夜が明ける*4
しおりを挟むーーーーー騒ぎを大きくしたくせに、呆気ないな。
グレンリオは火が鎮火するまで部屋を氷付けにしたままにして置こうと、ゲシュタだけを引きずりながら執務室の入り口を凍らせて固めた。
「あ!団長!」
煤だらけのハインリヒが数名の部下を引き連れて消火しながら近付いて来た。
「そっちは終わったか?」
「指示系統は出してあります。」
「そうか。とりあえず、これ。」
そう言ってゲシュタを投げた。
音を立てて崩れ落ちるゲシュタにハインリヒが喜びの声を上げた
「無事捕縛出来たんですね!」
「……死にたくなるくらいに呆気なかったけどな」
「呆気なくは無いですよ…残念なことに、火が鎮火出来そうもありません……」
視線をそらしハインリヒが頬を掻いた。
「………何……?」
「………すみません。現状なんですが、聖殿内の粗方の避難は済みまして、消火活動を騎士団総出で当たり始めた所、消火がすんだ部屋からまた発火する、という事態が発生し、確認しました所、発火原因の媒体が無くならない限り鎮火しないであろう、と判断しました。」
「それで?媒体の心当たりは?」
簡単には帰れそうもない事にグレンリオは悪態をつきたくなったが、ハインリヒが申し訳なさそうに犬のように見ているので、ガシガシと頭を掻くだけに留めた。
「は!何個か小指の先ほどの球体状の結晶石から発火を確認したので破壊したところ、その場所での発火が止まりましたので、それが媒体かと。今は、消火が済み次第、その部屋での媒体捜索及び回収をさせております。」
「……わかった。時間がかかりそうだな」
「……はい。森での発火も確認出来たので、大半はそちらに向かわせたので、聖殿内は人員不足に陥り、騎士団本部に救援を要請したところであります」
「まあそれだけしてあれば、十分だろう。ハインリヒ補佐官。お前は数名を連れて王宮へゲシュタを輸送。俺は魔力が有り余ってるからとりあえず消火をしよう。本部からの増援を急いで貰え。本格的な媒体探しは増援が来てからだな」
「はい!」
ハインリヒは部下とゲシュタを抱えサッと立ち去った。
残されたグレンリオはバキバキ音をたて燃えていた後ろの部屋を消火しようと魔法を放ちながら後ろを向くと、足にカシャンと何かが当たった。
ーーー鍵の束かーーー?
ゲシュタを投げた時に落ちたのだろうか。
「ーーーーとりあえず持っておくか」
ゲシュタが持っていたなら何か証拠が出てきたときに役立ちそうだ。
そうして消火しながら、とりあえず1階を目指した。
ーーーーーーーーーーーーーー・・・・・
ーーーーーーーーーーーー・・・・・・
グレンリオは慌ただしく、地下に向かっていた。
無事1階に着いたは良いが、やはりと言うか。
避難した人の中に、聖女達が居なかったのだ。
住居棟の聖女達に宛がわれて居た所は暫く使われていた痕跡が無く、もぬけの殻だった
あと捜索出来て居ないのは地下だったが、魔法が掛かっており鍵が無ければ入れない様になっていたのだ。
そこにアン修道女にちょうど話を聞いていたガーランの元にタイミング良くグレンリオが到着してしまった。
アン修道女いわく、地下は聖女達が使う祈りの間で正聖女様が聖務ーー聖女の教会の仕事や各地に赴いて、祈りを捧げたり治療に当たることを教会は聖務と言ったーーに出られる以外は祈りの間に居るから自然と他の聖女達も祈りの間に居るのだと。
祈りの間の他にも儀式の間もあるので関係者以外は入れない様にゲシュタが鍵を基本的に掛ける、と。
そこまで聞いたグレンリオはポケットの鍵の束が音を立てたのと同時に走り出した
「団長!?」
「お前達はとりあえず消火を続けろ!ゲシュタ枢機卿の鍵は俺が持ってる!」
タイミングが良すぎて自分が恐ろしい、と思いながら、こうして地下に来たのである。
案の定、拾ったものは地下の鍵も入っていた
「おいおい。何重にも魔法錠が掛けてあるのかよ……!めんどくせえ」
石造りとはいえ、地下にも火が回り始めている。
厄介だった。
グレンリオが5つ目の扉を開けると、様々な年代の女が数十人倒れていた
「おい!死んでないか!?風よ吹き上がれ!」
残念なことにグレンリオは回復魔法系統が一切使えない、と言っては語弊があるが、それに近く苦手であったので、部屋の上部に超下級魔法を放ち、煙をとりあえず拡散させ片っ端から揺さぶった。
すると、何人かは目を開けたので、グレンリオはホッとした
「大丈夫か?貴女達は聖女達で間違いないか?現在、聖殿が火事に見舞われているため、避難をしていただきたい。地下に居る人間はこれで全部だろうか?」
「う………は、はい……これで正聖女様以外は全員でございます……お助け頂きありがとうございます……」
「ゴホゴホ……!す、すみません……!正聖女様を……アルカナ様を……」
「他の気を失った者達は私どもが避難させます…」
口々に言う聖女達を起こしながら、グレンリオは分かった。と答えた
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