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崩壊と創造
そして夜が明ける*6
しおりを挟む正聖女を抱いて外へと出たが、喧騒は薄れてはいなかった。
それどころか、地下に行く前より激しさを増していた。
「あ!団長!!お戻りになったんですね!」
「お前は…確かガーランの所のか…」
「はい!第6小隊リーグ・モーリッツであります!ガーラン小隊長が団長がお戻りになるのをここで待機しながら、消火活動に当たれと言われましたのでお待ち致しておりました!」
そうか、と一言言い正聖女を抱え直した。
「団長、そこ子は……?」
「ああ、正聖女様だ」
「せ、正聖女様………!!?」
「声が大きい…!!」
大きく目を見開いたリーグ・モーリッツはあわてて口を押さえた
グレンリオはまじまじと見つめる目が何故だかイラッとしてしまい、正聖女の顔を胸にう埋めた状態に抱え直した。
「とりあえず、拘束具を外す。あまり聖殿関係者に見られたくない。」
抱えながらも器用にグレンリオが拘束具を外していると、白い背中が現れた。
パッと視線を反らしたモーリッツは慌てて
「す、すみません…ガーラン小隊長を呼んで来ます」
「わかった。ついでに何か暖かそうな布を持ってこい」
「はい!」
ハインリヒは王宮に着いただろうか?
増援はこっちに向かっているのだろうか?
考えながら当たりを見回していたグレンリオの耳に微かに腕のなかから声が聞こえた。
「ん………」
「目を覚ましたか?」
「貴方は…だ……れ……?」
「王国騎士団の者だ」
「気高き獅子よ、何故悲しそうな顔をしているのですか…?」
そっとグレンリオの頬に手を添えたアルカナはまだ目覚めたばかりで夢か現実か区別が付いていなさそうな顔をしていた。
アルカナの額に輝く宝石が散りばめられた額飾りが幼く、かつガリガリに痩せ細った彼女と不釣り合いで、やけに現実味から離れて感じた。
「あ…ああ…火が…!!」
不意に反らした視線の後ろで轟々と音を立てて燃える火にアルカナは一気に覚醒しバタバタと腕のなかで暴れた。
暴れても弱い力で、グレンリオは険しい顔になってしまう。
「落ち着け。皆の避難は終わっている。後は鎮火だが、騎士団総出で当たっている。心配ない」
「……この火災は、故意なのですか…?」
青い顔をしぶるぶると震えるアルカナに、グレンリオは何かを感じた。
「貴女は何かご存知なのか…!?」
「団長!!」
「 ! ガーラン!!」
「お待たせ致しました!毛布をお持ちしましたが…」
「あ、ああ……彼女に」
「正聖女様ですね!聖女達より話を聞いておりました。先ほど、王宮からの伝達兵が戻って参りましたが…正聖女様をお先に避難区域へお連れ致しますか?」
ガーランがチラリとアルカナを見ると、アルカナはグレンリオの服をぎゅうっと握った。
「…………ゲシュタ様ですか…!!?」
わなわなと震えるアルカナは今にも大きな瞳から涙が溢れそうだ
「………ゲシュタ枢機卿は現在王宮へお連れしている。ここが落ち着き次第避難中の皆も王宮にて保護させていただく予定だ。」
「ゲシュタ様が……こんなことを仕出かしたのですよね…!?前々から言っておられたのに…!」
何も止めれなかった、と大きな涙が溢れた。
「分かっていたのだな。どうすればこの火は止められるか分かるか?」
「………分かって居られるのでしょう?獅子さま。」
「確認だ。協力願う」
「何でも致します。ご存知かとは思いますが炎は媒体元を破壊しない限り止まることはございません。」
「それはどこにあるか分かるか?」
「………わかりません。ただ1度、ゲシュタ様が拳ほどの禍々しい水晶体をお持ちだったことがございます。」
「それが媒体元か。あちこちにあるのは中継体か…」
「あちこち……?」
アルカナは眉を潜め、何かを考えるように押し黙った。
「団長。連れていかないなら、こちらでご報告しますが…」
「すまない。まだ正聖女様から話を聞きたい。」
「分かりました。では、王宮からのご報告をお伝えします。現在、王都内や近隣の教会近辺でここと同様の火災が派生。騎士団は元帥の指揮の元、各地へ派遣中により、聖殿へは後援部隊は派遣できない、と。」
「似たようなことがあちこちで起こっているのか!?」
「そのようです。騎士団到着が遅くなったため近隣の被害が甚大だそうで、マルコリーニ補佐官は本部で報告がすみ次第戻ってくるそうです」
「………耐えるしか、無さそうだな。魔力が切れたものは順に休憩をとった後、媒体探し!魔力回復がある程度でき次第また消火活動、ルーティンを組め!」
指示を出したグレンリオの後ろで大きな風が吹いたーーーーーー
「……正聖女……様?」
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