聖女と団長とその暮らし

meeero

文字の大きさ
7 / 8
崩壊と創造

そして夜が明ける*6

しおりを挟む


正聖女を抱いて外へと出たが、喧騒は薄れてはいなかった。

それどころか、地下に行く前より激しさを増していた。

「あ!団長!!お戻りになったんですね!」

「お前は…確かガーランの所のか…」

「はい!第6小隊リーグ・モーリッツであります!ガーラン小隊長が団長がお戻りになるのをここで待機しながら、消火活動に当たれと言われましたのでお待ち致しておりました!」


そうか、と一言言い正聖女を抱え直した。

「団長、そこ子は……?」

「ああ、正聖女様だ」

「せ、正聖女様………!!?」

「声が大きい…!!」

大きく目を見開いたリーグ・モーリッツはあわてて口を押さえた

グレンリオはまじまじと見つめる目が何故だかイラッとしてしまい、正聖女の顔を胸にう埋めた状態に抱え直した。

「とりあえず、拘束具を外す。あまり聖殿関係者に見られたくない。」

抱えながらも器用にグレンリオが拘束具を外していると、白い背中が現れた。

パッと視線を反らしたモーリッツは慌てて

「す、すみません…ガーラン小隊長を呼んで来ます」

「わかった。ついでに何か暖かそうな布を持ってこい」

「はい!」

ハインリヒは王宮に着いただろうか?
増援はこっちに向かっているのだろうか?

考えながら当たりを見回していたグレンリオの耳に微かに腕のなかから声が聞こえた。

「ん………」

「目を覚ましたか?」

「貴方は…だ……れ……?」

「王国騎士団の者だ」

「気高き獅子よ、何故悲しそうな顔をしているのですか…?」

そっとグレンリオの頬に手を添えたアルカナはまだ目覚めたばかりで夢か現実か区別が付いていなさそうな顔をしていた。
アルカナの額に輝く宝石が散りばめられた額飾りが幼く、かつガリガリに痩せ細った彼女と不釣り合いで、やけに現実味から離れて感じた。

「あ…ああ…火が…!!」

不意に反らした視線の後ろで轟々と音を立てて燃える火にアルカナは一気に覚醒しバタバタと腕のなかで暴れた。
暴れても弱い力で、グレンリオは険しい顔になってしまう。

「落ち着け。皆の避難は終わっている。後は鎮火だが、騎士団総出で当たっている。心配ない」

「……この火災は、故意なのですか…?」

青い顔をしぶるぶると震えるアルカナに、グレンリオは何かを感じた。

「貴女は何かご存知なのか…!?」

「団長!!」

「 ! ガーラン!!」

「お待たせ致しました!毛布をお持ちしましたが…」

「あ、ああ……彼女に」

「正聖女様ですね!聖女達より話を聞いておりました。先ほど、王宮からの伝達兵が戻って参りましたが…正聖女様をお先に避難区域へお連れ致しますか?」

ガーランがチラリとアルカナを見ると、アルカナはグレンリオの服をぎゅうっと握った。

「…………ゲシュタ様ですか…!!?」

わなわなと震えるアルカナは今にも大きな瞳から涙が溢れそうだ

「………ゲシュタ枢機卿は現在王宮へお連れしている。ここが落ち着き次第避難中の皆も王宮にて保護させていただく予定だ。」

「ゲシュタ様が……こんなことを仕出かしたのですよね…!?前々から言っておられたのに…!」

何も止めれなかった、と大きな涙が溢れた。

「分かっていたのだな。どうすればこの火は止められるか分かるか?」

「………分かって居られるのでしょう?獅子さま。」

「確認だ。協力願う」

「何でも致します。ご存知かとは思いますが炎は媒体元を破壊しない限り止まることはございません。」

「それはどこにあるか分かるか?」

「………わかりません。ただ1度、ゲシュタ様が拳ほどの禍々しい水晶体をお持ちだったことがございます。」

「それが媒体元か。あちこちにあるのは中継体か…」

「あちこち……?」

アルカナは眉を潜め、何かを考えるように押し黙った。

「団長。連れていかないなら、こちらでご報告しますが…」

「すまない。まだ正聖女様から話を聞きたい。」


「分かりました。では、王宮からのご報告をお伝えします。現在、王都内や近隣の教会近辺でここと同様の火災が派生。騎士団は元帥の指揮の元、各地へ派遣中により、聖殿へは後援部隊は派遣できない、と。」

「似たようなことがあちこちで起こっているのか!?」

「そのようです。騎士団到着が遅くなったため近隣の被害が甚大だそうで、マルコリーニ補佐官は本部で報告がすみ次第戻ってくるそうです」

「………耐えるしか、無さそうだな。魔力が切れたものは順に休憩をとった後、媒体探し!魔力回復がある程度でき次第また消火活動、ルーティンを組め!」

指示を出したグレンリオの後ろで大きな風が吹いたーーーーーー

「……正聖女……様?」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...