スライムスレイヤー ~イシノチカラ~

亜形

文字の大きさ
148 / 152
第七章 進化と万能編

第142話 バンの検証

しおりを挟む
 本体のイナゴは大きく飛び跳ねて距離を置く。本体を抑えつけて逃げないようにする為、太い後ろ足を切る役目を担うのはイズハだ。今のメンバーで一番速いのはロッカだが殺気むき出しではすぐに気づかれて逃げられてしまうだろう。ここは気配を消すことが最も得意なイズハが適任なのは言うまでもない。

 イズハは気配を消して本体のイナゴの真後ろから接近する。イズハの存在に気づかれないように他の5人は正面側でなるべく本体に近づかずにひたすら雑魚処理だ。雑魚の数はもう数十体まで減ってきている。雑魚は魔石を落とさないのでいくら斬り倒しても収穫はゼロだ。

《そろそろですかね?》
《トウマ、近くにいるのに念話使わないでよ》
《いや、声に出すとマズいかな?と思って》
《逆に念話はモンスターに聞かれているかもしれませんよ》
《そっか。念話だと言葉を知らなくても通じるんだった》
《念話が使えるほどの賢いモンスターは滅多にいないと思いますがそれは念頭に入れていたほうがよいかもしれません》

「って、それだと普通にしゃべったほうがいいじゃない!」
「ん? もしかしてロッカたち念話してたの?」
「またかにゃ! ボクも混ぜて欲しいにゃ」
「トウマのやつが始めたのよ。まったく意味ないのに」
「わはは、新しく手に入れた玩具を使ってみたい年頃なのかもな」
「うっ、お、俺はそんな子供じゃありませんよ」

 でもそうか。念話はミノタウロス級のモンスター相手だと筒抜けになっちゃうってことだよな。上手く使えたら声を出さずに連携して戦えるんじゃないかと思ったけど考えが足りてなかった。いや、待てよ。もし念話を特定の人だけに絞って通じさせることができれば使えるかもしれない。あとでバンさんに相談してみよう。

 イズハが本体のイナゴに近づき右後ろ足を斬り落とした。怯んだイナゴを見てすかさずロッカが飛び込み左後ろ足を斬り落とす。

「やった!」

 トウマとセキトモは急いで本体のイナゴに飛びつき抑えつけることに成功した。イズハとチナは無防備になったトウマとセキトモを雑魚の襲撃から守る体勢だ。

 バンは小型モンスター捕獲用の檻を上蓋を開けた状態で広げた。ロッカは棒双丸の抗魔玉を外して拳サイズのイナゴの後ろ足を斬り落とした。そして棒双丸を背中に納めると腰の短剣を取り出し抗魔玉を外してイナゴを串刺しにした。

「モンスターを倒さずに捕まえるなんて初めてよ」

 トウマとセキトモが抑えつけている中型サイズの本体を小型サイズ用の檻に入れることはできない。捕獲対象は本体ではなく拳サイズのイナゴ、複合体の一部であると思われる雑魚と呼んでいたモンスターだ。

 抗魔玉の力を通さなければ雑魚は倒すことができない。斬りつけても損傷した部位はすぐに再生が始まるのだ。部位を切り取った場合は切り取られた部位は消滅して新たに生える。近くに切り取られた部位があった場合は切り口から触手のようなものが出て来て繋がろうとする。両断しても丸ごと潰しても復活しようとするのだ。

 ロッカは気持ち悪そうな顔で串刺しにした雑魚をバンが広げた檻の中に入れた。

「トウマさんたちはそのまま本体を抑えていて下さい」
「了解です!」
「イズハ、チナ、雑魚はまだ少し残しておくのよ」
「分かったっす」
「仕方ないにゃ~。肉球で優しく吹き飛ばすだけにするにゃ」

 チナは猫爪の爪を収納した。

「ロッカ、一緒について来て下さい」

 バンとロッカは檻に入れた雑魚を持って走り出した。

 50mを越え、70~80m離れた頃に暴れていた檻の中の雑魚が急に大人しくなった。

「バン、見て。雑魚の様子がおかしくなったわ」
「そのようですね」

 歩きながら二人が様子を見ていると、突然檻の中にいた雑魚が消滅した。

「消えた?!」
「思った通りでした。複合体の一部である拳サイズのイナゴは本体から離れられる距離が決まっているという事でしょう」
「あ~、だから本体が跳んで距離置いたら雑魚が本体に集まってたのね」
「消滅するので離れられない。念糸でつながっているという表現は正しいのかもしれませんね。では戻ってまた捕獲しましょう」
「まだ何か確かめたいの?」

 二人は抑えつけている本体の元に戻った。

「イズハさん、新たに発生したモンスターはいましたか?」
「自分が見てた限りはいないっすよ」
「なるほど、消滅したモンスターは本体に戻ったわけではないようですね」
「俺たちにも教えて下さいよ~」
「僕もバンの検証に興味あるんだけど~」
「うっさい! あとで教えるから二人は黙って本体抑えてて」

 ロッカはまた雑魚を捕獲した。

「で、今度は何するの?」

「念糸で繋がっているという表現は本当に糸のようなもので繋がっているのか。
 つまり見えない糸で繋がっているのかを確かめられたらと」

「じゃあ、この辺?」

 ロッカは雑魚と本体のイナゴの対角線上を短剣で振り回した。

「どお?」
「特に変わりはありませんね」
「う~ん。もっと上か下か左か右か。とにかく周辺を手あたり次第切ってみるわ」

 何も起きなかった。

「糸なら地面をはってるかもと思って切ってみたけど糸じゃないんじゃない?」
「そうかもしれませんね。でも切れていないだけかもしれません。
 ロッカ、抗魔玉をつけてもう一度お願いできますか?」
「今度は浄化の力を乗せて切ってみるってことね」

 ロッカは抗魔玉の力を放出して周辺を切ってみたが何も起きなかった。

「何も変わらないわ」
「違ったようですね」
「う~ん、じゃあ何で繋がってるというの?」

《ロッカ、まだかかるの?
 こいつ抑えてんのキツいんだけど》
《うっさい! トウマ、今考えてる最中なんだから邪魔しないでよ》

 次の瞬間、檻に捕えていた拳サイズのイナゴが消滅した。

「は?! 何? いきなり消えたわよ」
「ロッカ、いったい今、何をしたんですか?」

「何って、トウマが念話してきたから思わず念話で返して・・・短剣を振っ?!」
「ブーストをかけて切ったのですか?!」

 ロッカとバンは息をのんだ。

「バン、もう一回検証してみよう」
「はい」

◇◇

「もういいわ。本体倒していいわよ」

 トウマは待ってましたと言わんばかりにすぐさま剣を抜き本体のイナゴを仕留めた。周りに数体残っていた雑魚も同時に消滅。セキトモは汗を拭きながら落ちた魔石とタグを拾った。

「蛍光塗料もしっかり付いてたし、タグも出て来たな。
 このタグを持って行けば討伐証明になるってわけだ」
「ダンジョンを思い出しますね」

「ところで何の検証してたの?」
「ちょっと待って、何か来るわ!」

 ロッカが指をさしたのは50mほど先にある川の方だ。6人全員が武器を構えた。川の土手から這い上がってきたのはタガメの巨大モンスターだ。

「デカいな! あれって巨大モンスターに該当しませんか?」
「あの姿って水田とかによくいるタガメだよな?」
「確か、タガメは水生昆虫。
 捕食対象を鎌状の前足先にある爪で引っ掛けて捕らえる肉食性の虫ですね。
 あの大きさです。危険なモンスターかもしれません」
「水中のカマキリって感じっすかね?」
「なんか強そうにゃ」
「あのデカさで水中にいたら太刀打ちできなかったところだな」
「でも陸に上がって来たのが運の尽きね。
 クエスト的には物足りなかったから丁度いいわ。あれ倒して行こう」

 一同が向かって来るタガメとの戦闘を開始する直前だった。タガメに無数の矢が当たる。関節以外に当たった矢は堅い表皮で弾かれたようだ。

「えーと、スレーム・ガングだっけ?
 そいつには手を出さないで貰えるかな」

「ムト?」

 後方からやって来たのはムト率いるバムカのメンバーたちだ。カイザとバハは来ていない。

「そいつは俺たちの獲物なんだよね~、依頼書も持ってるぜ。難易度はC。一応、先に矢を当てたし、あれで先に開始したってことになったよな?
 お前たちのクエスト対象ではないんだろ?」

「そうだけど、何よこの人数は?
 難易度Cでもこんなにいたら分け前少なくなるでしょ?」

「そうなんだけどね~。暇だから誰か近くのクエストにでも行こうぜ、って誘ったら10人くらいついて来ちゃってよ、あはは。消化不良のやつが多かったのかね~。しかし水中から引き上げる為のロープまで準備してきたのに、まさか自ら陸に上がって来てるとはね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...