11 / 14
11.だらしなく生きるには
固形物を食べられるようになったばかりだったのに、再びスープからの療養生活に逆戻りした事に腹を立てたルルの監視は厳しくなり
今まで以上に仕事に打ち込まねばならなくなったウォルターと、
領地を国に讓渡し、表向きは血筋も途絶えたとして小侯爵ではない平民と同等の存在になったレナードは相変わらず公爵家でゆったりとした時間を過ごしている。
最近は体力作りと称してララと夜の庭園を散歩するようになったレナードは、ウォルターに合わせて日が登る時間帯に眠るようにしている。
花の名前や庭園のコンセプトなどをララに聞きながらする散歩はとても楽しい。
「レナードさま、そろそろもどりましょう」
「えぇ。少し疲れてしまいました」
「つめたいお茶をのみますか?」
「いただきます。とても嬉しいです」
貴族らしい微笑みは、笑っているように見えて無表情だとウォルターから指摘され、ルルから「感情に素直なレナード様の表情がとても好みだと言っているんですよ」とすかさずフォローが入れられた。
もう貴族とも言えない立場だし、ならばとそれ以来レナードはなるべく感情を表に出そうとまずは気持ちを口に出す事から始めている。
「おかおをマッサージしてほぐすといいです」とララに助言を受けて頬を摘んだり伸ばしたり揉んだりと自己流でマッサージしているところをウォルターに目撃された時は少し恥ずかしかった。
「レナード様、もっと背中をクッションに沈めて」
「こうかな…」
「レナードさま、ふるーつも用意しました」
「ありがとう、ララちゃん」
"ララさん"は嫌だと頬を膨らませて抗議してきたララと相談して呼び方が変わったとか、ルルからはもっとリラックスしましょう。きちんと身体を休めることも回復には必要です。という事で『姿勢悪く座る』という指導を受けたりと
今まででは考えられなかった生活をしている。レナードは習慣により無意識で姿勢を正してしまうのだ。
「レニーを抱いてリラックスがしたい」
「主様は今日のノルマをこなす迄は接触禁止です。」
忙しなく動かすペンの音にレナードも心配になるが、ウォルターの疲労的には問題ないらしい。
ぶつくさ言いながらも仕事をする姿に、日々エスカレートするスキンシップの数々を思い出してほんのり顔が熱くなった。
風呂で寝てしまうのは危険だからと毎日一緒に風呂に入ることをウォルターに宣言され、
傷跡の事もあり必死に断ったが実は寝込んでいた一ヶ月もの間、レナードの体を拭いていたのはウォルターであると判明し、なし崩し的に風呂を共にする事になった。
髪を洗うばかりか身体を洗ったり、時にはマッサージまでウォルターが世話を焼くので自分でやると訴えるが「これは生き甲斐だ」とまたも押し切られて恥ずかしさのあまり失神しそうになりながらも日々甘やかされている。
(私は餌、ですよね…?)
王宮に行った日の帰り、間違いなく血を吸われた。それによりレナードの中でウォルター好みの見た目をしているが、やはり餌は餌であると納得した。
もしかしたら時折食べるデザートのような感覚かもしれない。死なない程度に時折血を吸って楽しむ、ような…
ならばそれに応えるよう、健康体でなければならない。
(半ば死んでもいいと思ってさ迷っていたところを身体を巡っていた毒によって死を逃れたに過ぎない。
ここまで大切に扱われているし、…子爵の結末は予定通りだが、その光景を見れた事も感謝せねば)
よし、と積極的に(しかし優雅に)フルーツを食べ始めたレナードに、
段々と思考が分かるようになってきたウォルターは据わった目でそれを眺め、深い溜息をついて仕事に戻ったがレナードがそれに気付く事はなかった。
「睡眠時間の確保、それを忘れないようにして下さい。」
「分かっている。もう下がれ」
以前がただ従順に主の命令を聞いていた双子もレナードが来てからここまで表情豊かになるとは。
特にレナードの体調管理に精を出している為、俺には手厳しくなったなとウォルターは頭を掻きながら寝室の扉を閉めた。
「このように見た目も味も、鳴き声まで全てが極上な鳥を、鳴かさずしてただ転がすなぞ勿体ない」
日々、健康を取り戻してどんどん美しくなる宝石の鳥。
先にベッドで横になって微睡んでいるレナードの隣に腰を下ろせば、期待しているように少し重そうな瞼から覗く群青色の瞳が揺らいだ。
手始めに寝着に手を掛け、ゆったりとした動作でボタンを外せば焦れるように手を添えられる。宥めるようにその手を握って指先を舐めれば湿った吐息が小さな口から漏れ出た。
「愛しい小鳥、その全てが俺の物だ。」
きちんと言葉にしなければ、この男には伝わらないだろう事は重々理解している。
否定され続けた十数年は呪いのようにレナードという存在を歪めてしまった。───その歪められた姿さえ、壮絶に美しいが。
牙で付けられた首筋にあるふたつの穴を舌でなぞる。びくびくと震えつつ恥じらって必死に抑えているにも関わらず漏れ出る高い声にうっそりと微笑み、
時折愛を囁きながらウォルターは手の中に居る宝石の鳥をじっくりと味わい堪能した。
あなたにおすすめの小説
専属バフ師は相棒一人しか強化できません
風
BL
異世界転生した零理(レイリ)の転生特典は仲間にバフをかけられるというもの。
でもその対象は一人だけ!?
特に需要もないので地元の村で大人しく農業補佐をしていたら幼馴染みの無口無表情な相方(唯一の同年代)が上京する!?
一緒に来て欲しいとお願いされて渋々パーティを組むことに!
すると相方強すぎない?
え、バフが強いの?
いや相方以外にはかけられんが!?
最強バフと魔法剣士がおくるBL異世界譚、始まります!
完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました
禅
BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。
その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。
そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。
その目的は――――――
異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話
※小説家になろうにも掲載中
転生したら本でした~スパダリ御主人様の溺愛っぷりがすごいんです~
トモモト ヨシユキ
BL
10000回の善行を知らないうちに積んでいた俺は、SSSクラスの魂として転生することになってしまったのだが、気がつくと本だった‼️
なんだ、それ!
せめて、人にしてくれよ‼️
しかも、御主人様に愛されまくりってどうよ⁉️
エブリスタ、ノベリズムにも掲載しています。
言葉が通じない暴君皇帝の運命の番として召喚されました〜炎を鎮めたら冷徹な彼が甘々になりました〜
水凪しおん
BL
帰宅途中の夜道、突然の光に包まれた青年・アオイが目を覚ますと、そこは見知らぬ異世界の宮廷だった。
言葉も通じず、隔離された離宮に閉じ込められた彼が出会ったのは、ソラリア帝国を統べる皇帝・レオニダス。
強大な竜の血を引き、その力に肉体を焼き尽くされそうになりながら孤独に耐える冷徹なアルファ。
だが、特別な魔法を持たないはずのアオイには、彼の荒れ狂う魔力を静かに鎮める「不思議な波長」が備わっていた。
「触れるな」
お互いを傷つけることを恐れ、遠ざけようとする不器用な皇帝。
だが、アオイは苦しむ彼を見捨てられず、自ら灼熱の炎の中へと飛び込んでいく。
言葉の壁を越え、魂の波長が重なり合った時、冷徹な皇帝の態度は一変。
誰よりも優しく、独占欲に満ちた重すぎる溺愛が始まって――。
孤独な竜と、彼を癒やすただ一人のオメガ。
二人が真の「運命の番」となるまでの、切なくも温かい異世界救済ボーイズラブ。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。