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プロローグ
プロローグ
しおりを挟むそれは、少しの違和感だった。
放課後の弓道場で、高校一年生の彼は部活動の後片付けをしていた。
──この高校では、後片付けは一年の仕事で当番制だ。
「なー早く帰ろうぜー」
先に支度を終えた部員仲間から声がかかった。
「おー。もう少しで終わるー」
滞りなく作業も終わり、道着から着替えるべく道場内のロッカールームに足を向けると、何も無い空間に黒い線が見えた気がして立ち止まった。
「…糸?」
手を伸ばそうとして、先にロッカールームに向かった弓道部員が早く帰ろう、と声をかけてきたので気のせいと結論付けた彼は、なんとなく糸が見えたあたりを避けるように横にズレて歩いた。
そして通り過ぎる瞬間。
『***、*******』
不思議な声が頭に響いて、黒い線から伸びた『手』に腕を掴まれ、引きずり込まれた。
「おい、何してんだ早く───」
先程も声をかけた弓道部員が再度顔を出したが、道場に人影はない。
彼はそのまま、二度と姿を現すことは無かった。
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