こんにちは、付喪神です。

江多之折(エタノール)

文字の大きさ
6 / 10

6.嘘はついちゃいけないんだよ。


いつかは消える存在って恐れはどうしても消えなくて。
僕はどうして生まれたんだろう。どうして生まれたのがセイイチの所だったんだろう。

「そんなにいっぱい買わなくても…」
「いいから。次は家具屋だな」

僕の服やら靴やら色々詰め込まれた紙袋を両手に抱えて歩くセイイチの後を追おうとして、ピタッと制止したので何事かと思ったら「俺の前を歩いて」と促された。道、わからないんだけど。

「迷子になったら困るだろ。道案内はするから」
「僕は子供じゃないんですけど!そんなに心配なら手を繋げばいいじゃん」
「……いいのか」
「?」

別にいいから、紙袋ちょっと持たせなよって手を差し出したら無理やり荷物を片方にまとめて手を握ってきた。ディスコミュニケーションってやつだ。

「……まぁいっか」
「なんだよ。」
「セイイチってかっこいいなぁって思ったから、いいやーって」
「よくわからねーけど…」

少し顔が赤くなって、手を握る力が強くなった。照れてるなぁ。

そんなセイイチを見てニマニマしていた僕への仕返しか、家具屋さんでキングサイズのベッドを買うと言い張るセイイチを説得するのは本当に大変だった。全然聞いてくれなくて。
最終奥義「大きすぎるとくっついて寝れない」でどうにかクイーンサイズになった。







「あ!身体洗うタオル買い忘れた!」
「あぁ?あるもん使えばいいだろ。」

家に帰ってのんびりソファでくつろいでたら買い忘れに気が付いたけど、セイイチの返事に僕こそ「はぁぁ?」って反応で返した。

「セイイチが共有不可って言ったじゃん!」
「あー?……あー」
「思い出したね!嘘つきだ!」
「…仕方ねーじゃん、触りたかったし」

仕方なくないよ!気まずそうに目を逸らすセイイチにのしかかって「嘘つきー!」って責めた。

「重てぇな…」
「開き直らないでよ!僕、気を使ったのに!」
「あー悪かった悪かった。今日から気にせず使え」

反省してない!なんて男だ!
重たい重たい言って話を逸らそうとするし、僕だって本来の姿だったら重くないんだい!

「むー…」
「お前、人形だったくせに重量あるな。乗ると普通に重みが」
「……嫌なの?」
「いや、別に嫌じゃ………ツクモ。」
「僕は、嫌なことしちゃっ…」
「ツクモ、嫌じゃない。落ち着け。ッ…ツクモ!!」

焦ったセイイチの顔がだんだん上に移動していく。…あれ?違う、僕が移動してる。

「へ?」
「………ツクモ、俺がわかるか」
「セイイチ、なんか、セイイチが大きい」

手を伸ばしたら、茶色い何かが視界に入った。

「……………わぁ。」
「…ツクモ、本当に反省する。反省するから、頼む戻ってくれ。俺を捨てないでくれ」
「えぇー…」

人形に土下座するセイイチという、世にも奇妙なシチュエーションが生まれていた。












「タヌキだーーーー!」
「……確かに、狸の人形をゲーセンで取ったけどよ」

セイイチに抱えられて寝室の姿見で全身を見て、僕は叫んだ。
よかったー!思ったより可愛い見た目してたー!

「なぁツクモ、俺を捨てるのか?」
「なんで?セイイチは僕の恋人じゃないの?」 

抱えられたまま移動して、ベッドに降ろされて。試しに動いてみると普通に歩けた。おお。小さいと今までと違う視点になって面白いかもしれない。

「新しいベッドくるまで、僕これの方が狭くなくていいんじゃないかなぁ」
「………」

ベッドの上でぴょんぴょん飛んでいるとセイイチに持ち上げられた。楽しんでたのに。
…でも、仕方ないなぁ。僕の恋人がとても悲しそうな顔をしてるなら戻らなきゃ。

「ツクモ、俺は嫌だ」
「…もう、嘘つかないでね。僕はセイイチに身体洗ってもらうのも嫌じゃないよ」

人間…人間の姿に…家事がしやすい姿になれ!って念じたら徐々に目線が上がっていく。

「おぉ…ご都合主義」
「……」

人間の姿に戻った僕を、セイイチはいつもより強い力で抱き締めてきた。今までずっとひとり暮らししてたくせに、これじゃ僕より寂しがりじゃないか。

「大丈夫だよセイイチ。僕は居なくならないよ。今のところ」
「最後に不穏な一言を足すな。」
「だって本当にわからないから、僕は嘘つかないし」

背中をさすってあげても、セイイチは少しも離れようとしない。胸が密着して、セイイチの少し早い鼓動を肌で感じる。

「セイイチ、やっぱり付喪神が恋人はよくないよ。この調子じゃセイイチが壊れ…んぅ」

強制的に唇を塞がれる。
うるさいって言いたいんだね。嫌なことは言って欲しくないよね。
でも僕は、セイイチが心配だよ。

舌を動かしてほしいなら、動かすよ。口で気持ちよくしてほしいなら、いっぱい頑張るよ。
でも、消えるタイミングだけは。僕にはどうにも出来そうもないんだ。

「…セイイチ」
「嫌だ。」
「セイイチはわがままだねぇ」

嫌がる口を、僕から塞いだ。セイイチの舌、あったかいね。
僕の心臓もドキドキしてるよ。たった数日の仲だけど、僕もセイイチのこと大好きだよ。

なんで僕達、同じ存在じゃないんだろう。

「……拒否してる方が泣くなよ。今だけ恋人だったら、それでいいって言ったろ。」
「…うそつき」

やっぱりセイイチは嘘つきだ。
今だけなんて、セイイチも僕も、思ってないじゃん。

黒い髪を撫でて誤魔化したら、パチパチと弾けるようにフラッシュバックが起きた。













寒くて、お腹すいて、ゴミを漁ったけど何もなくて。でも散らかしちゃったから、人間達に怒られて、逃げて。




『────お前、なんでこんな所にいるんだよ。』

 


あぁそうだ。声はすごく疲れてたけど、優しい手が小さな僕の頭を撫でたんだ。
感想 0

あなたにおすすめの小説

消えることのない残像

万里
BL
最愛の兄・大貴の結婚式。高校生の志貴は、兄への想いが「家族愛」ではなく「恋」であったと、失恋と同時に自覚する。血の繋がりという境界線、そして「弟」という役割に縛られ、志貴は想いを封印して祝福の仮面を被る。 しかし数年後、大貴の息子が成長し、かつての兄と瓜二つの姿となったとき、止まっていた志貴の時間は歪な形で動き出す。 志貴(しき):兄・大貴に長年片思いしているが、告げることなく距離を置いていた。 大貴(だいき):志貴の兄。10歳年上。既婚者で律樹の父。無自覚に人を惹きつける性格。志貴の想いには気づいていない。 律樹(りつき):大貴の息子。明るく素直だが、志貴に対して複雑な感情を抱く。

ひとりも、ふたりも

鈴川真白
BL
ひとりで落ち着く時間も、ふたりでいる楽しい時間も両方ほしい 1人を謳歌するマイペース × 1人になりたいエセ陽キャ

絶賛、片想い中

いいいいい
BL
受け 檜山 颯斗(ひやま はやと) 攻め 須藤 慧 (すどう けい) 大学生bl

貧弱雑魚魔王ですが、なぜか最強騎士に執着されています

ふき
BL
貧弱雑魚な魔王の俺。 ある日、人間の国との小競り合いを止めるため、重鎮たちは「姫を人質にしろ」と言い出す。 仕方なく人間の城へ向かった俺だったが、当の姫は気絶寸前のか弱さ。 代わりに名乗り出たのは、姫を守る一人の騎士さまだった。 「俺ならば耐えられる」 人間は弱いはずなのに、なぜか目が離せない。 結局俺は、姫ではなく騎士さまを人質として魔王城へ連れ帰る。 魔王さまの責任で面倒見て下さい。 そんな言葉から始まる、貧弱雑魚魔王と最強騎士の妙な同居生活―― 「……じゃあさ、騎士さまが付けてよ。俺の名前、今じゃなくていいから」 「……俺は独占欲が強いので、俺にしか呼ばせませんよ」

キスの仕方がわかりません

慶野るちる
BL
全寮制男子校に入学した市原はクラス委員長になったため書類を提出しに生徒会室に行くと、そこに一人いた、初対面の副会長の近藤に襲われてしまう。  混乱するも相部屋の同級生・松川に助けられて元気を取り戻したある日、生徒会長の桜野から仕事を手伝って欲しいと依頼される。  最初は近藤に無視されていたが手伝う中で近藤から告白され、近藤への印象が少しずつ変わっていく市原だが。 表紙:Photo by Markus Spiske on Unsplash / powered by かんたん表紙メーカー様

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

とあるパーティの解散、あるいは結成

深山恐竜
BL
勇者パーティがダンジョンのトラップにかかって「天井が落ちてくる部屋」に閉じ込められた。脱出の術がなく、もはやここで圧死するのを待つのみ……と諦めた時、僧侶が立ち上がった。 「どうせ死ぬなら最期に男と性交してみたいんですが。この中に男が好きな方いらっしゃいませんか?」 死を前にして始まるパーティメンバーたちの性癖の暴露大会。果たして無事に外に出られるのか…? (ムーンライトノベルズ様にも掲載中)

花びらは散らない

美絢
BL
 15歳のミコトは貴族の責務を全うするため、翌日に王宮で『祝福』の儀式を受けることになっていた。儀式回避のため親友のリノに逃げようと誘われるが、その現場を王太子であるミカドに目撃されてしまう。儀式後、ミカドから貴族と王族に与えられる「薔薇」を咲かせないと学園から卒業できないことを聞かされる。その条件を満たすため、ミカドはミコトに激しく執着する。