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6.嘘はついちゃいけないんだよ。
いつかは消える存在って恐れはどうしても消えなくて。
僕はどうして生まれたんだろう。どうして生まれたのがセイイチの所だったんだろう。
「そんなにいっぱい買わなくても…」
「いいから。次は家具屋だな」
僕の服やら靴やら色々詰め込まれた紙袋を両手に抱えて歩くセイイチの後を追おうとして、ピタッと制止したので何事かと思ったら「俺の前を歩いて」と促された。道、わからないんだけど。
「迷子になったら困るだろ。道案内はするから」
「僕は子供じゃないんですけど!そんなに心配なら手を繋げばいいじゃん」
「……いいのか」
「?」
別にいいから、紙袋ちょっと持たせなよって手を差し出したら無理やり荷物を片方にまとめて手を握ってきた。ディスコミュニケーションってやつだ。
「……まぁいっか」
「なんだよ。」
「セイイチってかっこいいなぁって思ったから、いいやーって」
「よくわからねーけど…」
少し顔が赤くなって、手を握る力が強くなった。照れてるなぁ。
そんなセイイチを見てニマニマしていた僕への仕返しか、家具屋さんでキングサイズのベッドを買うと言い張るセイイチを説得するのは本当に大変だった。全然聞いてくれなくて。
最終奥義「大きすぎるとくっついて寝れない」でどうにかクイーンサイズになった。
「あ!身体洗うタオル買い忘れた!」
「あぁ?あるもん使えばいいだろ。」
家に帰ってのんびりソファでくつろいでたら買い忘れに気が付いたけど、セイイチの返事に僕こそ「はぁぁ?」って反応で返した。
「セイイチが共有不可って言ったじゃん!」
「あー?……あー」
「思い出したね!嘘つきだ!」
「…仕方ねーじゃん、触りたかったし」
仕方なくないよ!気まずそうに目を逸らすセイイチにのしかかって「嘘つきー!」って責めた。
「重てぇな…」
「開き直らないでよ!僕、気を使ったのに!」
「あー悪かった悪かった。今日から気にせず使え」
反省してない!なんて男だ!
重たい重たい言って話を逸らそうとするし、僕だって本来の姿だったら重くないんだい!
「むー…」
「お前、人形だったくせに重量あるな。乗ると普通に重みが」
「……嫌なの?」
「いや、別に嫌じゃ………ツクモ。」
「僕は、嫌なことしちゃっ…」
「ツクモ、嫌じゃない。落ち着け。ッ…ツクモ!!」
焦ったセイイチの顔がだんだん上に移動していく。…あれ?違う、僕が移動してる。
「へ?」
「………ツクモ、俺がわかるか」
「セイイチ、なんか、セイイチが大きい」
手を伸ばしたら、茶色い何かが視界に入った。
「……………わぁ。」
「…ツクモ、本当に反省する。反省するから、頼む戻ってくれ。俺を捨てないでくれ」
「えぇー…」
人形に土下座するセイイチという、世にも奇妙なシチュエーションが生まれていた。
「タヌキだーーーー!」
「……確かに、狸の人形をゲーセンで取ったけどよ」
セイイチに抱えられて寝室の姿見で全身を見て、僕は叫んだ。
よかったー!思ったより可愛い見た目してたー!
「なぁツクモ、俺を捨てるのか?」
「なんで?セイイチは僕の恋人じゃないの?」
抱えられたまま移動して、ベッドに降ろされて。試しに動いてみると普通に歩けた。おお。小さいと今までと違う視点になって面白いかもしれない。
「新しいベッドくるまで、僕これの方が狭くなくていいんじゃないかなぁ」
「………」
ベッドの上でぴょんぴょん飛んでいるとセイイチに持ち上げられた。楽しんでたのに。
…でも、仕方ないなぁ。僕の恋人がとても悲しそうな顔をしてるなら戻らなきゃ。
「ツクモ、俺は嫌だ」
「…もう、嘘つかないでね。僕はセイイチに身体洗ってもらうのも嫌じゃないよ」
人間…人間の姿に…家事がしやすい姿になれ!って念じたら徐々に目線が上がっていく。
「おぉ…ご都合主義」
「……」
人間の姿に戻った僕を、セイイチはいつもより強い力で抱き締めてきた。今までずっとひとり暮らししてたくせに、これじゃ僕より寂しがりじゃないか。
「大丈夫だよセイイチ。僕は居なくならないよ。今のところ」
「最後に不穏な一言を足すな。」
「だって本当にわからないから、僕は嘘つかないし」
背中をさすってあげても、セイイチは少しも離れようとしない。胸が密着して、セイイチの少し早い鼓動を肌で感じる。
「セイイチ、やっぱり付喪神が恋人はよくないよ。この調子じゃセイイチが壊れ…んぅ」
強制的に唇を塞がれる。
うるさいって言いたいんだね。嫌なことは言って欲しくないよね。
でも僕は、セイイチが心配だよ。
舌を動かしてほしいなら、動かすよ。口で気持ちよくしてほしいなら、いっぱい頑張るよ。
でも、消えるタイミングだけは。僕にはどうにも出来そうもないんだ。
「…セイイチ」
「嫌だ。」
「セイイチはわがままだねぇ」
嫌がる口を、僕から塞いだ。セイイチの舌、あったかいね。
僕の心臓もドキドキしてるよ。たった数日の仲だけど、僕もセイイチのこと大好きだよ。
なんで僕達、同じ存在じゃないんだろう。
「……拒否してる方が泣くなよ。今だけ恋人だったら、それでいいって言ったろ。」
「…うそつき」
やっぱりセイイチは嘘つきだ。
今だけなんて、セイイチも僕も、思ってないじゃん。
黒い髪を撫でて誤魔化したら、パチパチと弾けるようにフラッシュバックが起きた。
寒くて、お腹すいて、ゴミを漁ったけど何もなくて。でも散らかしちゃったから、人間達に怒られて、逃げて。
『────お前、なんでこんな所にいるんだよ。』
あぁそうだ。声はすごく疲れてたけど、優しい手が小さな僕の頭を撫でたんだ。
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