こんにちは、付喪神です。

江多之折(エタノール)

文字の大きさ
8 / 10

8.それはそれ、※微



これはこれ、なんて言葉があるよね。


「………お前、なんで人形になってるんだよ」
「元の姿に似てるから?思い出したせいかなぁ…この姿になると馴染むんだよね。」

狸の人形姿でくつろぐ僕を見て、セイイチのこめかみがピクピクと痙攣した。大丈夫だって、ちゃんと戻れるから。
まぁまぁ落ち着いて、家事はちゃんと終わらせたし。四足歩行落ち着くー

「セイイチはどうせまだ仕事でしょ?僕このまま大人しくしてるから気にしないで」
「………せめて視界の範囲内に居ろよ」
「はいよー」

今日は椅子に座ってダイニングテーブルでノートPCを操作してるセイイチの太腿の上に乗って丸くなった。

「………」
「ふぁ…昨日も遅かったから、僕ちょっとお昼寝するね」
「自由だなお前……」

遅かったの、セイイチのせいだからね。文句は言わせないよ。
今日も家事頑張ったし、シーツが乾くまでちょっと、休憩……







「んふふ、あったかぁ」

人形でも室温とか、感触はあるんだなぁ。不思議な仕様だ。
鼻をスンスンしたらセイイチの匂いがして落ち着く。狸の時にこんなに寝心地のいい経験はなかったな。いい匂い、あったかい、少し狭い。

「……せまい?」
「起きたか?」
「おはよー、セイイチ」
 
なんと僕の視界は肌色だ。どう見ても薄らと筋肉の線が出てるセイイチの身体だ。

「僕、なんでセイイチの服の中で寝てるの?」
「寝相が悪くて落ちまくるからだな。」
「おぅ。それは失礼しました。よいしょ」
「暴れるなって…」

よじ登ってセイイチの服の首元から頭を出した。至近距離にセイイチの喉仏!

「おい首元伸びるって…仕方ねーな」

ポンポンと人形の僕を優しく叩いて「もう少しで終わるから待ってな」とキーボードをカタカタ打つセイイチの顔を下から眺めて、この姿、邪魔せずくっつけるからやっぱりいいなぁって擦り寄った。セイイチの匂い好き。

「そういや。シーツは取り込んでおいたぞ」
「僕そんなに寝てたんだ。ありがとうねー」
「…まぁ、寝相悪いわ寝言言うわで服ん中に入れてれば生存確認は出来たから、これはこれで良かった」
「僕そんなに寝てる間は暴れてるの?」
「だからキングサイズのベッドにするって言ったろ」

おぉ…僕、実は寝てる間にセイイチ蹴ってたりするんだろうか。離れて寝た方がよかった事あるんだ…
むむむって考え込んでると「俺が気にしてないんだから気にするな」っておしりのところを軽くくすぐられた。感覚はあるから少しモゾモゾしてしまう。

「夕飯は?何か食べたいもんあるなら言って」
「えっと…おうどん!」
「ちゃんと冷蔵庫の中身を考えて言ったな。偉い偉い」

仕事が終わったらしい。PCを閉じたセイイチは僕を服に入れたまま立ち上がった。このまま夕飯作るのは流石に僕が邪魔じゃないかな?

「セイイチ、セイイチ」
「んー?」
「僕戻るから、寝室に連れて行って!」
「自分で行く気はないのか、甘えん坊め」
「へへ。」

だって少しでも長くセイイチと一緒に居たいじゃん。
それに服の首元から顔を出してるのもなんかいい。気に入った。
寝室にはすぐ到着したので僕は服から抜け出してベッドへと飛び降りた。

「ありがとうセイイチ!着替えてくるから先に行っててー」
「んー?」
「セイイチ?」
「気にしないで、戻っていいぞ」
「?そう。むむむむ…」

頭の中で戻れーって念じるだけで人間の姿になれるなんて。とても便利。
人間の姿になった僕は素っ裸なのでさっさと服を着ようとして、セイイチに顎を掴まれた。

「セイイチ?キスしたいの?」
「今日はずっとお預けくらってたからな」
「しょうがないなぁ」

人形にいつものキスしたら拭くの大変そうだもんね。
顔が迫ってきたから僕は大人しく目を閉じて受け入れる。僕も好きだけど、セイイチは凄く凄くキスが好きで一緒にいるとしょっちゅうキスを求められる。

「ふぁっ、な、なに触ってるの?」  

僕がキスに夢中になってると、お胸を引っ掻かれて驚いて顔を離してしまった。
何度も言うけど、僕はいま素っ裸だ。露出した突起をカリッて指で引っ掻かれても僕はオスだからそこからは何も出ないのに。

丸い爪で引っ掻かれて、指の腹で潰されて、摘まれて。
よく分からないけど、ぞわぞわする。くすぐったい、が勝つかもしれない。

「セイイチ?」

戸惑う僕にチュッと唇を吸うだけのキスをして、セイイチはそっと僕の背中をベッドに沈めた。
お互いの顔が遠くなってしまって、少し寂しいなって思ったらセイイチの舌がゆっくりと胸の突起を撫でた。
くすぐったいばかりでよくわからないけど、つまりセイイチは興奮しちゃってるんだって理解した。

「セイイチ、セイイチー」
「んー?」
「僕だけ裸は、寂しいよぅ」

さっきまでセイイチの素肌に触れてたけど、それは人形の姿だったから。ノーカウントだ。

「…お前と居ると、どこまでも溺れてしまいそうだ」
「ふふ、じゃあ僕が息を吹き込んであげるね」

狸の僕を助けてくれたセイイチを、僕も助けてあげたくて付喪神になったんだから。
お胸を舐めてばかりいるセイイチの頭を抱き締めて、よしよしと撫でてあげた。

セイイチが溺れてるところは冷たくないよ、苦しくないよって伝わってほしいなぁ。
感想 0

あなたにおすすめの小説

消えることのない残像

万里
BL
最愛の兄・大貴の結婚式。高校生の志貴は、兄への想いが「家族愛」ではなく「恋」であったと、失恋と同時に自覚する。血の繋がりという境界線、そして「弟」という役割に縛られ、志貴は想いを封印して祝福の仮面を被る。 しかし数年後、大貴の息子が成長し、かつての兄と瓜二つの姿となったとき、止まっていた志貴の時間は歪な形で動き出す。 志貴(しき):兄・大貴に長年片思いしているが、告げることなく距離を置いていた。 大貴(だいき):志貴の兄。10歳年上。既婚者で律樹の父。無自覚に人を惹きつける性格。志貴の想いには気づいていない。 律樹(りつき):大貴の息子。明るく素直だが、志貴に対して複雑な感情を抱く。

ひとりも、ふたりも

鈴川真白
BL
ひとりで落ち着く時間も、ふたりでいる楽しい時間も両方ほしい 1人を謳歌するマイペース × 1人になりたいエセ陽キャ

絶賛、片想い中

いいいいい
BL
受け 檜山 颯斗(ひやま はやと) 攻め 須藤 慧 (すどう けい) 大学生bl

貧弱雑魚魔王ですが、なぜか最強騎士に執着されています

ふき
BL
貧弱雑魚な魔王の俺。 ある日、人間の国との小競り合いを止めるため、重鎮たちは「姫を人質にしろ」と言い出す。 仕方なく人間の城へ向かった俺だったが、当の姫は気絶寸前のか弱さ。 代わりに名乗り出たのは、姫を守る一人の騎士さまだった。 「俺ならば耐えられる」 人間は弱いはずなのに、なぜか目が離せない。 結局俺は、姫ではなく騎士さまを人質として魔王城へ連れ帰る。 魔王さまの責任で面倒見て下さい。 そんな言葉から始まる、貧弱雑魚魔王と最強騎士の妙な同居生活―― 「……じゃあさ、騎士さまが付けてよ。俺の名前、今じゃなくていいから」 「……俺は独占欲が強いので、俺にしか呼ばせませんよ」

キスの仕方がわかりません

慶野るちる
BL
全寮制男子校に入学した市原はクラス委員長になったため書類を提出しに生徒会室に行くと、そこに一人いた、初対面の副会長の近藤に襲われてしまう。  混乱するも相部屋の同級生・松川に助けられて元気を取り戻したある日、生徒会長の桜野から仕事を手伝って欲しいと依頼される。  最初は近藤に無視されていたが手伝う中で近藤から告白され、近藤への印象が少しずつ変わっていく市原だが。 表紙:Photo by Markus Spiske on Unsplash / powered by かんたん表紙メーカー様

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

とあるパーティの解散、あるいは結成

深山恐竜
BL
勇者パーティがダンジョンのトラップにかかって「天井が落ちてくる部屋」に閉じ込められた。脱出の術がなく、もはやここで圧死するのを待つのみ……と諦めた時、僧侶が立ち上がった。 「どうせ死ぬなら最期に男と性交してみたいんですが。この中に男が好きな方いらっしゃいませんか?」 死を前にして始まるパーティメンバーたちの性癖の暴露大会。果たして無事に外に出られるのか…? (ムーンライトノベルズ様にも掲載中)

花びらは散らない

美絢
BL
 15歳のミコトは貴族の責務を全うするため、翌日に王宮で『祝福』の儀式を受けることになっていた。儀式回避のため親友のリノに逃げようと誘われるが、その現場を王太子であるミカドに目撃されてしまう。儀式後、ミカドから貴族と王族に与えられる「薔薇」を咲かせないと学園から卒業できないことを聞かされる。その条件を満たすため、ミカドはミコトに激しく執着する。