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8.それはそれ、※微
これはこれ、なんて言葉があるよね。
「………お前、なんで人形になってるんだよ」
「元の姿に似てるから?思い出したせいかなぁ…この姿になると馴染むんだよね。」
狸の人形姿でくつろぐ僕を見て、セイイチのこめかみがピクピクと痙攣した。大丈夫だって、ちゃんと戻れるから。
まぁまぁ落ち着いて、家事はちゃんと終わらせたし。四足歩行落ち着くー
「セイイチはどうせまだ仕事でしょ?僕このまま大人しくしてるから気にしないで」
「………せめて視界の範囲内に居ろよ」
「はいよー」
今日は椅子に座ってダイニングテーブルでノートPCを操作してるセイイチの太腿の上に乗って丸くなった。
「………」
「ふぁ…昨日も遅かったから、僕ちょっとお昼寝するね」
「自由だなお前……」
遅かったの、セイイチのせいだからね。文句は言わせないよ。
今日も家事頑張ったし、シーツが乾くまでちょっと、休憩……
「んふふ、あったかぁ」
人形でも室温とか、感触はあるんだなぁ。不思議な仕様だ。
鼻をスンスンしたらセイイチの匂いがして落ち着く。狸の時にこんなに寝心地のいい経験はなかったな。いい匂い、あったかい、少し狭い。
「……せまい?」
「起きたか?」
「おはよー、セイイチ」
なんと僕の視界は肌色だ。どう見ても薄らと筋肉の線が出てるセイイチの身体だ。
「僕、なんでセイイチの服の中で寝てるの?」
「寝相が悪くて落ちまくるからだな。」
「おぅ。それは失礼しました。よいしょ」
「暴れるなって…」
よじ登ってセイイチの服の首元から頭を出した。至近距離にセイイチの喉仏!
「おい首元伸びるって…仕方ねーな」
ポンポンと人形の僕を優しく叩いて「もう少しで終わるから待ってな」とキーボードをカタカタ打つセイイチの顔を下から眺めて、この姿、邪魔せずくっつけるからやっぱりいいなぁって擦り寄った。セイイチの匂い好き。
「そういや。シーツは取り込んでおいたぞ」
「僕そんなに寝てたんだ。ありがとうねー」
「…まぁ、寝相悪いわ寝言言うわで服ん中に入れてれば生存確認は出来たから、これはこれで良かった」
「僕そんなに寝てる間は暴れてるの?」
「だからキングサイズのベッドにするって言ったろ」
おぉ…僕、実は寝てる間にセイイチ蹴ってたりするんだろうか。離れて寝た方がよかった事あるんだ…
むむむって考え込んでると「俺が気にしてないんだから気にするな」っておしりのところを軽くくすぐられた。感覚はあるから少しモゾモゾしてしまう。
「夕飯は?何か食べたいもんあるなら言って」
「えっと…おうどん!」
「ちゃんと冷蔵庫の中身を考えて言ったな。偉い偉い」
仕事が終わったらしい。PCを閉じたセイイチは僕を服に入れたまま立ち上がった。このまま夕飯作るのは流石に僕が邪魔じゃないかな?
「セイイチ、セイイチ」
「んー?」
「僕戻るから、寝室に連れて行って!」
「自分で行く気はないのか、甘えん坊め」
「へへ。」
だって少しでも長くセイイチと一緒に居たいじゃん。
それに服の首元から顔を出してるのもなんかいい。気に入った。
寝室にはすぐ到着したので僕は服から抜け出してベッドへと飛び降りた。
「ありがとうセイイチ!着替えてくるから先に行っててー」
「んー?」
「セイイチ?」
「気にしないで、戻っていいぞ」
「?そう。むむむむ…」
頭の中で戻れーって念じるだけで人間の姿になれるなんて。とても便利。
人間の姿になった僕は素っ裸なのでさっさと服を着ようとして、セイイチに顎を掴まれた。
「セイイチ?キスしたいの?」
「今日はずっとお預けくらってたからな」
「しょうがないなぁ」
人形にいつものキスしたら拭くの大変そうだもんね。
顔が迫ってきたから僕は大人しく目を閉じて受け入れる。僕も好きだけど、セイイチは凄く凄くキスが好きで一緒にいるとしょっちゅうキスを求められる。
「ふぁっ、な、なに触ってるの?」
僕がキスに夢中になってると、お胸を引っ掻かれて驚いて顔を離してしまった。
何度も言うけど、僕はいま素っ裸だ。露出した突起をカリッて指で引っ掻かれても僕はオスだからそこからは何も出ないのに。
丸い爪で引っ掻かれて、指の腹で潰されて、摘まれて。
よく分からないけど、ぞわぞわする。くすぐったい、が勝つかもしれない。
「セイイチ?」
戸惑う僕にチュッと唇を吸うだけのキスをして、セイイチはそっと僕の背中をベッドに沈めた。
お互いの顔が遠くなってしまって、少し寂しいなって思ったらセイイチの舌がゆっくりと胸の突起を撫でた。
くすぐったいばかりでよくわからないけど、つまりセイイチは興奮しちゃってるんだって理解した。
「セイイチ、セイイチー」
「んー?」
「僕だけ裸は、寂しいよぅ」
さっきまでセイイチの素肌に触れてたけど、それは人形の姿だったから。ノーカウントだ。
「…お前と居ると、どこまでも溺れてしまいそうだ」
「ふふ、じゃあ僕が息を吹き込んであげるね」
狸の僕を助けてくれたセイイチを、僕も助けてあげたくて付喪神になったんだから。
お胸を舐めてばかりいるセイイチの頭を抱き締めて、よしよしと撫でてあげた。
セイイチが溺れてるところは冷たくないよ、苦しくないよって伝わってほしいなぁ。
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