わたしを捨てたはずの婚約者様からは逃げられない。

りつ

文字の大きさ
15 / 116

15、分け合う熱*

「人肌で温めるといいと聞いたことがある」

 押し倒され、覆い被さられる。
 端正な顔がすぐ目の前にあって、その瞳の奥に浮かんだ色に、イレーネはどうして、と思った。

「ディートハルトさま……」

 痛む喉からは掠れた声しか出ない。ディートハルトはイレーネのブルネットの髪を撫で、耳の輪郭をなぞり、目元や頬など、意味もなく触ってきた。彼女は震えて、ただされるがままだ。

 乳房の大きさを実感するように掴まれ、やわやわと揉まれる。今日初めて見たというように視線を注がれ、寒さのせいですでに勃っていた尖りをさらに硬くしようと指のはらでくにくにと弄られる。そして吸い寄せられるように顔を寄せて、口に咥え、舌先で嬲り始めた。

「ん……」

 イレーネの漏らした吐息に、ディートハルトが視線だけ向けてくる。それはまるで今自分がしている行為を見せつけるようにも見え、イレーネは目を逸らした。

 彼は赤ん坊が吸い上げるように丹念に舐めしゃぶると、もう片方の蕾も同じようにいじめ抜いた。イレーネは悪寒と快感がないまぜになった感覚に襲われ、たった胸だけの愛撫で呼吸がひどく乱れ、頭がぼうっとしてしまう。

 ディートハルトの気がようやく済んで起き上がった時、彼女は気怠い表情で彼を見上げた。それはとろんとした目つきで、何度も気をやった後の様子を思わせた。

「真っ赤だな……」

 ディートハルトの指摘した通り、イレーネの白い肌は、首筋のあたりが赤くなっていた。上気した頬は、やはり行為後を思わせ、ディートハルトはじっと見下ろしながら、下へと手を伸ばした。

 だが蜜口に触れる前に、ぱしっとイレーネに手を掴まれて阻まれてしまう。彼女は弱々しく首を振って、やめてと懇願した。この体調であの快感は欲しくなかった。むしろ恐ろしかった。

 イレーネの願いを聞き入れてくれたのか、ディートハルトは手を引っ込めた。ほっとしたのも束の間、彼はなぜか服を脱ぎ始める。鍛えた裸身――しかし傷痕も残る素肌を晒され、イレーネは頭の中が混乱する。彼は下まで脱ぐと、イレーネの腕を引っ張り上げ、胡坐をかいてその上に向き合う形で抱きしめた。

「ディートハルトさま……」

 不安で揺れるイレーネの瞳をじっと見つめたかと思うと、肌をさらに密着させて抱きしめてくる。寒くて震えていた身体が、ディートハルトの熱い肌に触れて、温もりを感じる。

 しかしイレーネは彼の考えがさっぱりわからず、触れ合っている胸板を押し戻そうとした。

「ディートハルトさま。移して、しまいますから」
「移せばいい」

 ぎゅっと再度抱き寄せられる。今までこんなふうに素肌で抱き合ったことはなかった。――初めて抱かれた時でさえ、彼は服を着たままだった。

(やだ……)

 こんなのまるで愛し合っている行為だった。イレーネは身を捩って逃げようとした。でも風邪で気怠い身体は言うことを聞いてくれず、体格も力も何もかも違うディートハルトには意味のないことだった。

「イレーネ……」

 名前を呼ばないで。髪の毛を撫でないで。背中に触れないで。抱きしめないで。熱くさせないで。

 いつしか屹立がイレーネの腹に当たっていた。イレーネの柔らかな下生えをくすぐってくる。先ほど散々嬲られた蕾が胸板で押しつぶされて、擦れて、彼女が身を引こうとしても、ますますディートハルトはぐっと抱擁を強める。耳元に感じる掠れた吐息に頭の中がおかしくされる。触れて抱きしめているだけなのにイレーネの呼吸は徐々に乱されていく。

「ぁ……」

 くちゅりと蜜口に亀頭が当たった。ディートハルトの口が薄く開いて、は、は、と短く息を吐きながら目は物言いたげにイレーネを見つめている。まるでイレーネの許可を待っているような、飼い犬が主人を見るような目に見えた。

 でもすぐにそんなはずないと打ち消す。だってイレーネの方が従う立場だ。もしディートハルトが犬だとしても、狡猾で獰猛な、主人に従う振りをしただけの――

「んっ――」

 ぬぷりと先だけ入れられて、息を呑んだ。苦しい。そう思って眉根を寄せたイレーネの顔を見てか、ディートハルトはまた引き抜いていく。イレーネの膝を立たせ、尻を支えて、かさの部分だけひっかけるようにして、浅い箇所をちゅぱちゅぱと突いていくる。

「ぁっ……はぁ、んっ……」

 圧迫感はない。いつもは目も眩むほどの快感を容赦なく与えられて翻弄されてしまうが、今日はまだ理性を保てる。――そう、思っていた。

「ふ、ぅ……あっ……」

 奥へ届く前に尻を持ち上げられ、するりと引き抜かれていく。イレーネの口から物欲しげな声が漏れた。我慢できると思っていた熱が少しずつ溜まっていき、もどかしくてたまらない焦れったさを覚え始める。

(ちがう……ほしく、ない……)

 だがイレーネはいつしかディートハルトの首に手を回し、風邪できつい身体に力を入れて、ディートハルトの男根が中へ来ることを望んでいた。深くまで咥えるために腰を下ろそうとして、支えている彼の掌に尻を押しつけている自分がいた。

 彼女の変化に気づいたディートハルトは、彼女にばれないように密かに微笑む。髪を撫でながらそっと後頭部を引き寄せ、耳元で囁く。

「欲しい?」

 声はいつになく優しく、甘かった。

 最初イレーネは僅かに残った理性で否定した。だがディートハルトが変わらぬ動きを続け、首筋に顔を埋めて肌を吸ったりすると、いよいよ根を上げた。ぎゅっと自ら彼の身体にしがみつき、くぐもった声を上げながら肉杭を奥へと誘った。

「ぁ、う……はぁ、んっ、ん~~……」

 隘路がこじ開けられていく感覚。媚肉が肉棒にまとわりつき、溢れた蜜が粘ついた音を立てる。蜜壺いっぱいに感じる彼の存在。目に涙が滲み、イレーネは掠れた甘い声で啼いた。すぐに疲れても、駄々をこねるように不器用に身体を揺らし続けた。恥骨を彼の下生えに擦りつけ、その快感に酔いしれた。

 それでもまだ、何かが足りない。

「もう終わりでいいのか?」

 また耳元で聞かれた。だが今度は拒絶できなかった。もっと欲しいという意味で首を横に振った。

 ようやく主の了解を得られたディートハルトはイレーネの中を激しく突き始める。愛液で柔らかくなった中を滑り、まだ彼を受け入れることを拒んでいる箇所を執拗にほぐそうとする。

「うぅ、あっ、だめっ、」

 イレーネは身を仰け反らせ、頭を振った。肩にかかっていた髪がさらさらと零れ落ちていき、胸を張るように押し出された乳房がふるふると揺れる。ディートハルトが顔を寄せて赤い実に吸いつけば、さらに声を上げてよがった。

「あぁっ、あっ……いやっ、もう、んっ……いくっ、いっちゃう」

 ぎゅっと抱きしめられ、いいぞと言われた。弱い部分を何度も攻められ、悲鳴のような声を上げてイレーネは限界を迎えた。頭の中が真っ白になり、身体を大きく震わせる。だが絶頂の余韻に浸る暇なくディートハルトに押し倒され、のしかかれた状態のまま激しく腰を動かされ、白濁を出された。

 イレーネはディートハルトの腕の中でぐったりとしたまま、気を失った。

あなたにおすすめの小説

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。