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結婚式
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その後パトリシアたちのおかげで、グレイスは特に不安を覚えることなく、結婚式当日を迎えた。
朝から慌ただしく準備を進め、正午過ぎに大聖堂へと移動して、兄と共にバージンロードを歩く瞬間まできてしまった。
「お兄様、大丈夫?」
国王夫妻や王太子もいるせいか、兄はグレイス以上にガチガチに緊張していた。
「だ、大丈夫だ。無事おまえをレイモンド様のもとへ送り出してみせる」
「頑張って。わたしも隣にいるから」
グレイスの励ましに、兄はふと眉尻を下げて微笑んだ。
「おまえはいつも誰かの心配ばかりしているね。いや、僕が頼りないからか……。すまないな、グレイス。僕がもう少ししっかりしていれば、もっと大勢の人に祝福される形で、ここに立っているのも父上だったろうに」
「お兄様はお兄様で、わたしにできないことをずっとやってくださっていたわ。お父様がいらっしゃらないのは残念だけど……お兄様とこうして歩けるのも、すごく嬉しいから」
オルコット夫人――グレイスたちの母親が亡くなってから、パトリシア含めた兄妹三人の絆はより深まり、それぞれができることを自然と請け負うようになっていった。
兄は兄で、ずっと頑張ってきたことをグレイスは知っている。
「……ありがとう、グレイス。優しいおまえの幸せを願っているよ」
行こう、と兄が開いた扉の先へ誘ってくれる。
パイプオルガンの演奏が流れ、参列席はほとんど空白だ。前列の方に国王夫妻とバートラム、そして妹のパトリシアが座っていた。グレイスは兄と歩調を揃えながら、ゆっくりと花婿のもとまで歩いていく。
(レイモンド様……)
グレイスの目には、彼が誰よりも輝いて見えた。それは後ろから降り注ぐステンドグラスの光のせいだけではないだろう。彼の容姿が端正で、白い花婿衣装がとてもよく似合っているのは要因としては挙げられるかもしれない。でも決してそれだけではない。
突然嵐のようにグレイスの前に現れ、求婚して、隣国まで連れてきてくれた人だから……これから自分の夫になる人だからこそ、誰よりも特別に映るのだ。
「ああ、とても綺麗だ、グレイス……」
まだヴェール越しなのに、すでにレイモンドは確信した口調で呟き、グレイスの顔が露わになると、やっぱり、と言うように目を細めて微笑んだ。
「ずっと貴女に会いたくてたまらなかった」
切実な想いを込めて彼が述べるので、グレイスも同じ気持ちだったと気づかされたように「わたしも」と小さく呟く。
「貴女を全身全霊かけて大切にする」
神に誓った愛の言葉よりも重く、レイモンドはそう誓い、グレイスは彼のすべてを受け入れるように目を閉じて、口づけを交わした。
朝から慌ただしく準備を進め、正午過ぎに大聖堂へと移動して、兄と共にバージンロードを歩く瞬間まできてしまった。
「お兄様、大丈夫?」
国王夫妻や王太子もいるせいか、兄はグレイス以上にガチガチに緊張していた。
「だ、大丈夫だ。無事おまえをレイモンド様のもとへ送り出してみせる」
「頑張って。わたしも隣にいるから」
グレイスの励ましに、兄はふと眉尻を下げて微笑んだ。
「おまえはいつも誰かの心配ばかりしているね。いや、僕が頼りないからか……。すまないな、グレイス。僕がもう少ししっかりしていれば、もっと大勢の人に祝福される形で、ここに立っているのも父上だったろうに」
「お兄様はお兄様で、わたしにできないことをずっとやってくださっていたわ。お父様がいらっしゃらないのは残念だけど……お兄様とこうして歩けるのも、すごく嬉しいから」
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兄は兄で、ずっと頑張ってきたことをグレイスは知っている。
「……ありがとう、グレイス。優しいおまえの幸せを願っているよ」
行こう、と兄が開いた扉の先へ誘ってくれる。
パイプオルガンの演奏が流れ、参列席はほとんど空白だ。前列の方に国王夫妻とバートラム、そして妹のパトリシアが座っていた。グレイスは兄と歩調を揃えながら、ゆっくりと花婿のもとまで歩いていく。
(レイモンド様……)
グレイスの目には、彼が誰よりも輝いて見えた。それは後ろから降り注ぐステンドグラスの光のせいだけではないだろう。彼の容姿が端正で、白い花婿衣装がとてもよく似合っているのは要因としては挙げられるかもしれない。でも決してそれだけではない。
突然嵐のようにグレイスの前に現れ、求婚して、隣国まで連れてきてくれた人だから……これから自分の夫になる人だからこそ、誰よりも特別に映るのだ。
「ああ、とても綺麗だ、グレイス……」
まだヴェール越しなのに、すでにレイモンドは確信した口調で呟き、グレイスの顔が露わになると、やっぱり、と言うように目を細めて微笑んだ。
「ずっと貴女に会いたくてたまらなかった」
切実な想いを込めて彼が述べるので、グレイスも同じ気持ちだったと気づかされたように「わたしも」と小さく呟く。
「貴女を全身全霊かけて大切にする」
神に誓った愛の言葉よりも重く、レイモンドはそう誓い、グレイスは彼のすべてを受け入れるように目を閉じて、口づけを交わした。
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