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家族との顔合わせ、結婚式
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クロエはアルベリクの妻となった。彼の両親はことの経緯を聞いてたいそう驚き、「まったくお前は……」と息子のことを叱り、クロエには深々と頭を下げたのだった。
クロエとしては騙す形でアルベリクに結婚させたので、むしろこちらこそ申し訳ないと言ったのだが、彼の両親はだいぶ前から息子の態度について思うところがあったようだ。
「この子、あなたが何度断っても、しつこく頼み込んだのでしょう? お家まで探してたずねて行って……それって一歩間違えばとても恐ろしい振る舞いになっていたと思うの。だから私たち、もう怖くて怖くて……クロエさん。あなた、仕方なくこの子と結婚するんじゃないわよね? 脅されているわけではないのよね? 大丈夫よね?」
アルベリクの母親、モラン夫人に何度も確認され、クロエはああ、やはり彼の執着はちょっと異常だったのだな、と遠い目をした。
けれどそんな彼の一途さ(と言っておく)にあの日のクロエが救われたのも事実である。だから大丈夫です、ときっぱり伝えた。
「わたしもアルベリク様と結婚したいと思っております」
クロエの意思に両親はほっと安堵の息をつき、アルベリクの兄弟たちからは揶揄いまじりの祝福を受けた。
「今まで全く女性に見向きもしなかったあいつがここまで夢中になるってんだからどんな相手だろうと思ってたけど、納得だな。可愛い子じゃないか」
「男の僕から見ても兄さんのしつこさはちょっと引いたけど……根は良い人だから。どうか兄のことよろしくお願いします、クロエさん」
幸せになれよ! とバンバン背中を叩かれるアルベリクの光景を見て……正直、拍子抜けした。もっと反対されると思っていた。本当にわたしなんかでいいのだろうかと不安にもなった。
「どうした、クロエ」
ぼうっとしているクロエにアルベリクが心配した様子で顔を覗き込んでくる。
「疲れたなら、もう休んでいるといい」
彼のことをわりと鈍感だと思っていたが、訂正する必要があるようだ。あるいはそれはクロエ限定かもしれないけれど。
「大丈夫よ。それより……あなた、本当にわたしでいいの?」
「もちろんだ。あなたがいい」
力いっぱい答える彼になんだか泣きそうになる。ここへ至るまで正直気持ち悪いなと思ったこともあったし、一緒に暮らし始めた今でも時々変な人だなと思うけれど、アルベリクはどこまでもクロエに優しく、よき夫である。
そんな彼をクロエも愛したい。ゆっくり、少しずつでも。
結婚式の日は幸運にもよく晴れていた。クロエは新しい花嫁衣装に身を包んで、アルベリクに永遠の愛を誓った。彼はクロエの花嫁姿をじっと見ては綺麗だ、愛している、幸せにすると繰り返すので、周囲から「お熱いね!」と揶揄われてだいぶ恥ずかしかった。
「もうわかったから!」とクロエが羞恥のあまり怒っても、「いいや、言い足りない」とアルベリクが真面目に答えて、そんな二人の掛け合いにまた笑いが起きたことは今となってはいい思い出である。
クロエの身内からは兄だけが参加してくれて「よかったな」と計画が上手くいったことも含めて祝ってくれた。エリーヌは参加しなかった。クロエはありがとうございますとアルベリクの隣で今まで育ててくれた礼を述べた。
一度、というか二、三度、真相を知ったラコスト夫人がクロエとアルベリクのいる家を訪ねてきたこともあった。
夫人はクロエがいなくなった心労から解放されたと思っていたが、疲れた顔は変わらず、今でもクロエを憎み続けていた。
「お前はこんなところにいるべき人間じゃないわ」
そう言って無理矢理連れ戻されそうになったが、クロエは夫人の手を振り払った。逆上した彼女が襲いかかってきても、老いた身体を躱すのは容易く、あっけなく使用人の男たちに取り押さえられて終わった。
「お前だけが幸せになるなんて許さない!」
幸せになれているのだろうか。クロエにはわからなかった。でも思うのだ。
「わたしは自分の生まれでもう誰かに縋りたくない。自分で自分の幸せを掴みたいと思っています」
ラコスト夫人にはたぶん伝わらなかったと思う。夫を奪われた憎しみが、正論で消化されるはずがない。それも含めて、クロエは受けとめた。
クロエとしては騙す形でアルベリクに結婚させたので、むしろこちらこそ申し訳ないと言ったのだが、彼の両親はだいぶ前から息子の態度について思うところがあったようだ。
「この子、あなたが何度断っても、しつこく頼み込んだのでしょう? お家まで探してたずねて行って……それって一歩間違えばとても恐ろしい振る舞いになっていたと思うの。だから私たち、もう怖くて怖くて……クロエさん。あなた、仕方なくこの子と結婚するんじゃないわよね? 脅されているわけではないのよね? 大丈夫よね?」
アルベリクの母親、モラン夫人に何度も確認され、クロエはああ、やはり彼の執着はちょっと異常だったのだな、と遠い目をした。
けれどそんな彼の一途さ(と言っておく)にあの日のクロエが救われたのも事実である。だから大丈夫です、ときっぱり伝えた。
「わたしもアルベリク様と結婚したいと思っております」
クロエの意思に両親はほっと安堵の息をつき、アルベリクの兄弟たちからは揶揄いまじりの祝福を受けた。
「今まで全く女性に見向きもしなかったあいつがここまで夢中になるってんだからどんな相手だろうと思ってたけど、納得だな。可愛い子じゃないか」
「男の僕から見ても兄さんのしつこさはちょっと引いたけど……根は良い人だから。どうか兄のことよろしくお願いします、クロエさん」
幸せになれよ! とバンバン背中を叩かれるアルベリクの光景を見て……正直、拍子抜けした。もっと反対されると思っていた。本当にわたしなんかでいいのだろうかと不安にもなった。
「どうした、クロエ」
ぼうっとしているクロエにアルベリクが心配した様子で顔を覗き込んでくる。
「疲れたなら、もう休んでいるといい」
彼のことをわりと鈍感だと思っていたが、訂正する必要があるようだ。あるいはそれはクロエ限定かもしれないけれど。
「大丈夫よ。それより……あなた、本当にわたしでいいの?」
「もちろんだ。あなたがいい」
力いっぱい答える彼になんだか泣きそうになる。ここへ至るまで正直気持ち悪いなと思ったこともあったし、一緒に暮らし始めた今でも時々変な人だなと思うけれど、アルベリクはどこまでもクロエに優しく、よき夫である。
そんな彼をクロエも愛したい。ゆっくり、少しずつでも。
結婚式の日は幸運にもよく晴れていた。クロエは新しい花嫁衣装に身を包んで、アルベリクに永遠の愛を誓った。彼はクロエの花嫁姿をじっと見ては綺麗だ、愛している、幸せにすると繰り返すので、周囲から「お熱いね!」と揶揄われてだいぶ恥ずかしかった。
「もうわかったから!」とクロエが羞恥のあまり怒っても、「いいや、言い足りない」とアルベリクが真面目に答えて、そんな二人の掛け合いにまた笑いが起きたことは今となってはいい思い出である。
クロエの身内からは兄だけが参加してくれて「よかったな」と計画が上手くいったことも含めて祝ってくれた。エリーヌは参加しなかった。クロエはありがとうございますとアルベリクの隣で今まで育ててくれた礼を述べた。
一度、というか二、三度、真相を知ったラコスト夫人がクロエとアルベリクのいる家を訪ねてきたこともあった。
夫人はクロエがいなくなった心労から解放されたと思っていたが、疲れた顔は変わらず、今でもクロエを憎み続けていた。
「お前はこんなところにいるべき人間じゃないわ」
そう言って無理矢理連れ戻されそうになったが、クロエは夫人の手を振り払った。逆上した彼女が襲いかかってきても、老いた身体を躱すのは容易く、あっけなく使用人の男たちに取り押さえられて終わった。
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幸せになれているのだろうか。クロエにはわからなかった。でも思うのだ。
「わたしは自分の生まれでもう誰かに縋りたくない。自分で自分の幸せを掴みたいと思っています」
ラコスト夫人にはたぶん伝わらなかったと思う。夫を奪われた憎しみが、正論で消化されるはずがない。それも含めて、クロエは受けとめた。
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