シニカルロマネスク

成宮まりい

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2・月と太陽

2

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「断る」

「なんでさ! 昔は何でもお揃いだったろ?」

「……サム。俺ごときにはこの格好が似合いだよ」


サムのこんな不服そうな顔を見たのはいつぶりだろうか?

サムは俺の髪を指で遊びながら背中にもたれた。


「ボクと……お揃いはイヤなの?」

「そう言う事を言ってるんじゃないんだ、わかるか? お前は美しいが俺は美しくない、それだけのことさ」

「ジェイは男前だよ?」

「よしてくれ」


「舞踏会なんかでも近づきがたいだけなんだ。何ていったって愛想ないもんな。顔はいいのに何故か怒ってるように見える。ジェイはさ、ブタみたいな奴や、モンスターも逃げ出すような奴が山ほど居る中で相当に綺麗な顔立ちだよ! きっとさ、もう少しさ、髪を伸ばして色気を出したらモテモテだよ」

そう言いながら、俺の耳朶をペロッと舐めた。

「サム!」

「……こうして髪をかきあげることもなく耳や首筋に噛みつく事が出来るのは素敵で合理的だけどさ、こんな短い髪じゃ色気ないじゃないか」

「やめろ」

「もう戦はおわったのに」


寝癖のついているであろう、旋毛の辺りの髪を撫でつける様にしながらサムは首筋に顔を埋める。


「よせよ」

「でも……この襟足はそそるんだよね。首の太さが際立って色っぽいんだよ」

「男なんだから、色気なんかなくていいさ」

「はぁ。何いってるんだよ、貴族の子息ともなれば、もう伴侶を見つけて子を授かっている者だっているんだぞ、ジェイはそんなだからホモ呼ばわりされるんだよ」


 サムは呆れた口調でそういいながら、先のとがった靴を脱いで足を伸ばしベッドに横になった。

ヒラヒラとしたシャツの袖口は百合の花のようだと思いながら見た。

「そんなこと言って、……おまえは俺がご婦人と親しくすると不機嫌になるじゃないか」


「それは、顔に軍人の妻になりたくて男を漁っています! って書いてあって脳味噌の中は財産と性生活でいっぱいな女の臭いがたまらないからだよ」


鼻を摘まんで眉間にしわを寄せると、大袈裟に片方の手で空気をかき回すように扇いで見せた。


「ジェイは判らないのか? あのメスの臭い。悪魔の儀式で使う捧げもののほうがよっぽどいい香りだよ。あれは最悪だね」


「ははは! そりゃ困ったな。悪魔の儀式を知らんので何とも想像出来んがきっと史上最悪の香りなのだろうな」


「そうさ。ボクは鼻がいいからね」


顔をしかめたままサムは熱弁するように言った。ふわふんと俺が頷くと、横になったまま続けた。



「でも……ボク。リリーならいいよ。あの子はいい香りがしたよ。なんだろう?」


サムはうっとりとして続けた。



「優しい匂いだったよ。なんとも懐かしい、そんな匂いだよ。だからさ、ジェイとリリーが寝たとしても、きっと怒らないし……むしろ嬉しいかも、あんな綺麗な女の子は久しぶりに見たよ。絶対処女だし」

「さっきから、処女にこだわるな。それ、そんなに大事か?」


「いや、別に。そもそも貴族なんて世間体では処女だって事で貞操云々騒ぐけど、大抵の女も男も処女でもなきゃ童貞でもないだろ?」

サムの言う事もあながち間違いではない。




「でも、あの子は100%処女だよ。だからなのかな……なんか……壊してみたくなるっていうか、誰も開いた事のない世界を開く悦に浸りたいのかもね……まあ、ボクには出来ない事だから、ジェイに託したいのさ」


「……大役だな」

「ジェイだってリリーの事満更でもないんだろ? 口説いちゃえよ」


俺は合わせのバスローブのよう病床着を脱ぐと椅子にかけて、ベッドにもぐった。

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