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中編
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わたしは慌てて振り向いたけれど、わたしの後ろに祖父はいなかった。でも、鏡にはちゃんと映っている。
今日の最後はこの姿見鏡だったか……。
リアルなのか違うのか、わからないところは怖い。
つらいけれども、わたしはいつも鏡から目を離せなかった。
鏡の中のわたしは、今度は祖父に犯された。
必死に抵抗していたわたしだったけれど、わたしは、祖父に髪をつかまれ振り回された。わたしはうつ伏せで倒れる。祖父は、わたしの髪から手を離さず、そのまま床にわたしの頭を数回叩きつける。軽い脳震盪でもおこしたのか、わたしは、抵抗する力を奪われたようだ。祖父は、わたしのスウェットのズボンを下着ごと剥ぎ取る。
祖父は下半身だけ裸になり、わたしを後ろから犯した。わたしはまだ力が入らないようで、泣きじゃくりながら祖父の男根を受け入れるしかなかった。
父、兄、弟同様、祖父も激しかった。後ろからだけでなく、向きを変えながら犯した。まくり上げられた上半身のスウェットの裾から乳房があらわになり、祖父は激しく揉みしだきながら乳首にむしゃぶりついた。今日の映像で、祖父は家族の誰よりも激しく乱暴だった。
祖父の行為は、わたしの顔に精液を吐きかけることで終わった。わたしは動けず、横になったまま、やはり、ただ泣くばかりだった。
わたしの見た鏡の中の映像は、わたし自身にも理解できなかった。
思春期の期待や恐れが、精神状態によってまれに夢に出てくる話は聞いたことがある。けれど、わたしにそんな性的な期待も願望もなければ、父、兄、弟、祖父に対しての恐れもない。普段一緒に生活をしていても、不安を感じたことなんか一度もない。
わからない。
ベッドに横になりながら考えるけれど、やっぱりわからない。
ふと、ひとつ、気になる鏡を思い出した。
入院中の母が誕生日のお祝いで買ってくれた、コスメ用品が収納できるメイクボックス。ふたを開けたその裏側に鏡がついている。
大好きな母が、「早いかもしれないけれど、練習しておかなくっちゃね」と、元気な笑顔でプレゼントしてくれたわたしの宝物だ。
わたしの宝物の鏡は何を映すのか。
わたしは、恐る恐るメイクボックスのふたを開け、鏡を見た。
そこには、わたしと母の姿が映っていた。
わたしのベッドの上で、二人とも裸だった。わたしは母の胸に寄りかかり、母は後ろから、優しくわたしを抱きしめてくれていた。
わたしも母も穏やかな笑顔で、わたしの顔には幸せが満ち溢れていた。ふたりとも何か会話を交わし、とても楽しそう。鏡を見るわたしでも、母の温もりをも感じられるほどだった。
母に甘えるわたしは、自分のことでありながら、すごく可愛く感じた。
鏡を見るわたし自身も幸せな気持ちになった。
けれど、
突然、わたしと母を映す鏡にひびが入り割れたっ。
弾けるように割れ、ガラスの破片となった鏡がメイクボックスの中に散乱した。
ヒビが入っていたわけじゃない。持ち運びも注意していた。落としもしなかったしぶつけたこともなかった。
おかしい。鏡って、何もしていない状態でこんな割れ方はしないはず。
わたしは、不安の中でガラスの破片を片付けはじめた。
細かいガラス片にも注意しながら片付け終わったとき、父が大声を出しながらみんなの部屋をノックして回った。
お母さんの容態が悪化。いますぐみんなで病院に向かうと。
父が車を出し、兄がバイクを出す。
わたしは兄のバイクにまたがった。
何度か兄のバイクでタンデムしたことはあるけれど、兄の運転はいつもと違っていた。焦っている。それはすぐにわかった。わたしは兄にしがみつきながら、母の無事を祈った。
兄のバイクは、父の車より先に病院に到着した。そして、先にバイクを降りたわたしは、誰よりも先に母の病室に向かった。
わたしが病室に駆け込んだとき、母は白い顔で眠っていた。主治医と看護師は、その横で暗い顔で立っていた。
主治医が、時刻を述べたあと、「臨終」を口にした。
わたしは、ベッドに顔を付けて激しく泣いた。
今日の放課後、お見舞いに来たときはすごく元気だったのに。次の土曜日は、プレゼントしてくれたメイクボックスでお化粧も教えてくれるって笑顔で言ってたのに。
わたしは激しく取り乱し、落ち着くまでかなり時間がかかった。
その日から、わたしは何をする気力もなくなってしまった。
母の代わりとして行っていた食事の支度もできず、祖父か弟が、コンビニやスーパーで弁当を買ってきてくれる。
食事を口にすることはなかなかできなかったけれど、お風呂には入った。考えて動くというよりも、ルーティンとして、機械的に体が動き、髪や体を洗った。
ある日の入浴中、髪を洗うわたしは視線を感じた。
見られているっ。
慌てて浴室の扉を見る。浴室の窓を見る。
覗けるような隙間はない。
けれど、そう、いま、たしかに誰かに見られていた。
わたしは怖くなって、急いでシャンプーを流した。
浴室の扉を少し開け脱衣場を見ると、廊下に続く脱衣場の扉が静かに閉まるのが見えた。
やはり、誰かが見ていた。
今日の最後はこの姿見鏡だったか……。
リアルなのか違うのか、わからないところは怖い。
つらいけれども、わたしはいつも鏡から目を離せなかった。
鏡の中のわたしは、今度は祖父に犯された。
必死に抵抗していたわたしだったけれど、わたしは、祖父に髪をつかまれ振り回された。わたしはうつ伏せで倒れる。祖父は、わたしの髪から手を離さず、そのまま床にわたしの頭を数回叩きつける。軽い脳震盪でもおこしたのか、わたしは、抵抗する力を奪われたようだ。祖父は、わたしのスウェットのズボンを下着ごと剥ぎ取る。
祖父は下半身だけ裸になり、わたしを後ろから犯した。わたしはまだ力が入らないようで、泣きじゃくりながら祖父の男根を受け入れるしかなかった。
父、兄、弟同様、祖父も激しかった。後ろからだけでなく、向きを変えながら犯した。まくり上げられた上半身のスウェットの裾から乳房があらわになり、祖父は激しく揉みしだきながら乳首にむしゃぶりついた。今日の映像で、祖父は家族の誰よりも激しく乱暴だった。
祖父の行為は、わたしの顔に精液を吐きかけることで終わった。わたしは動けず、横になったまま、やはり、ただ泣くばかりだった。
わたしの見た鏡の中の映像は、わたし自身にも理解できなかった。
思春期の期待や恐れが、精神状態によってまれに夢に出てくる話は聞いたことがある。けれど、わたしにそんな性的な期待も願望もなければ、父、兄、弟、祖父に対しての恐れもない。普段一緒に生活をしていても、不安を感じたことなんか一度もない。
わからない。
ベッドに横になりながら考えるけれど、やっぱりわからない。
ふと、ひとつ、気になる鏡を思い出した。
入院中の母が誕生日のお祝いで買ってくれた、コスメ用品が収納できるメイクボックス。ふたを開けたその裏側に鏡がついている。
大好きな母が、「早いかもしれないけれど、練習しておかなくっちゃね」と、元気な笑顔でプレゼントしてくれたわたしの宝物だ。
わたしの宝物の鏡は何を映すのか。
わたしは、恐る恐るメイクボックスのふたを開け、鏡を見た。
そこには、わたしと母の姿が映っていた。
わたしのベッドの上で、二人とも裸だった。わたしは母の胸に寄りかかり、母は後ろから、優しくわたしを抱きしめてくれていた。
わたしも母も穏やかな笑顔で、わたしの顔には幸せが満ち溢れていた。ふたりとも何か会話を交わし、とても楽しそう。鏡を見るわたしでも、母の温もりをも感じられるほどだった。
母に甘えるわたしは、自分のことでありながら、すごく可愛く感じた。
鏡を見るわたし自身も幸せな気持ちになった。
けれど、
突然、わたしと母を映す鏡にひびが入り割れたっ。
弾けるように割れ、ガラスの破片となった鏡がメイクボックスの中に散乱した。
ヒビが入っていたわけじゃない。持ち運びも注意していた。落としもしなかったしぶつけたこともなかった。
おかしい。鏡って、何もしていない状態でこんな割れ方はしないはず。
わたしは、不安の中でガラスの破片を片付けはじめた。
細かいガラス片にも注意しながら片付け終わったとき、父が大声を出しながらみんなの部屋をノックして回った。
お母さんの容態が悪化。いますぐみんなで病院に向かうと。
父が車を出し、兄がバイクを出す。
わたしは兄のバイクにまたがった。
何度か兄のバイクでタンデムしたことはあるけれど、兄の運転はいつもと違っていた。焦っている。それはすぐにわかった。わたしは兄にしがみつきながら、母の無事を祈った。
兄のバイクは、父の車より先に病院に到着した。そして、先にバイクを降りたわたしは、誰よりも先に母の病室に向かった。
わたしが病室に駆け込んだとき、母は白い顔で眠っていた。主治医と看護師は、その横で暗い顔で立っていた。
主治医が、時刻を述べたあと、「臨終」を口にした。
わたしは、ベッドに顔を付けて激しく泣いた。
今日の放課後、お見舞いに来たときはすごく元気だったのに。次の土曜日は、プレゼントしてくれたメイクボックスでお化粧も教えてくれるって笑顔で言ってたのに。
わたしは激しく取り乱し、落ち着くまでかなり時間がかかった。
その日から、わたしは何をする気力もなくなってしまった。
母の代わりとして行っていた食事の支度もできず、祖父か弟が、コンビニやスーパーで弁当を買ってきてくれる。
食事を口にすることはなかなかできなかったけれど、お風呂には入った。考えて動くというよりも、ルーティンとして、機械的に体が動き、髪や体を洗った。
ある日の入浴中、髪を洗うわたしは視線を感じた。
見られているっ。
慌てて浴室の扉を見る。浴室の窓を見る。
覗けるような隙間はない。
けれど、そう、いま、たしかに誰かに見られていた。
わたしは怖くなって、急いでシャンプーを流した。
浴室の扉を少し開け脱衣場を見ると、廊下に続く脱衣場の扉が静かに閉まるのが見えた。
やはり、誰かが見ていた。
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