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後編
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扉に注意を払い、体を拭き、急いでスウェットを着こんで廊下に出る。
しかし、廊下には誰もいなかった。
わたしは不安を抱えながら、お風呂から出たことを伝えにリビングに向かった。
リビングには、みんながそろっていた。母が死んでから、わたしを含めてだけど、みんなの目に生気が感じられることはなかった。ただ、逆に何を考えているのかわからない目つきで、ものすごく恐く感じる。
さらに、とくに今夜のみんなの目は、いつもと違うふうに感じた。
みんなの視線が、わたしの濡れた髪と顔を見て、胸をじっと見ているのがわかった。
まるで、性的に女性を見るオスの目つき。
わたしは逃げるようにその場を後にし、自分の部屋に駆け込み急いでカギを掛けた。
部屋に入ったわたしだけれど、扉に背中を向けることはできなかった。壁に背中をつけ、扉を注視した。
そして、考える。
いつからか今日まで、毎日映し出される鏡の映像。
さっきのお風呂場の扉。
みんなの目つきと視線。
わたしの中で、それはすぐに一つの線で結ばれた。しかも、お風呂場の扉のこと。誰かがすでに行動している。
いったい誰?
ううん、鏡の映像そのままであれば、みんなだっ。
そのときっ、部屋の前に誰か立っている気配を感じた。
物音はしない。ただ、たしかに誰かがいる。
だれっ。
確認したい。でも、扉は開けられない。
開けたら鏡の映像そのものが起きてしまう。
大声で叫べば誰か助けてくれる?
それもだめ。みんな同じ目的を持っている。
でも、鏡の映像って、そんなことがあるもの?
もしかしたら、
わたしの大切にするメイクボックスの鏡が割れたのは、これから起きるだろうことを教えてくれたんじゃないだろうか。
いま、わたしの一番の宝物は母からもらったこのメイクボックスだ。母は、鏡を通して、あたしに危険を教えてくれたんじゃないだろうか。鏡が割れたのも、映像は単なる見せ物じゃなく、実際に起きることとして、ことの重大さを母が伝えてくれたのではないか。
そうだ。そうに違いない。
母は病室から、強い想いでわたしに伝えてくれていたんだ。
どうしよう。どうしよう、お母さん。わたし、どうしたらいいんだろう。このままだったら、わたし、家族のみんなに犯されてしまう。もしかしたら、誰かわからない家族の子どもを身ごもってしまうかもしれない。
どうしよう。
わたしは母が送ってくれた鏡のメッセージを落ち着いて考える。
わたしが犯される映像を映す家の中の鏡。
幸せなわたしを映す母のくれた大切な鏡。
でも、母の鏡は割れてガラス片になった。
温もりにあふれるやさしい母の顔が見えなくなってしまった。
割れる……。
壊れる……。
見えなくなる……。
見えなくなる?
まさか、そうなの? あの鏡が割れたのは、わたしがやるべきことをお母さんが教えてくれたの?
壊して、現実のわたしの視界から消す。
犯される前に殺す。
うん、そうだよね。ムリヤリ犯されてつらい思いをするんだったら、殺したほうがずっといい。警察に捕まったとしても、わたしにとって、そっちのほうがずっと幸せ。
わかったよ、お母さん、ありがとう。わたし、殺すよ。
犯される前に殺すよ。
でも、方法は?
ひとりずつなんてだめ。みんないっぺんに殺さなくちゃ。
ガスや放火は避難されることもある。それに、お隣に迷惑がかかるのはだめ。これはうちだけの問題。
お母さん。お母さんだったらどうする?
お母さんだったら……。
もしかしたら、お母さんっ、まさかっ。お母さんの花壇っ。
わたしは、母の手入れしていた庭の植物を思い出せる限り検索する。
すずらん、スイセン、彼岸花……。そのほかも。
間違いない。全部毒を持っている。
母は入院するとき、わたしの体の心配と、この花壇の手入れのことを心配していた。
お母さん、そうだったんだね。いつかわたしのためにって、お母さんはちゃんと準備をしてくれていたんだね。
食事で出せば、うん、一度に済ませられるね。
お母さん、心配しないで。わたし、お母さんの愛情と想いをしっかり受け止めて、わたし、自分の体は自分で守るからっ。
しかし、廊下には誰もいなかった。
わたしは不安を抱えながら、お風呂から出たことを伝えにリビングに向かった。
リビングには、みんながそろっていた。母が死んでから、わたしを含めてだけど、みんなの目に生気が感じられることはなかった。ただ、逆に何を考えているのかわからない目つきで、ものすごく恐く感じる。
さらに、とくに今夜のみんなの目は、いつもと違うふうに感じた。
みんなの視線が、わたしの濡れた髪と顔を見て、胸をじっと見ているのがわかった。
まるで、性的に女性を見るオスの目つき。
わたしは逃げるようにその場を後にし、自分の部屋に駆け込み急いでカギを掛けた。
部屋に入ったわたしだけれど、扉に背中を向けることはできなかった。壁に背中をつけ、扉を注視した。
そして、考える。
いつからか今日まで、毎日映し出される鏡の映像。
さっきのお風呂場の扉。
みんなの目つきと視線。
わたしの中で、それはすぐに一つの線で結ばれた。しかも、お風呂場の扉のこと。誰かがすでに行動している。
いったい誰?
ううん、鏡の映像そのままであれば、みんなだっ。
そのときっ、部屋の前に誰か立っている気配を感じた。
物音はしない。ただ、たしかに誰かがいる。
だれっ。
確認したい。でも、扉は開けられない。
開けたら鏡の映像そのものが起きてしまう。
大声で叫べば誰か助けてくれる?
それもだめ。みんな同じ目的を持っている。
でも、鏡の映像って、そんなことがあるもの?
もしかしたら、
わたしの大切にするメイクボックスの鏡が割れたのは、これから起きるだろうことを教えてくれたんじゃないだろうか。
いま、わたしの一番の宝物は母からもらったこのメイクボックスだ。母は、鏡を通して、あたしに危険を教えてくれたんじゃないだろうか。鏡が割れたのも、映像は単なる見せ物じゃなく、実際に起きることとして、ことの重大さを母が伝えてくれたのではないか。
そうだ。そうに違いない。
母は病室から、強い想いでわたしに伝えてくれていたんだ。
どうしよう。どうしよう、お母さん。わたし、どうしたらいいんだろう。このままだったら、わたし、家族のみんなに犯されてしまう。もしかしたら、誰かわからない家族の子どもを身ごもってしまうかもしれない。
どうしよう。
わたしは母が送ってくれた鏡のメッセージを落ち着いて考える。
わたしが犯される映像を映す家の中の鏡。
幸せなわたしを映す母のくれた大切な鏡。
でも、母の鏡は割れてガラス片になった。
温もりにあふれるやさしい母の顔が見えなくなってしまった。
割れる……。
壊れる……。
見えなくなる……。
見えなくなる?
まさか、そうなの? あの鏡が割れたのは、わたしがやるべきことをお母さんが教えてくれたの?
壊して、現実のわたしの視界から消す。
犯される前に殺す。
うん、そうだよね。ムリヤリ犯されてつらい思いをするんだったら、殺したほうがずっといい。警察に捕まったとしても、わたしにとって、そっちのほうがずっと幸せ。
わかったよ、お母さん、ありがとう。わたし、殺すよ。
犯される前に殺すよ。
でも、方法は?
ひとりずつなんてだめ。みんないっぺんに殺さなくちゃ。
ガスや放火は避難されることもある。それに、お隣に迷惑がかかるのはだめ。これはうちだけの問題。
お母さん。お母さんだったらどうする?
お母さんだったら……。
もしかしたら、お母さんっ、まさかっ。お母さんの花壇っ。
わたしは、母の手入れしていた庭の植物を思い出せる限り検索する。
すずらん、スイセン、彼岸花……。そのほかも。
間違いない。全部毒を持っている。
母は入院するとき、わたしの体の心配と、この花壇の手入れのことを心配していた。
お母さん、そうだったんだね。いつかわたしのためにって、お母さんはちゃんと準備をしてくれていたんだね。
食事で出せば、うん、一度に済ませられるね。
お母さん、心配しないで。わたし、お母さんの愛情と想いをしっかり受け止めて、わたし、自分の体は自分で守るからっ。
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