67 / 77
番外編
リクエスト■番外編〜映画の日〜
しおりを挟む
※これは12月1日に追加した、二人の絡みがもっと見たい&大人の表現を……とのリクエストを取り入れて書いた「■異動」の間のラブコメ風番外編です
ある日、デイサービスに行くと……
春香と明美が昼休憩中に映画話で盛り上がっていた。
「うっそ~ハルちゃんすごいじゃ~ん」
「でしょ? あ、悠希くん! 聞いてよ~昨日映画の日だったから、中学の時から好きな俳優さんが主演の映画を見に行ったら……」
「出てきた場所が新婚旅行で行った場所と同じで、調べてみたら撮影時期も同じだったの! すごくない? 絶対すれ違ってたよ~」
「なんだそれ~何て映画?」
「50回目のプロポーズ」
「あ、あれか、見たか……てかどうでもいいわ~」
「そういえば、前に悠希くんと一緒に見に行った『手紙』に出てた俳優さんもヒロインの弟役で出てたよ? ほら、歌手もやってて若手で人気の……」
「『手紙』? なんて映画見たっけ? あ~見たような気がするけど誰と見たか忘れた」
「もう、またそんなこと言って……」
「てか好きな俳優なんていたんだ……確かに演技派のカメレオン俳優で有名だよな」
「そうそう私、中学の頃から好きだったんだけど旦那にちょっと似てるんだよね♪」
「は? 全然似てないし……メガネ変えた方がいんじゃね?」
「も~そうやってすぐメガネをバカにして~メガネ…………で思い出したけど、この間、道歩いてたら『好きなタイプのメガネだったんで』って声かけられたよ」
「何それ~メガネフェチの人だったんじゃない?」
「まあメガネが本体かって位、似合うしな」
「またそれ~昔からよく言われてバカにされるんだよね」
「コンタクトにしたら?」
「しようとしたけどダメだったの……だからメガネの人が近くにいると安心するんだよね(バカにされにくくなるから)」
「な、なんじゃそりゃっ……それって」
「そういえば『手紙』に出てきた俳優さんも悠希くんに似てるよね~特に声が」
「お前の目と耳は節穴か?」
「え~似てるよ~この間、歌番組で歌ってるのを見たけど歌声も似てたよ?」
「あ~あの歌詞間違えて2番を2回歌ってたやつな」
「そう、間違えても最後まで一生懸命に歌う姿になんだか泣けてきて……歌は技術じゃなくて心なんだと思ったよ」
「それは暗に下手と言……」
「違うよ! 確かにその後デュエット曲を歌ってた俳優さんの方が上手いし声もカッコよかったけど、涙までは出なかったから……きっと人の心に届く不思議な力がある声なんだよ」
「やけに力説するな」
「実は私…………声フェチなんだ」
「声フェチ? なにそれ、ウケるわ~声優オタクかよ」
「オタクという程声優さんにはそんな詳しくないけど……声聞いただけで何のキャラクターと同じかは、すぐに分かるよっ」
「そんな自慢気に言われても……」
「中学から好きな俳優さんも声が好きで……きっかけは私と同じあだ名の主人公が出てくるアニメ映画で王子役の声優をやってたからで……あと二の腕も好きかも……私が脂肪だらけだから憧れるっていうか」
「アハハほんとだ~ハルちゃんの二の腕ダルんダルんでウケる~」
明美が春香の二の腕をつかんでプニプニしていた。
「明美ちゃんは筋肉あってカッコいいな~」
お互いの二の腕の肉をつまみながら笑い合う二人……
「あっ悠希~ハルちゃんの二の腕触ってみ? 超ウケるよ?」
「なんだそれ……どれ……」
……と寸前の所で僕はあることを思い出し、恥ずかしくなって手を引っ込めた。
「やっぱ、いいよ……」
「???」
「あ~っ悠希もしかして変な想像してるんじゃないの?」
「は? バッカそんなんじゃね~よ!!」
「ハルちゃんこいつさ~なんで照れてるかっていうと……」
「それ以上言うな"~」
「何? 何?」
「な、何でもな~い……」
「……よく分からないけど、私ふくらはぎもダルんダルんなんだよね……鍛えなきゃ!」
彼女は徐にソファーに座って、ふくらはぎを自分で下から叩きタプタプさせていた。
思わずある芸能人のアゴが浮かんで触りたくなったが……自主規制した。
「そ、それよりもうすぐケアマネの合格発表日じゃね? ま、絶対落ちてると思うけど」
「なんでそういうこと言うかな~」
それから半年程経ったある日……
無事にケアマネの試験に合格し、僕のいる訪問介護と合同のケアマネ事務所に異動して慣れてきた6月のこと……
事務所で書類を書いている彼女とすれ違った時、どこでケガをしたのか手から血が出ているのを発見したので仕方なく絆創膏を投げてみた。
「あ、ありがとね絆創膏……あと、この間の雨の日も……」
「ああ、ヒザ擦りむいたやつな……ほんとドジだな」
「あ、あれは……どしゃ降りの日なんだから自転車じゃなくて悠希くんが車で送ってくれればよかったのに~駅前の駐輪場近くで滑って転んで大変だったんだから」
「色々たるんでるからだろ」
「たるんでません! フフ~ン、私さ~自転車に乗るようになってから筋肉ついたんだよ? ホレ触ってみ?」
「はい?」
彼女は得意気な顔で僕にとんでもないことを言ってきた。
「だから~前はふくらはぎがダルんダルんだったけど、坂道とか長距離走ってるうちに鍛えられたの!」
「はあ……」
「嘘だと思ってるでしょ~だから触ってみって」
「いいです」
「いいから触ってみってホントだから」
「やだよ」
「ホレホレすごいんだよ~」
……と近づいてくる得意気な顔がなんだかムカつく。
照れもせず、ただ純粋に筋肉自慢をしようとしてくる彼女の思いとは裏腹に、僕の心と頭は動揺しすぎてショートしていた。
~~~~~~~~~~
なんなんだ?
足に触れだと?
なんてはしたない……
やめろ……やめてくれ
足に……足に触れだなんて……
僕は足フェチなんだ
昔、入浴介助のエプロンから覗く足を見てて同僚にからかわれたことがあるが……
自他共に認める足フェチなんだぞ?
そんな僕に足を触れだなんてどういうつもりだ……
あ~こういう時どう触れば気持ち悪くないんだ?
一気に掴むのか?
鶏肉を調理する時のように掴めばいいのか?
一体……一体……どうすればいいんだ~~~~
~~~~~~~~~~
頭を抱え、脳内会議真っ最中の僕のすぐ近くまできて「ねえってば」と足を指差す彼女の行動にテンパッた僕は……
目をつぶり「うぁ~」という変な叫び声を上げながら、彼女のふくらはぎを思い切り人差し指で突いた。
「痛った~なんで刺すの? もっと優しくしてよ」
「……ごめん……」
「あ……そう言えば悠希くんて足フェチだったんだっけ?」
無自覚な発言程、怖いものはない……
ある日、デイサービスに行くと……
春香と明美が昼休憩中に映画話で盛り上がっていた。
「うっそ~ハルちゃんすごいじゃ~ん」
「でしょ? あ、悠希くん! 聞いてよ~昨日映画の日だったから、中学の時から好きな俳優さんが主演の映画を見に行ったら……」
「出てきた場所が新婚旅行で行った場所と同じで、調べてみたら撮影時期も同じだったの! すごくない? 絶対すれ違ってたよ~」
「なんだそれ~何て映画?」
「50回目のプロポーズ」
「あ、あれか、見たか……てかどうでもいいわ~」
「そういえば、前に悠希くんと一緒に見に行った『手紙』に出てた俳優さんもヒロインの弟役で出てたよ? ほら、歌手もやってて若手で人気の……」
「『手紙』? なんて映画見たっけ? あ~見たような気がするけど誰と見たか忘れた」
「もう、またそんなこと言って……」
「てか好きな俳優なんていたんだ……確かに演技派のカメレオン俳優で有名だよな」
「そうそう私、中学の頃から好きだったんだけど旦那にちょっと似てるんだよね♪」
「は? 全然似てないし……メガネ変えた方がいんじゃね?」
「も~そうやってすぐメガネをバカにして~メガネ…………で思い出したけど、この間、道歩いてたら『好きなタイプのメガネだったんで』って声かけられたよ」
「何それ~メガネフェチの人だったんじゃない?」
「まあメガネが本体かって位、似合うしな」
「またそれ~昔からよく言われてバカにされるんだよね」
「コンタクトにしたら?」
「しようとしたけどダメだったの……だからメガネの人が近くにいると安心するんだよね(バカにされにくくなるから)」
「な、なんじゃそりゃっ……それって」
「そういえば『手紙』に出てきた俳優さんも悠希くんに似てるよね~特に声が」
「お前の目と耳は節穴か?」
「え~似てるよ~この間、歌番組で歌ってるのを見たけど歌声も似てたよ?」
「あ~あの歌詞間違えて2番を2回歌ってたやつな」
「そう、間違えても最後まで一生懸命に歌う姿になんだか泣けてきて……歌は技術じゃなくて心なんだと思ったよ」
「それは暗に下手と言……」
「違うよ! 確かにその後デュエット曲を歌ってた俳優さんの方が上手いし声もカッコよかったけど、涙までは出なかったから……きっと人の心に届く不思議な力がある声なんだよ」
「やけに力説するな」
「実は私…………声フェチなんだ」
「声フェチ? なにそれ、ウケるわ~声優オタクかよ」
「オタクという程声優さんにはそんな詳しくないけど……声聞いただけで何のキャラクターと同じかは、すぐに分かるよっ」
「そんな自慢気に言われても……」
「中学から好きな俳優さんも声が好きで……きっかけは私と同じあだ名の主人公が出てくるアニメ映画で王子役の声優をやってたからで……あと二の腕も好きかも……私が脂肪だらけだから憧れるっていうか」
「アハハほんとだ~ハルちゃんの二の腕ダルんダルんでウケる~」
明美が春香の二の腕をつかんでプニプニしていた。
「明美ちゃんは筋肉あってカッコいいな~」
お互いの二の腕の肉をつまみながら笑い合う二人……
「あっ悠希~ハルちゃんの二の腕触ってみ? 超ウケるよ?」
「なんだそれ……どれ……」
……と寸前の所で僕はあることを思い出し、恥ずかしくなって手を引っ込めた。
「やっぱ、いいよ……」
「???」
「あ~っ悠希もしかして変な想像してるんじゃないの?」
「は? バッカそんなんじゃね~よ!!」
「ハルちゃんこいつさ~なんで照れてるかっていうと……」
「それ以上言うな"~」
「何? 何?」
「な、何でもな~い……」
「……よく分からないけど、私ふくらはぎもダルんダルんなんだよね……鍛えなきゃ!」
彼女は徐にソファーに座って、ふくらはぎを自分で下から叩きタプタプさせていた。
思わずある芸能人のアゴが浮かんで触りたくなったが……自主規制した。
「そ、それよりもうすぐケアマネの合格発表日じゃね? ま、絶対落ちてると思うけど」
「なんでそういうこと言うかな~」
それから半年程経ったある日……
無事にケアマネの試験に合格し、僕のいる訪問介護と合同のケアマネ事務所に異動して慣れてきた6月のこと……
事務所で書類を書いている彼女とすれ違った時、どこでケガをしたのか手から血が出ているのを発見したので仕方なく絆創膏を投げてみた。
「あ、ありがとね絆創膏……あと、この間の雨の日も……」
「ああ、ヒザ擦りむいたやつな……ほんとドジだな」
「あ、あれは……どしゃ降りの日なんだから自転車じゃなくて悠希くんが車で送ってくれればよかったのに~駅前の駐輪場近くで滑って転んで大変だったんだから」
「色々たるんでるからだろ」
「たるんでません! フフ~ン、私さ~自転車に乗るようになってから筋肉ついたんだよ? ホレ触ってみ?」
「はい?」
彼女は得意気な顔で僕にとんでもないことを言ってきた。
「だから~前はふくらはぎがダルんダルんだったけど、坂道とか長距離走ってるうちに鍛えられたの!」
「はあ……」
「嘘だと思ってるでしょ~だから触ってみって」
「いいです」
「いいから触ってみってホントだから」
「やだよ」
「ホレホレすごいんだよ~」
……と近づいてくる得意気な顔がなんだかムカつく。
照れもせず、ただ純粋に筋肉自慢をしようとしてくる彼女の思いとは裏腹に、僕の心と頭は動揺しすぎてショートしていた。
~~~~~~~~~~
なんなんだ?
足に触れだと?
なんてはしたない……
やめろ……やめてくれ
足に……足に触れだなんて……
僕は足フェチなんだ
昔、入浴介助のエプロンから覗く足を見てて同僚にからかわれたことがあるが……
自他共に認める足フェチなんだぞ?
そんな僕に足を触れだなんてどういうつもりだ……
あ~こういう時どう触れば気持ち悪くないんだ?
一気に掴むのか?
鶏肉を調理する時のように掴めばいいのか?
一体……一体……どうすればいいんだ~~~~
~~~~~~~~~~
頭を抱え、脳内会議真っ最中の僕のすぐ近くまできて「ねえってば」と足を指差す彼女の行動にテンパッた僕は……
目をつぶり「うぁ~」という変な叫び声を上げながら、彼女のふくらはぎを思い切り人差し指で突いた。
「痛った~なんで刺すの? もっと優しくしてよ」
「……ごめん……」
「あ……そう言えば悠希くんて足フェチだったんだっけ?」
無自覚な発言程、怖いものはない……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
【完結】指先が触れる距離
山田森湖
恋愛
オフィスの隣の席に座る彼女、田中美咲。
必要最低限の会話しか交わさない同僚――そのはずなのに、いつしか彼女の小さな仕草や変化に心を奪われていく。
「おはようございます」の一言、資料を受け渡すときの指先の触れ合い、ふと香るシャンプーの匂い……。
手を伸ばせば届く距離なのに、簡単には踏み込めない関係。
近いようで遠い「隣の席」から始まる、ささやかで切ないオフィスラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる