【源次物語】最後の特攻隊員〜未来を生きる君へ〜

OURSKY

文字の大きさ
27 / 80

〈海軍入隊〜希望の空へ〜〉後編

しおりを挟む
 平井くんは手先が器用で、訓練の空き時間に父親に習ったという手品を披露してくれた。
 そんな風に息抜きできる時間は限られている程、横須賀海兵団での訓練は厳しくて……

「映画で観た時は憧れとったけど、ハンモックで寝るのはきついのう……よう寝られへんわ」

「僕は呼び方を『貴様』と『俺』って言うのが慣れそうにないよ」

 海兵団の訓練は、敬礼の練習から始まり水泳や相撲の教練、伝令訓練や辻堂演習、座学は数学・物理などで学術試験もあった。
 陸戦訓練の駆け足では猛烈なスピードを要求され、通信教育では手旗やモールス信号などを短期間で覚えねばならなかった。

 海軍は軍隊内で英語も使われていて知的な雰囲気があったが、陸軍よりはマシだと聞いていたのに厳しい制裁があり……

 教班長の理不尽な行いに口ごたえをするような事があれば「修正する」と殴られ、口の中が切れて食事をするのも一苦労だった。

「馬鹿野郎! 貴様それでも軍人か! 軍人魂を教えてやるから部屋に来い!」

 教班長は気に入らない事があると「修正だ」と言って呼び出しを行い……
 通称バッターと呼ばれた野球のバットの親玉の様なゴツい軍人精神注入棒で尻を叩かれた。
 一発で吹っとぶ位、歯が抜けそうになる位痛いのに何発も何十発も叩かれた。

 海軍は、もし戦艦などに乗った場合に備えてか、閉鎖的な環境で感染症などが流行らないよう予防するため衛生管理にも厳しくて、雑巾がけなどの掃除が遅いとすぐバッターがあり……
 叩かれると一週間位内出血のアザが残るが、治らないうちにまた叩かれて座るのもしゃがむのも痛いので、ヒョコヒョコと変な歩き方で厠から出てくる者が多かった。

 カッター漕といわれる短漕ぎ訓練では、長いボートを12本のオールで集団で漕ぎ続けて競争させられるので、手にマメができるわ、只でさえ痛いおしりが真っ赤にこすれるわで更に辛かった。

 飛行科の採用試験では筆記と面接の試験が2日間かけて行われ、不合格となったものは二等水兵として残ることになるからヒロも僕も必死で勉強した。

 身体適性検査もあって、その場でぐるぐる回された後に瞬時に止まれるかどうか……回された直後でも方向感覚が麻痺していないかなど、飛行機乗りとして必要な三半器管の丈夫さが確かめられた。

 平井くんも航空隊志望で、努力の甲斐あってか僕達三人は無事合格した。

「ふむ、貴様は誕生日が11月15日なのか……土浦航空隊の開隊も11月15日だから、お前達は土浦の所属にしてやる」

「あ、ありがとうございます!」

 そうして不思議な偶然の縁で所属が決まった。

「やった~源次の誕生日さまさまや~土浦言うたら『決戦のあの空へ』の舞台やで! 映画の中に入り込める気分やわ」

 僕達の所属は、映画に撮影協力をしていた土浦になった。
 1944年2月に僕達は土浦海軍航空隊に入隊することになり、ヒロや平井くんとまた一緒に過ごせる事だけは純粋に嬉しかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...