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〈新しい空へ〉中編
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最寄りの駅から出発する電車に乗り込む前……
「いや~幸せな時間はあっという間に過ぎるっちゅうんわ、ほんまやったわ~えろう世話になって、源次ほんまおおきにな! それから純子、俺が必ず静子おばさんの敵とったるからな!」
「そんなの……いいよ……」
「こちらこそ色々手伝ってもらってありがとね……僕も後から行くから、また向こうでな」
「弘兄ちゃん、行かないで……」
「浩も元気でな……あと純子、コレ……なんと初めて書いたラブレターや~誕生日まで絶対開けるんやないで~ほな、行ってくる!」
「…………」
ヒロの乗った電車は出発しようとしていた。
「純子ちゃん? 純子ちゃん! ヒロに何も言わなくていいの?」
「ほなな~」
ガタンガタンガタンガタン……
ヒロが完全に去ってしまった後に振り返ると、純子ちゃんはポロポロ泣いていた。
「どうしよう源次さん……光ちゃんに何も言えなかった……本当は言いたい事、沢山あったのに……もっと行かないでって言えばよかったのに……全然伝えられなかった……」
「大丈夫! 僕が合流したら上手い事やって絶対あいつを連れて帰ってくるから!」
やっぱり純子ちゃんはヒロの事が好きなのだろう……冗談で誤魔化していたがヒロの手紙には多分プロポーズの言葉が書いてあるのでは……
こんな両思いの二人を戦争のせいで引き離してはいけない、と強く思った。
「ありがとう……私、源次さんといるとなんか安心する……なんていうかこう、心の中があったかくなるの……なぜだか分からないけれど私…………ううん、何でもない」
浩くんとお風呂に入っている時、ヒロが先に行った寂しさと自分の不甲斐なさに落ち込み、「こんな僕だけ残ってごめん」と溜息をついた。
「源兄ちゃんてさ、本当にニブイよな……あと兄ちゃん達ってさ、お揃い多いよね? お揃いのペン、お揃いのウサギ、お揃いのマフラー、それから背中も……」
「背中?」
「弘兄ちゃんは右に火傷の跡があって、源兄ちゃんは左に火傷の跡がある……僕にはそれが翼に見えるよ? どんなピンチも助けてくれるヒーローの翼……二人合わせると大きな翼になるでしょ? だから僕にとっては、二人ともヒーローだよ?」
僕は浩くんの言葉に感動して……お風呂の中で少し泣いた。
4月1日になり、小学校に通い始めた浩くんは……
「源兄ちゃんありがとう! 源兄ちゃんに貰った誕生日祝いの長門のメンコのおかげで友達が沢山できたんだ! 女の子の友達もできたよ? 安子ちゃんていうの!」
4月2日にはもう、「友達と約束をしているから」と下校後に学校に遊びに行った。
夕方、純子ちゃんと一緒に迎えに行った帰り道……
「今日ね、安子ちゃんと約束したんだ! 校庭の桜、寒いからまだ咲いてないけど咲いたらお花見しようねって」
「よかったね! 楽しみだね」
「姉ちゃ~ん、『夕焼け小焼け』歌って~姉ちゃんの歌、聞きたいんだ」
「も~しょうがないな~」
僕達は純子ちゃんの『夕焼け小焼け』を聞きながら、浩くんを真ん中に三人で手を繋いで家に帰った。
三人で見上げた夕日は、今まで見た中で一番キレイで……
本当に、本当にキレイな夕焼けだった。
その日の夜、浩くんが布団に入りながら言った。
「今日も寒いね……桜の木、大丈夫かな~古い木みたいだけど枯れちゃわないかな?」
「そっか~あの桜、まだ残ってるのか~懐かしいな……枯れないで早く咲くようにって昔、布を巻いたな」
「布を巻くと枯れないの? じゃあ、巻きに行こうよ!」
「今日はもう遅いから、明日学校が始まる前にな……おやすみ」
4月3日の早朝、浩くんと出掛けようとしたら純子ちゃんも起きたので三人で小学校に行った。
「よし! これで大丈夫!」
「やった~これで桜が咲くね! わ~い、わ~い!」
校庭の向こうで純子ちゃんと嬉しそうに跳ね回る浩くん……
その時だった。
ブーーーーーーーーン
「なんだろ? こんな朝早く……」
「この音は……姉ちゃん、危ない!!」
ヒューーーードゥオーーーン
校庭に爆弾が落とされ、すり鉢状の大きい穴が開いていた……
こんな田舎に爆弾が落ちるなんて夢にも思わなかった。
「純子ちゃんは? 無事か……浩くん、大丈…………両足が……ない……」
純子ちゃんを庇った浩くんは、足に爆撃を受けて両下肢がなく……太ももから大量に出血していた。
幸い意識はあるようで、急いでカバンの中の紫のマフラーで止血した。
「線路の向こうに陸軍病院があるんだ! 急いで行こう!」
「いや~幸せな時間はあっという間に過ぎるっちゅうんわ、ほんまやったわ~えろう世話になって、源次ほんまおおきにな! それから純子、俺が必ず静子おばさんの敵とったるからな!」
「そんなの……いいよ……」
「こちらこそ色々手伝ってもらってありがとね……僕も後から行くから、また向こうでな」
「弘兄ちゃん、行かないで……」
「浩も元気でな……あと純子、コレ……なんと初めて書いたラブレターや~誕生日まで絶対開けるんやないで~ほな、行ってくる!」
「…………」
ヒロの乗った電車は出発しようとしていた。
「純子ちゃん? 純子ちゃん! ヒロに何も言わなくていいの?」
「ほなな~」
ガタンガタンガタンガタン……
ヒロが完全に去ってしまった後に振り返ると、純子ちゃんはポロポロ泣いていた。
「どうしよう源次さん……光ちゃんに何も言えなかった……本当は言いたい事、沢山あったのに……もっと行かないでって言えばよかったのに……全然伝えられなかった……」
「大丈夫! 僕が合流したら上手い事やって絶対あいつを連れて帰ってくるから!」
やっぱり純子ちゃんはヒロの事が好きなのだろう……冗談で誤魔化していたがヒロの手紙には多分プロポーズの言葉が書いてあるのでは……
こんな両思いの二人を戦争のせいで引き離してはいけない、と強く思った。
「ありがとう……私、源次さんといるとなんか安心する……なんていうかこう、心の中があったかくなるの……なぜだか分からないけれど私…………ううん、何でもない」
浩くんとお風呂に入っている時、ヒロが先に行った寂しさと自分の不甲斐なさに落ち込み、「こんな僕だけ残ってごめん」と溜息をついた。
「源兄ちゃんてさ、本当にニブイよな……あと兄ちゃん達ってさ、お揃い多いよね? お揃いのペン、お揃いのウサギ、お揃いのマフラー、それから背中も……」
「背中?」
「弘兄ちゃんは右に火傷の跡があって、源兄ちゃんは左に火傷の跡がある……僕にはそれが翼に見えるよ? どんなピンチも助けてくれるヒーローの翼……二人合わせると大きな翼になるでしょ? だから僕にとっては、二人ともヒーローだよ?」
僕は浩くんの言葉に感動して……お風呂の中で少し泣いた。
4月1日になり、小学校に通い始めた浩くんは……
「源兄ちゃんありがとう! 源兄ちゃんに貰った誕生日祝いの長門のメンコのおかげで友達が沢山できたんだ! 女の子の友達もできたよ? 安子ちゃんていうの!」
4月2日にはもう、「友達と約束をしているから」と下校後に学校に遊びに行った。
夕方、純子ちゃんと一緒に迎えに行った帰り道……
「今日ね、安子ちゃんと約束したんだ! 校庭の桜、寒いからまだ咲いてないけど咲いたらお花見しようねって」
「よかったね! 楽しみだね」
「姉ちゃ~ん、『夕焼け小焼け』歌って~姉ちゃんの歌、聞きたいんだ」
「も~しょうがないな~」
僕達は純子ちゃんの『夕焼け小焼け』を聞きながら、浩くんを真ん中に三人で手を繋いで家に帰った。
三人で見上げた夕日は、今まで見た中で一番キレイで……
本当に、本当にキレイな夕焼けだった。
その日の夜、浩くんが布団に入りながら言った。
「今日も寒いね……桜の木、大丈夫かな~古い木みたいだけど枯れちゃわないかな?」
「そっか~あの桜、まだ残ってるのか~懐かしいな……枯れないで早く咲くようにって昔、布を巻いたな」
「布を巻くと枯れないの? じゃあ、巻きに行こうよ!」
「今日はもう遅いから、明日学校が始まる前にな……おやすみ」
4月3日の早朝、浩くんと出掛けようとしたら純子ちゃんも起きたので三人で小学校に行った。
「よし! これで大丈夫!」
「やった~これで桜が咲くね! わ~い、わ~い!」
校庭の向こうで純子ちゃんと嬉しそうに跳ね回る浩くん……
その時だった。
ブーーーーーーーーン
「なんだろ? こんな朝早く……」
「この音は……姉ちゃん、危ない!!」
ヒューーーードゥオーーーン
校庭に爆弾が落とされ、すり鉢状の大きい穴が開いていた……
こんな田舎に爆弾が落ちるなんて夢にも思わなかった。
「純子ちゃんは? 無事か……浩くん、大丈…………両足が……ない……」
純子ちゃんを庇った浩くんは、足に爆撃を受けて両下肢がなく……太ももから大量に出血していた。
幸い意識はあるようで、急いでカバンの中の紫のマフラーで止血した。
「線路の向こうに陸軍病院があるんだ! 急いで行こう!」
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