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5章 見つけた
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「ここにいるのか、エアリー……」
一筋の光に導かれ、馬を走らせ続けたロイスは息を切らしていた。デニスミール王国領の小さな集落に辿り着いた。民家から出て来た村人が驚きの声を上げる。
「夜遅くに馬の足音が聞こえると思ったら、ロイス王子ではありませんか! いったいどうされました」
村人が尋ねる。
「皆が寝静まった頃に騒がしい音を立ててすまない。今日、この村にやって来た旅人などはいるかな」
ロイスは個人名を出さずに言った。
「そういえば、宿屋にいきなり泊まりに来た二人組がいましたな。この村の宿に泊まるのは常連客ばかりだから珍しいなと思っていました」
村人は素直に答えた。
「宿に案内してくれ」
ロイスは馬から降り、手綱を適当な木に括りつけた。
「案内の必要はありませんよ」
木陰から声がした。声のしたほうに目をやると、きちんと装備を整えた男が近付いてきた。
「貴様は……レイとかいう若造か」
ロイスは剣を鞘から引き抜いた。
「おやおや、俺も有名になったもんだ。対して歳の変わらないロイス王子に名前を憶えて頂けているなんて」
レイはおどけた様子で言う。
「ふん。どうやら命が惜しくないようだな。用が済んだらさっさと引導を渡してやる。さあ答えろ。エアリーはどこにいる!」
ロイスは剣を突き出して叫んだ。
「ひいぃ~」
このままでは巻き込まれると考えたのか、村人は一目散に逃げていった。
「いくら自分の領地だからって、街中で剣を振り回すのは止めましょうや」
レイは武器を構えず飄々とした態度を崩さない。
「仕方がない。多少の怪我は覚悟してもらうぞ」
ロイスは剣を振り上げた。
「そこまでにしてください。エアリーはここにいます」
ロイスは手を止めた。澄んだ声に体が包み込まれた。
「ちょっと、なんで逃げないですか! せっかく足止めしてたのに」
レイがエアリーに向かって講義する。エアリーは凛とした姿でこちらに歩いてきた。
「レイ、あなたこそなにをしているのです。このまま続けていたら死んでいたかもしれないのに」
「ロイス王子もです。こんなところで戦わないでください。レイの無惨な姿は見たくありません」
「俺は負ける前提ですか」
レイはふてくされている。
「力の差を冷静に受け止めることも大切だと思いますよ」
「はーい……」
消え入るような声でレイは返事をした。
「ひとまず無事で良かった。エアリーの身になにかあったらと気が気ではなかった」
「ありがとうございます。心配していただけるのは嬉しいのですが、どうやって私の居場所が分かったのですか?」
「ああ。それはな、この指輪のおかげなんだ」
ロイスは指輪の嵌まっている手を差し出した。指輪から光が出ている。
「指輪……」
エアリーが呟く。
「そう、君が城に置いていった指輪と対になるものだ。指輪が突然光り出してね、ある方向を指し示すから、その方向へひたすら馬を走らせた。そうして君を見つけた」
ロイスはエアリーに微笑みかけた。しかしエアリーの表情は冴えない。
「実は、私が城を抜け出したのは指輪に大きな理由があります」
エアリーはそう言って、城で受け取った手紙をロイスに見せた。ロイスの表情がみるみるうちに変わっていく。
「なんだこれは。明らかに脅迫じゃないか。しかも指輪が呪われているかのような……」
「そうなのです。私は怖くなって指輪を外し城を出ました。とにかく、指輪に何やら力が備わっていることは確かなようです」
エアリーは重々しく言う。
「しかし、そんな話は聞いた事が無いぞ。まるでおとぎ話だ」
ロイスは固まった。先程同じような話をした覚えがある。
「まさか……」
「どうされました?」
エアリーが尋ねる。
「犯人が分かったかもしれない。城に戻ろう」
ロイスは馬の所へ行き気に括りつけた手綱をほどいた。
「ロイス王子、もう夜です。朝になってから出発したほうが良い。夜道は危険です」
黙って話を聞いていたレイが口を挟んだ。
「貴様に指図されるのは気に入らないが一理あるな。では、宿に行こう」
「宿は満室だそうですよ」
「王子の私が直々に頼んでみる。一部屋くらい融通を利かせてくれるだろう」
「うわー、貴族だー」
「エアリー、宿へ案内してくれ」
レイの軽口は無視してロイスは言った。
「分かりました、こちらです」
「あ、待ってくださいよ~」
三人は雑談を交わしながら宿へと向かった。
一筋の光に導かれ、馬を走らせ続けたロイスは息を切らしていた。デニスミール王国領の小さな集落に辿り着いた。民家から出て来た村人が驚きの声を上げる。
「夜遅くに馬の足音が聞こえると思ったら、ロイス王子ではありませんか! いったいどうされました」
村人が尋ねる。
「皆が寝静まった頃に騒がしい音を立ててすまない。今日、この村にやって来た旅人などはいるかな」
ロイスは個人名を出さずに言った。
「そういえば、宿屋にいきなり泊まりに来た二人組がいましたな。この村の宿に泊まるのは常連客ばかりだから珍しいなと思っていました」
村人は素直に答えた。
「宿に案内してくれ」
ロイスは馬から降り、手綱を適当な木に括りつけた。
「案内の必要はありませんよ」
木陰から声がした。声のしたほうに目をやると、きちんと装備を整えた男が近付いてきた。
「貴様は……レイとかいう若造か」
ロイスは剣を鞘から引き抜いた。
「おやおや、俺も有名になったもんだ。対して歳の変わらないロイス王子に名前を憶えて頂けているなんて」
レイはおどけた様子で言う。
「ふん。どうやら命が惜しくないようだな。用が済んだらさっさと引導を渡してやる。さあ答えろ。エアリーはどこにいる!」
ロイスは剣を突き出して叫んだ。
「ひいぃ~」
このままでは巻き込まれると考えたのか、村人は一目散に逃げていった。
「いくら自分の領地だからって、街中で剣を振り回すのは止めましょうや」
レイは武器を構えず飄々とした態度を崩さない。
「仕方がない。多少の怪我は覚悟してもらうぞ」
ロイスは剣を振り上げた。
「そこまでにしてください。エアリーはここにいます」
ロイスは手を止めた。澄んだ声に体が包み込まれた。
「ちょっと、なんで逃げないですか! せっかく足止めしてたのに」
レイがエアリーに向かって講義する。エアリーは凛とした姿でこちらに歩いてきた。
「レイ、あなたこそなにをしているのです。このまま続けていたら死んでいたかもしれないのに」
「ロイス王子もです。こんなところで戦わないでください。レイの無惨な姿は見たくありません」
「俺は負ける前提ですか」
レイはふてくされている。
「力の差を冷静に受け止めることも大切だと思いますよ」
「はーい……」
消え入るような声でレイは返事をした。
「ひとまず無事で良かった。エアリーの身になにかあったらと気が気ではなかった」
「ありがとうございます。心配していただけるのは嬉しいのですが、どうやって私の居場所が分かったのですか?」
「ああ。それはな、この指輪のおかげなんだ」
ロイスは指輪の嵌まっている手を差し出した。指輪から光が出ている。
「指輪……」
エアリーが呟く。
「そう、君が城に置いていった指輪と対になるものだ。指輪が突然光り出してね、ある方向を指し示すから、その方向へひたすら馬を走らせた。そうして君を見つけた」
ロイスはエアリーに微笑みかけた。しかしエアリーの表情は冴えない。
「実は、私が城を抜け出したのは指輪に大きな理由があります」
エアリーはそう言って、城で受け取った手紙をロイスに見せた。ロイスの表情がみるみるうちに変わっていく。
「なんだこれは。明らかに脅迫じゃないか。しかも指輪が呪われているかのような……」
「そうなのです。私は怖くなって指輪を外し城を出ました。とにかく、指輪に何やら力が備わっていることは確かなようです」
エアリーは重々しく言う。
「しかし、そんな話は聞いた事が無いぞ。まるでおとぎ話だ」
ロイスは固まった。先程同じような話をした覚えがある。
「まさか……」
「どうされました?」
エアリーが尋ねる。
「犯人が分かったかもしれない。城に戻ろう」
ロイスは馬の所へ行き気に括りつけた手綱をほどいた。
「ロイス王子、もう夜です。朝になってから出発したほうが良い。夜道は危険です」
黙って話を聞いていたレイが口を挟んだ。
「貴様に指図されるのは気に入らないが一理あるな。では、宿に行こう」
「宿は満室だそうですよ」
「王子の私が直々に頼んでみる。一部屋くらい融通を利かせてくれるだろう」
「うわー、貴族だー」
「エアリー、宿へ案内してくれ」
レイの軽口は無視してロイスは言った。
「分かりました、こちらです」
「あ、待ってくださいよ~」
三人は雑談を交わしながら宿へと向かった。
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