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番外編~ある幸せな休日~

第2話(3)

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 群司にうながされて膝の上に跨がり、昂ぶる感情のままに口づける。どちらからともなく舌を絡ませ、夢中で貪るうちに、自分の下肢に熱いたかぶりを押しあてられて如月は甘く喘いだ。
 愛する恋人に、強く求められていることが嬉しくてたまらなかった。大好きで、どうしようもないほど愛しくて、自分をコントロールできないくらい激しい欲望が湧き上がってくる。

 如月は床の上に滑り降りると、恋人のジーンズの前をくつろげ、すでに臨戦態勢になっている屹立を口に含んだ。途端に濃い雄の香りが鼻腔に充満する。それすらも嬉しくて、一心不乱に舌と口唇くちびるを動かした。

「待って、待って。積極的なのは嬉しいけど、俺にも琉生さん、可愛がらせて?」

 笑いながら群司に制止され、ふたたび膝の上に引き上げられる。セーターを脱がされ、シャツやインナーも脱がされて、あっという間にズボンと下着もぎ取られた。そのままソファーに寝そべった群司の顔の上に跨がるよう指示された。
 いつもならば躊躇するその行為も、いまは一刻も早く繋がりたい欲求がまさってすんなり受け容れる。自分もまた、群司に跨がった状態で口淫を再開するが、掴まれた腰を引き寄せられ、会陰えいんからすぼまりに向かって舐め上げられると、えもいわれぬ快感が突き抜けて身をふるわせた。

「あっ……や……っ、群司っ」

 逃げを打つ腰をしっかりと押さえこまれ、臀部や太ももをやわらかく口唇でまれて如月は身悶える。両手で割り開かれ、露わになった秘めたる場所を舌先で刺激されると、羞恥以上の期待が膨らんで全身が戦慄わなないた。
 如月の泣きどころを知り尽くしている恋人の舌は、ほどなく後孔の内側へと侵入を果たして蹂躙じゅうりんを開始し、如月を快楽の沼へと落としこんだ。自分も恋人に奉仕したいと思うのに、与えられる悦楽が強すぎて、思うように口に含むことができなかった。

「やっ、そこダメッ、ぐんじっ……、いやっ……イヤッ!」

 如月のき声に煽られたように、内壁を刺激する舌の動きが激しさを増す。群司と会うときには必ず、事前に洗浄まで済ませていることを知っているので、いっさいの躊躇もなく舐め尽くされた。

「やぁあ……っ!」
「ほら、琉生さんも頑張って。俺にもしてくれるんでしょ?」

 発破をかけられて、如月はグズグズになりながらも目の前の剛直を懸命にくわえなおした。

「……っふ、…んっ……んっ……、んふっ…………っん……」

 極度の興奮状態にあるため、群司の吐息が肌にかかるだけでも感じてしまう。それでも、自分がどれほど群司を求めているのかを示すため、自分にできる精一杯で舌と口唇を動かした。

 かつて発散目的で関係を持った行きずりの相手に、フェラチオを強要されることはそれなりの頻度であった。他人の陰茎を口に含む行為は、如月にとって苦痛以外のなにものでもなかったが、群司と付き合うようになって、その認識は大きく変わった。
 群司からそれを求められたことは一度もない。それでも好きな相手に気持ちよくなってほしくて、如月は自分から自然に行為を行っていた。群司から与えられる愛情によって、自分がどれほど幸せで、満たされているのかを知ってもらいたかった。
 好きな気持ちが溢れて止まらない。それは、人生ではじめて味わう感情だった。
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