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第2章
俺は死んじまっただ?(9)
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「神族に生まれついた者は皆、同族間での婚姻しか認められておらぬゆえ」
「……え?」
「どれほど惹かれ合おうと、異種族と結ばれることは禁じられている。決して許されぬことなのだ。それができるのは、盟主のみ」
「え、それってやっぱ、世界の秩序が乱れるとか、均衡が保てないみたいな感じの理由で?」
「そうではない。もっと根源的な理由だ」
意外な事実を知って驚く俺に、銀髪美人は重々しく理由を明かした。
「光と闇は、本来、相反する性質を持ち合わせている。互いのエネルギーが交われば、それぞれの持つ力で相手の力を打ち消してしまう。それは、相手の寿命を奪うに等しい行為なのだ」
「いや、けど、それだったらあんたらは……」
「それが、我らが次期盟主として選ばれた最大の理由でもある」
銀髪美人は、どこか誇らしげだった。
「人界の者らが『神力』と呼ぶ我らの力は、生命のエネルギーそのものでもある。人界の者らに比べて我らが長命なのは、その力に拠るところが大きい。なかでも、とりわけ強大な力を持って生まれる者が定期的に現れる。眷属によって選ばれた盟主がその座に就く期間は、およそ千年。その在位が終盤に差しかかるタイミングで生まれるのが、次代盟主に相応しい力を備えた子供ということになる」
「それが、今回の場合は、あんたとこの躰の持ち主だった、と?」
そうだ、と艶やかな銀糸の髪が大きく揺れた。
「光と闇、それぞれの眷属の中で、盟主の座に即ける者だけが異種族と婚姻を結ぶことができる。それは、無理に課せられた使命ではなく、世界の調和を保つための摂理として、生まれながらに付与された特別な祝福なのだ」
普通の天界人であれば生命に関わることを、一族を代表して一手に担う存在。銀髪美人は、そのことをむしろ特権であるようにも感じているふしがあった。だが、聞かされているほうからすれば、どうにも釈然としない。
「へえ。じゃ、その盟主に相応しい力があることで、あんたとこの躰の持ち主は、異種族の相手をパートナーにしても生命の危険はないわけだ」
「盟主の場合、むしろ互いのエネルギーを取り交わすことで、より自身の力を強めることができる」
「あ~、それで在位期間も千年とかなんだ。天界人の平均寿命、軽く超えてるもんな」
「神力は我らの生命エネルギーそのものでもあると言った。その力が強い者ほど長命になる」
「なるほどね。じゃあ、本来は命取りになる異種族間の婚姻も、あんたらの場合はむしろ好都合。互いにとってウィン・ウィンの関係になると」
「ウィんうぃ? ……最後の部分がよくわからなかったが、そなた、さっきからなにやら、ひっかかる物言いをするな」
銀髪美人の声がわずかに尖った。やりとりしていくうちに、つい嫌味っぽい言いかたになったことに気づいたのだろう。
自分でも、どうしてなのかはわからない。だが、話を聞きながらずっと、自分を犠牲にする生きかたをあたりまえのように受け容れている様子が気に入らなかった。与えられた役割は役割として、個人の尊厳を蔑ろにするような生きかたには共感できなかった。
そんなふうに縛られた人生が幸せなはずもない。もっと自由に、羽ばたかせてやれたらどんなにいいだろう。
おまえはもっと、解き放たれた場所で輝くべき存在なんだ。俺のせいで、おまえの人生をだいなしにしてしまうわけにはいかない。いまをやり過ごしさえすれば、この選択がベストだったと思う日が来るだろう。足枷は取り除くべきだ。俺が重荷になるくらいなら、いっそ……。
「我は、自分のためにエルディラントを利用しようと思ったことなど一度もない!」
強い口調で言われて、我に返った。
あ、俺? いま……。
記憶の奥深い場所からこみあげかけた感情が、一瞬にして消え去った。
「……え?」
「どれほど惹かれ合おうと、異種族と結ばれることは禁じられている。決して許されぬことなのだ。それができるのは、盟主のみ」
「え、それってやっぱ、世界の秩序が乱れるとか、均衡が保てないみたいな感じの理由で?」
「そうではない。もっと根源的な理由だ」
意外な事実を知って驚く俺に、銀髪美人は重々しく理由を明かした。
「光と闇は、本来、相反する性質を持ち合わせている。互いのエネルギーが交われば、それぞれの持つ力で相手の力を打ち消してしまう。それは、相手の寿命を奪うに等しい行為なのだ」
「いや、けど、それだったらあんたらは……」
「それが、我らが次期盟主として選ばれた最大の理由でもある」
銀髪美人は、どこか誇らしげだった。
「人界の者らが『神力』と呼ぶ我らの力は、生命のエネルギーそのものでもある。人界の者らに比べて我らが長命なのは、その力に拠るところが大きい。なかでも、とりわけ強大な力を持って生まれる者が定期的に現れる。眷属によって選ばれた盟主がその座に就く期間は、およそ千年。その在位が終盤に差しかかるタイミングで生まれるのが、次代盟主に相応しい力を備えた子供ということになる」
「それが、今回の場合は、あんたとこの躰の持ち主だった、と?」
そうだ、と艶やかな銀糸の髪が大きく揺れた。
「光と闇、それぞれの眷属の中で、盟主の座に即ける者だけが異種族と婚姻を結ぶことができる。それは、無理に課せられた使命ではなく、世界の調和を保つための摂理として、生まれながらに付与された特別な祝福なのだ」
普通の天界人であれば生命に関わることを、一族を代表して一手に担う存在。銀髪美人は、そのことをむしろ特権であるようにも感じているふしがあった。だが、聞かされているほうからすれば、どうにも釈然としない。
「へえ。じゃ、その盟主に相応しい力があることで、あんたとこの躰の持ち主は、異種族の相手をパートナーにしても生命の危険はないわけだ」
「盟主の場合、むしろ互いのエネルギーを取り交わすことで、より自身の力を強めることができる」
「あ~、それで在位期間も千年とかなんだ。天界人の平均寿命、軽く超えてるもんな」
「神力は我らの生命エネルギーそのものでもあると言った。その力が強い者ほど長命になる」
「なるほどね。じゃあ、本来は命取りになる異種族間の婚姻も、あんたらの場合はむしろ好都合。互いにとってウィン・ウィンの関係になると」
「ウィんうぃ? ……最後の部分がよくわからなかったが、そなた、さっきからなにやら、ひっかかる物言いをするな」
銀髪美人の声がわずかに尖った。やりとりしていくうちに、つい嫌味っぽい言いかたになったことに気づいたのだろう。
自分でも、どうしてなのかはわからない。だが、話を聞きながらずっと、自分を犠牲にする生きかたをあたりまえのように受け容れている様子が気に入らなかった。与えられた役割は役割として、個人の尊厳を蔑ろにするような生きかたには共感できなかった。
そんなふうに縛られた人生が幸せなはずもない。もっと自由に、羽ばたかせてやれたらどんなにいいだろう。
おまえはもっと、解き放たれた場所で輝くべき存在なんだ。俺のせいで、おまえの人生をだいなしにしてしまうわけにはいかない。いまをやり過ごしさえすれば、この選択がベストだったと思う日が来るだろう。足枷は取り除くべきだ。俺が重荷になるくらいなら、いっそ……。
「我は、自分のためにエルディラントを利用しようと思ったことなど一度もない!」
強い口調で言われて、我に返った。
あ、俺? いま……。
記憶の奥深い場所からこみあげかけた感情が、一瞬にして消え去った。
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