目覚めた世界で光の眷属の次代盟主とかいう超絶美人に迫られているのだが!?

九條 連

文字の大きさ
29 / 52
第4章

過飽和の要因(1)

しおりを挟む
「お騒がせしてしまい、申し訳なかった」

 倒れたリュシエルを寝所に運び、騒ぎが落ち着いたところでそう口を開いた。
 寝台では、いまもなお、リュシエルが深い眠りについている。
 屋敷に常駐している医術士の見立てでは、エネルギーが飽和状態になっているとのことだった。

 ひとまずの応急処置を済ませて医術士が下がっていった後、部屋には俺ともうひとり、世話役の男が残った。男は光の眷属の出身で、名をルシアスといった。年齢は二百六十七歳。リュシエルの従兄だという。
 ダークブロンドに金茶色の瞳。エルディラントと張る長身で、細身ではあるが、それなりに鍛えた躰付きをしている。従兄というだけあって非常に整った容姿をしているが、リュシエルのような華やかさとは無縁の、良識を重んじる生真面目な優等生タイプの男だった。

 感情の窺えない冷徹な眼差しが、じっとこちらを見据えている。俺はこの男のことが、ひどく苦手だった。


「リュシエルが倒れる直前、なにやら言い争いをしているようだとの報告を受けておりますが」
 眼差し同様、ひどく淡々とした口調で問われて、顔色の変化を読み取られないよう平静を装うのに難儀した。

「少し、意見のくい違いがあったことは事実だ。だが別段、争っていたわけではない。ただ、その原因は私にあるので、その結果、リュシエルが感情をたかぶらせ、不調を招いてしまった可能性は否めない。本当に配慮が足りなかった。申し訳ないと思っている」
 落ち着いたトーンで話すよう細心の注意を払いつつ、実際のところは掌に冷めたい汗を滲ませていた。

 俺はいま、『エルディラント』として話せているだろうか。

 話し口調や所作については、リュシエルからさんざん叩きこまれた。そのおかげである程度、不自然にならないくらいまで振る舞えるようにはなったが、これまでは万一に備えて、つねにリュシエルが気を配ってくれていた。少しでも対応に困ることがあれば、そばにいてすぐに助け船を出してくれる。そのうえで自分たちにとりわけ近しい者とは一定の距離を置き、必ず自分の目の届く範囲で俺が『エルディラント』として振る舞えているかをチェックしてくれていた。
 メルヴィルに対して自由に発言できたのも、傍らにリュシエルがいてくれたからこそと言える。だが、いまは違う。

 ルシアスは、リュシエルが盟主の座を引き継ぐための準備期間としてこの屋敷に移ってきた際、光の眷属から筆頭世話役として選ばれ、付き従ってきた。エルディラントにも当然ながら数名、世話役が随行しているが、こちらはエルディラント自身が一般階級の出身であったことから、役目を担うのに適切な者が闇の眷属の中から選ばれたと聞いている。
 したがって、エルディラントと世話役らの関係は、あくまで職務上のものにすぎないが、ルシアスの場合は公的な役目を担いつつ、私的な部分でもリュシエルと深く関わっていた。

 幼いころから、おなじ一族の中で育ってきたふたり。
 リュシエルが兄のように慕う存在ではあるが、それだけにエルディラントの件ももっとも気づかれる可能性が高く、要警戒対象の筆頭に挙がる人物でもあった。
 なにより、先にも言ったとおり、俺はこの男とはどうにも馬が合わない。礼節を弁えた理知的な人間だが、俺を――というよりはエルディラントを、どこか値踏みするような、非好意的な眼差しをつねに向けられている気がして落ち着かなかった。

 話に聞くかぎりでは、エルディラントもまた、優等生然とした非の打ちどころのないエリートだったようだが、同属嫌悪なのか、それ以外の理由があるのか、とにかくふたりのあいだには高く分厚い壁がある。従兄はあまり社交的なタイプではないので気にしなくていいとリュシエルは言うが、それだけでないことは、向けられる視線と言葉の端々から伝わってきた。ひょっとすると、身分差も影響しているのかもしれない。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...