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お兄ちゃんと大人になりたい私
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「7」は縁起の良い数字らしい。
ところがどっこい。
私にとっての「7」は試練の数字である。
始まりは、両親の「7」信仰である。
幸運の象徴にもなるし、神様の祝福のような、ポジティブなイメージがくっついているから、とにかく「7」は凄い数字なのだ。
神様を持ち出すなんて大げさだなぁとも思うけれど、旧約聖書の中での「7」は「安息の日」だし、七福神とか七代天使とか、調べてみればご利益のありそうな話がどんどん出てくる。
ちょっと調べれば、世界中に「7」の持つパワーの凄さを感じる話が転がっているから、嘘っぱちでもないのだろう。
とにかく「7」は凄いものだという、両親の謎の思い込みは「7」の神話を更新するぐらいの勢いで、信仰へと変わっていた。
車のナンバーは7のゾロ目を希望して、根性で取得していた。
家を買う時も下見を重ねて、選んだ住所の末尾は7丁目。
結婚したのは7月7日。
プロポーズも同じ日。
高校生の時に付き合い始めたのも……なんて遡っていくと、いつから「7」を信仰していたの?! とあきれてしまうぐらい、両親の記念日は「7」であふれている。
そんな両親だから、何を血迷ったのか、子作りまで7人も頑張った。
頑張るところを間違えてるし、もしかして馬鹿じゃないの? と思うのは、私が末っ子だからかもしれない。
だって5人で手打ちにしておけば自家用車だって、一家7人で全員乗れるミニバンもあったのに。
総勢9人が乗れるバンになると、小さなバスみたいなものだ。
とても大きいから駐車場に困ったりもする。
でもそんな不満を漏らすと、お母さんは「5人でやめちゃったら、睦美も七菜も生まれていないじゃない」なんてコロコロ笑って、さみしいわ、なんて言うのだ。
それは確かに私だって、家族のことが好きで、嫌じゃないけど。
でもね、私はアンラッキー7の星の元に生まれてきたと思うんだ。
7人兄弟の末っ子となると、服も道具もお古ばかり。
寝る時のお布団だって誰かと一緒。
兄弟げんかも絶対負ける。
大好きなおやつだって、たいてい個包装のお菓子は6個入りなのだ。
私一人違う物になって、幼児の時はよく泣いていた。
みんながおせんべいの時に、私だけ卵ボーロになる口惜しさと言ったら。
それに中学生になったらひとり部屋が欲しいと言えるのは、一人用の布団を持っている奴の言葉だ。
全員分の布団を敷くスペースがないからと言っても、ギュウギュウの雑魚寝は何かが違う。
私は、自分の布団が欲しい。
だって、夏は暑いもん!
冬は睦美姉ちゃんが湯たんぽになってくれるけど、夏が辛い。
七番目なんて、本当に損ばっかり。
なんてことを思っていたら、一志兄ちゃんが久しぶりに帰ってきた。
社会人になって二年目の一志兄ちゃんは、社会人一年目の双葉姉ちゃんと二人暮らしをしている私の憧れだ。
「晩御飯にみんなで肉喰いたいから、一緒に買いに行くか?」
「行く行く! 荷物持ちは任せて!」
嬉しくてまとわりつく私の頭をヨシヨシなでてくれる一志兄ちゃんと、一緒に歩きながら買い物に出る。
最近の面白い話とか、学校の出来事とか、とりとめもなく話してスーパーで買い物をした。
重くもない荷物をはんぶんこして持ち、プラプラ揺らしながら歩いていたら一志兄ちゃんが言った。
「七菜は、タコ焼き、好きか?」
「大好き!」
ちょっと目線を横に向ければたこ焼き屋さんがあるので、一志兄ちゃんの言いたいことはわかる。
勢い込んで「お供しますよ、どこまでも!」なんて力を込める私に、明るく笑うと先に立ってたこ焼きをひとつ注文してくれた。
ウキウキしながらたこ焼きを受け取って、イートインに入って並んで座り「はんぶんこしようね!」と見上げたら、一志兄ちゃんは優しい目をしていた。
「一人で食べてもいいって言ったらどうする?」
「え? それは……なんか違うと思う」
だって、一志兄ちゃんが買ってくれたものだし、一人じゃ美味しくない。
戸惑っていたら、ヨシヨシと頭をなでられた。
「七菜は、七番目だからね。独り占めってしたことがないだろう?」
不意を突かれて、びっくりした。
でも不思議と、そうだね、なんてうなずけなかった。
気遣ってくれる一志兄ちゃんの優しさが、恥ずかしいぐらい嬉しかった。
だから気が付くと「あるよ」と言っていた。
「私、今も一志兄ちゃんを独り占めしてる」
もっと言えば、この前の双葉姉ちゃんの休みの日には、二人きりでソフトクリームを食べた。
参治兄ちゃんとは二人きりで遠くの公園に行ってローラースケートをしたし、詩乃姉ちゃんとは真夏にプールに行った。
指折り数えて行ったら両手の指をあっという間に超えてしまい、私の方がビックリした。
「なんかすごくない?! 独り占めがいっぱいだった!」
感動している私を尻目に、一志兄ちゃんはブフゥっと吹き出して口元を押さえてうつむくと、ブルブルと肩を震わせていた。
笑いのツボに入ったのか、全然笑いが止まらないし、会話に戻ってこない。
目に涙までためているから、なんかひどいと思った。
「なんで笑うの?」
「ごめんごめん、あんまり七菜が可愛いから。小学生らしくっていいよ」
「来年は中学です! あ~あ、私も早く大人になりたいなぁ」
そうすればもっと、いろんなことができる。
でも一志兄ちゃんは「それはそれで寂しいなぁ」と笑った。
「とうぶん、可愛い七番目でいなさい」
髪の毛をグチャグチャにかき混ぜられて、キャーッと声を上げてしまう。
振り払いたくても、大人の兄ちゃんの大きな手には敵わない。
あっという間に、頭ぼさぼさお化けの出来上がりだ。
プンプン怒ってても、可愛い可愛いと言って一志兄ちゃんったら相手にしてくれない。
こうやっていつまでも、子供扱いされるのかな?
私だって、一志兄ちゃんや双葉姉ちゃんみたいに格好良い大人になりたいのに、7番目のままでいなさいって、ものすごく酷いと思うんだ。
やっぱり7番目って、アンラッキーかもしれない。
ところがどっこい。
私にとっての「7」は試練の数字である。
始まりは、両親の「7」信仰である。
幸運の象徴にもなるし、神様の祝福のような、ポジティブなイメージがくっついているから、とにかく「7」は凄い数字なのだ。
神様を持ち出すなんて大げさだなぁとも思うけれど、旧約聖書の中での「7」は「安息の日」だし、七福神とか七代天使とか、調べてみればご利益のありそうな話がどんどん出てくる。
ちょっと調べれば、世界中に「7」の持つパワーの凄さを感じる話が転がっているから、嘘っぱちでもないのだろう。
とにかく「7」は凄いものだという、両親の謎の思い込みは「7」の神話を更新するぐらいの勢いで、信仰へと変わっていた。
車のナンバーは7のゾロ目を希望して、根性で取得していた。
家を買う時も下見を重ねて、選んだ住所の末尾は7丁目。
結婚したのは7月7日。
プロポーズも同じ日。
高校生の時に付き合い始めたのも……なんて遡っていくと、いつから「7」を信仰していたの?! とあきれてしまうぐらい、両親の記念日は「7」であふれている。
そんな両親だから、何を血迷ったのか、子作りまで7人も頑張った。
頑張るところを間違えてるし、もしかして馬鹿じゃないの? と思うのは、私が末っ子だからかもしれない。
だって5人で手打ちにしておけば自家用車だって、一家7人で全員乗れるミニバンもあったのに。
総勢9人が乗れるバンになると、小さなバスみたいなものだ。
とても大きいから駐車場に困ったりもする。
でもそんな不満を漏らすと、お母さんは「5人でやめちゃったら、睦美も七菜も生まれていないじゃない」なんてコロコロ笑って、さみしいわ、なんて言うのだ。
それは確かに私だって、家族のことが好きで、嫌じゃないけど。
でもね、私はアンラッキー7の星の元に生まれてきたと思うんだ。
7人兄弟の末っ子となると、服も道具もお古ばかり。
寝る時のお布団だって誰かと一緒。
兄弟げんかも絶対負ける。
大好きなおやつだって、たいてい個包装のお菓子は6個入りなのだ。
私一人違う物になって、幼児の時はよく泣いていた。
みんながおせんべいの時に、私だけ卵ボーロになる口惜しさと言ったら。
それに中学生になったらひとり部屋が欲しいと言えるのは、一人用の布団を持っている奴の言葉だ。
全員分の布団を敷くスペースがないからと言っても、ギュウギュウの雑魚寝は何かが違う。
私は、自分の布団が欲しい。
だって、夏は暑いもん!
冬は睦美姉ちゃんが湯たんぽになってくれるけど、夏が辛い。
七番目なんて、本当に損ばっかり。
なんてことを思っていたら、一志兄ちゃんが久しぶりに帰ってきた。
社会人になって二年目の一志兄ちゃんは、社会人一年目の双葉姉ちゃんと二人暮らしをしている私の憧れだ。
「晩御飯にみんなで肉喰いたいから、一緒に買いに行くか?」
「行く行く! 荷物持ちは任せて!」
嬉しくてまとわりつく私の頭をヨシヨシなでてくれる一志兄ちゃんと、一緒に歩きながら買い物に出る。
最近の面白い話とか、学校の出来事とか、とりとめもなく話してスーパーで買い物をした。
重くもない荷物をはんぶんこして持ち、プラプラ揺らしながら歩いていたら一志兄ちゃんが言った。
「七菜は、タコ焼き、好きか?」
「大好き!」
ちょっと目線を横に向ければたこ焼き屋さんがあるので、一志兄ちゃんの言いたいことはわかる。
勢い込んで「お供しますよ、どこまでも!」なんて力を込める私に、明るく笑うと先に立ってたこ焼きをひとつ注文してくれた。
ウキウキしながらたこ焼きを受け取って、イートインに入って並んで座り「はんぶんこしようね!」と見上げたら、一志兄ちゃんは優しい目をしていた。
「一人で食べてもいいって言ったらどうする?」
「え? それは……なんか違うと思う」
だって、一志兄ちゃんが買ってくれたものだし、一人じゃ美味しくない。
戸惑っていたら、ヨシヨシと頭をなでられた。
「七菜は、七番目だからね。独り占めってしたことがないだろう?」
不意を突かれて、びっくりした。
でも不思議と、そうだね、なんてうなずけなかった。
気遣ってくれる一志兄ちゃんの優しさが、恥ずかしいぐらい嬉しかった。
だから気が付くと「あるよ」と言っていた。
「私、今も一志兄ちゃんを独り占めしてる」
もっと言えば、この前の双葉姉ちゃんの休みの日には、二人きりでソフトクリームを食べた。
参治兄ちゃんとは二人きりで遠くの公園に行ってローラースケートをしたし、詩乃姉ちゃんとは真夏にプールに行った。
指折り数えて行ったら両手の指をあっという間に超えてしまい、私の方がビックリした。
「なんかすごくない?! 独り占めがいっぱいだった!」
感動している私を尻目に、一志兄ちゃんはブフゥっと吹き出して口元を押さえてうつむくと、ブルブルと肩を震わせていた。
笑いのツボに入ったのか、全然笑いが止まらないし、会話に戻ってこない。
目に涙までためているから、なんかひどいと思った。
「なんで笑うの?」
「ごめんごめん、あんまり七菜が可愛いから。小学生らしくっていいよ」
「来年は中学です! あ~あ、私も早く大人になりたいなぁ」
そうすればもっと、いろんなことができる。
でも一志兄ちゃんは「それはそれで寂しいなぁ」と笑った。
「とうぶん、可愛い七番目でいなさい」
髪の毛をグチャグチャにかき混ぜられて、キャーッと声を上げてしまう。
振り払いたくても、大人の兄ちゃんの大きな手には敵わない。
あっという間に、頭ぼさぼさお化けの出来上がりだ。
プンプン怒ってても、可愛い可愛いと言って一志兄ちゃんったら相手にしてくれない。
こうやっていつまでも、子供扱いされるのかな?
私だって、一志兄ちゃんや双葉姉ちゃんみたいに格好良い大人になりたいのに、7番目のままでいなさいって、ものすごく酷いと思うんだ。
やっぱり7番目って、アンラッキーかもしれない。
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