65 / 80
プロポーズ(大学生・社会人
ピンキーリング
しおりを挟む
クリスマスのプレゼント。
ない知恵を絞るのに、僕はいつも間違えてるようだ。
彼女は、なぜか喜ばない。
話題の映画のチケットを手に入れても。
ブレイク中のミュージシャンのチケットを手に入れても。
流行りのレストランに予約を入れても。
抱えきれない程の大きさの薔薇の花束を渡しても。
「ありがと」
つまらなそうに、そう言って終わる。
「これ、嫌いだった?」
「そんなことないわ。多分、好き」
多分?
僕は彼女の言うことが、よくわからない。
僕は何を間違えてるのか、ちっともわからない。
それでも、僕は彼女が好きなんだ。
違和感を感じるのは、僕が贈り物をした時だけ。
寄り添って公園を歩いたり。
カフェで会話をしたり。
普段は微笑みを絶やさない、穏やかな彼女。
特別なことは何もないけど、自然な空気が愛しいと思う。
ちゃんと笑ってほしいな。
そんなふうに願っているのに。
僕が贈り物をした時だけは、ハッキリとわかるつまらない顔になるんだ。
今日もまた、間違えたらしい。
赤い宝石のついたピンキーリング。
店員が今年の売れ筋で宝石の嫌いな女の子はいない、なんて言うから奮発したのに。
馴染みのカフェでコーヒーを飲みながら渡すと、彼女は少し眼差しをかげらせた。
「ピンキー?」
うん、とうなずくと、彼女は肩をすくめる。
「ねぇ、どうして小指な訳?」
まるで、不本意だわ、なんて言いたげな眼差しに、僕はまたわからなくなった。
彼女は、どうして喜ばないんだろう?
「ダメだった?」
うん、とあっさり彼女はうなずいた。
「指輪、嫌い?」
「好きでも嫌いでもないけど、ピンキーは嫌」
ゴメン、と僕が謝ると彼女は眼差しをとがらせた。
「どうして謝るの?」
どうしてと問われても。
君が怒っているから、なんて言いにくい。
「ねぇ、どうして小指にしたの?」
ふてくされたような彼女の問いに、今年のお勧めだって、と小さな声で応える。
彼女は、やっぱり、と小さく呟いた。
しばらく黙っていたけれど、フウッとため息をついた。
「この前、そろそろ先のことも考えようって、あなたが言ったのよ?」
うん、まぁ、そろそろ結婚したいよなぁなんて話したけど。
空気みたいに馴染んでいるから、自然にそう思っただけで。
それが今、怒られている理由だろうか?
「なのに、ピンキー? 普通、薬指じゃないの?」
ああ、なるほど。
そこまで言われて、ようやく僕は気がついた。
「そっか、普通は薬指なんだ」
もう! と彼女は肩をすくめた。
「ゴメン、気がつかなかった」
「知ってるわ、そういう人だって」
「ごめん、でもほら、赤い糸みたいでいいだろ?」
苦し紛れで、僕は適当なことを言う。
運命の恋人どうしみたいに、小指で繋がると思えばいい。
なんて言うと、彼女は少しだけ絶句した。
「なに、それ!」
うわ、やっぱり御不満?
続く文句を覚悟したけど、彼女ははじけるように笑いだした。
「なに、それ」
優しくてやわらかな口調で、何度か「なにそれ」を繰り返す。
それでも鮮やかに笑っていた。
彼女が左手を僕に差し出した。
思わせぶりな眼差しに、お気に召してくれたみたいだとホッとする。
彼女の小指にピンキーリングをはめた。
赤い石が、キラリと光った。
「仕方ないか、赤い糸なら小指でも」
贈りものをしたことでは、初めてかもしれない。
僕に向けられたのは、彼女の本物の微笑みだった。
「ありがと。これからもよろしくね」
ない知恵を絞るのに、僕はいつも間違えてるようだ。
彼女は、なぜか喜ばない。
話題の映画のチケットを手に入れても。
ブレイク中のミュージシャンのチケットを手に入れても。
流行りのレストランに予約を入れても。
抱えきれない程の大きさの薔薇の花束を渡しても。
「ありがと」
つまらなそうに、そう言って終わる。
「これ、嫌いだった?」
「そんなことないわ。多分、好き」
多分?
僕は彼女の言うことが、よくわからない。
僕は何を間違えてるのか、ちっともわからない。
それでも、僕は彼女が好きなんだ。
違和感を感じるのは、僕が贈り物をした時だけ。
寄り添って公園を歩いたり。
カフェで会話をしたり。
普段は微笑みを絶やさない、穏やかな彼女。
特別なことは何もないけど、自然な空気が愛しいと思う。
ちゃんと笑ってほしいな。
そんなふうに願っているのに。
僕が贈り物をした時だけは、ハッキリとわかるつまらない顔になるんだ。
今日もまた、間違えたらしい。
赤い宝石のついたピンキーリング。
店員が今年の売れ筋で宝石の嫌いな女の子はいない、なんて言うから奮発したのに。
馴染みのカフェでコーヒーを飲みながら渡すと、彼女は少し眼差しをかげらせた。
「ピンキー?」
うん、とうなずくと、彼女は肩をすくめる。
「ねぇ、どうして小指な訳?」
まるで、不本意だわ、なんて言いたげな眼差しに、僕はまたわからなくなった。
彼女は、どうして喜ばないんだろう?
「ダメだった?」
うん、とあっさり彼女はうなずいた。
「指輪、嫌い?」
「好きでも嫌いでもないけど、ピンキーは嫌」
ゴメン、と僕が謝ると彼女は眼差しをとがらせた。
「どうして謝るの?」
どうしてと問われても。
君が怒っているから、なんて言いにくい。
「ねぇ、どうして小指にしたの?」
ふてくされたような彼女の問いに、今年のお勧めだって、と小さな声で応える。
彼女は、やっぱり、と小さく呟いた。
しばらく黙っていたけれど、フウッとため息をついた。
「この前、そろそろ先のことも考えようって、あなたが言ったのよ?」
うん、まぁ、そろそろ結婚したいよなぁなんて話したけど。
空気みたいに馴染んでいるから、自然にそう思っただけで。
それが今、怒られている理由だろうか?
「なのに、ピンキー? 普通、薬指じゃないの?」
ああ、なるほど。
そこまで言われて、ようやく僕は気がついた。
「そっか、普通は薬指なんだ」
もう! と彼女は肩をすくめた。
「ゴメン、気がつかなかった」
「知ってるわ、そういう人だって」
「ごめん、でもほら、赤い糸みたいでいいだろ?」
苦し紛れで、僕は適当なことを言う。
運命の恋人どうしみたいに、小指で繋がると思えばいい。
なんて言うと、彼女は少しだけ絶句した。
「なに、それ!」
うわ、やっぱり御不満?
続く文句を覚悟したけど、彼女ははじけるように笑いだした。
「なに、それ」
優しくてやわらかな口調で、何度か「なにそれ」を繰り返す。
それでも鮮やかに笑っていた。
彼女が左手を僕に差し出した。
思わせぶりな眼差しに、お気に召してくれたみたいだとホッとする。
彼女の小指にピンキーリングをはめた。
赤い石が、キラリと光った。
「仕方ないか、赤い糸なら小指でも」
贈りものをしたことでは、初めてかもしれない。
僕に向けられたのは、彼女の本物の微笑みだった。
「ありがと。これからもよろしくね」
0
あなたにおすすめの小説
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。
クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。
3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。
ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。
「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる