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ユータは冒険者である
キケンな冒険
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冒険で一番危険なのはなんだと思う?
魔物?野生動物?残酷な自然?
どれも危険ではある。魔物に襲われて死にかけたり、野生動物を狩って食おうとしたら逆襲されたり、水源が見つからず干乾びそうになったり。
だが一番危険なのは人間だ。
それを今、痛感している最中である。
「攻撃用の魔法石なんざ、イイもんもってんな」
「おっ財布の中もけっこう入ってんじゃねえか」
手足を縛られ地面に転がされたまま、盗賊達が自分の荷物をあさるのをなすすべなく見ているしかない。
「ギルドカードはどうだ?Dランクねえ・・・。口座が・・・九十万ギル!?」
「ウソだろ!?」
「こんなガキが!?」
「・・・偽物じぇねえ?ガキだぞ?」
「ギルドカードは偽造できないってきいたが・・・」
「おれもそうきいた」
盗賊たちは驚愕したあとぼそぼそと疑いの声を上げた。
「本物だろ、たぶん」
体格のいい、リーダーと思われる男がニヤけながら自分へ屈みこむ。
「なあ兄ちゃん、いったい何やってこんな大金つくった?」
息がクサッ!!
思わず顔を背けると服を掴まれ引き寄せられた。息だけではなく全身から臭いがする。いったいどれだけ体を洗っていないんだ。
自分もここ何日か洗えていないが、まさかこんな臭いをしているのか?だとしたら・・・へこむ。
「きいてんだろが?Dランクがこんな大金持ってるわけがねえ。どうせ悪い事でもしたんだろ、なんならおれの仲間にしてもいいぜ?」
「・・・以前に他の冒険者と組んだときに、そいつが高ランクの魔物を倒して、儲けは山分けだった」
「そりゃ、運がよかったな。で?」
「なにが?」
「仲間になって口座の暗証番号を教えるか、仲間にならずに痛い目にあってから教えるか、どっちがいい?」
男は腰から抜いた短剣をこれ見よがしに見せつける。
「どちらも断る。お前らみたいな反吐の出る連中と仲間になるくらいなら死んだほうがマシだ」
「なら死ぬか」
「うあっ!」
ふとももが短剣で深く切り裂かれる。
「おうおう、かなり血がでてんなあ。このままだと死んじまうぜ。でもおれは優しいからチャンスをやる。お前が暗証番号を言えば治してやる」
回復の魔法石を手で転がしながらおどけるように男は言った。
痛みで額にあぶら汗が浮かぶ。
「はあっ、はっ」
「ほら早く言え。死ぬぞ」
「教えたところで、殺すつもりだろうが・・・。さっさとやれよ」
「ふん。じゃあ、もういい」
自分の胸に短剣が突き刺さる。
男が自分を地面に放り捨てると盗賊たちは森の奥へと去って行った。
盗賊たちがいなくなった後、どこからともなく黒猫があらわれる。
「まったく、お主を死なぬ身にしたのは易々と殺されるためではないのだぞ。もう少しねばったらどうじゃ」
「・・・」
「聞いておるのか、ユータ」
「・・・聞いてるよ、シアル」
自分は眼をあけると自分に話しかける黒猫、シアルに返事をした。
体を起こし、木にもたれて座る。胸や足の傷はすでに治っているから痛みはない。
しかし、死ぬのは何回やっても慣れないな。精神的にきつい。
「自分だって死にたくて死んでるわけじゃない。今回は相手が悪かった。・・・いや、自分の見る眼がなかったな」
最初、盗賊たちにあったとき彼らは普通の冒険者のようにほがらかだった。自分はまったく警戒せず彼らに近づき、あっという間に縛られ荷物を盗られてしまった。
「次はひっかかるでないぞ」
「ああ、気をつける。それはそうと、シアルならあいつらがどこに行ったか分かるよな?荷物をとり返しに行こう」
「うむ。任せるがよい」
魔物?野生動物?残酷な自然?
どれも危険ではある。魔物に襲われて死にかけたり、野生動物を狩って食おうとしたら逆襲されたり、水源が見つからず干乾びそうになったり。
だが一番危険なのは人間だ。
それを今、痛感している最中である。
「攻撃用の魔法石なんざ、イイもんもってんな」
「おっ財布の中もけっこう入ってんじゃねえか」
手足を縛られ地面に転がされたまま、盗賊達が自分の荷物をあさるのをなすすべなく見ているしかない。
「ギルドカードはどうだ?Dランクねえ・・・。口座が・・・九十万ギル!?」
「ウソだろ!?」
「こんなガキが!?」
「・・・偽物じぇねえ?ガキだぞ?」
「ギルドカードは偽造できないってきいたが・・・」
「おれもそうきいた」
盗賊たちは驚愕したあとぼそぼそと疑いの声を上げた。
「本物だろ、たぶん」
体格のいい、リーダーと思われる男がニヤけながら自分へ屈みこむ。
「なあ兄ちゃん、いったい何やってこんな大金つくった?」
息がクサッ!!
思わず顔を背けると服を掴まれ引き寄せられた。息だけではなく全身から臭いがする。いったいどれだけ体を洗っていないんだ。
自分もここ何日か洗えていないが、まさかこんな臭いをしているのか?だとしたら・・・へこむ。
「きいてんだろが?Dランクがこんな大金持ってるわけがねえ。どうせ悪い事でもしたんだろ、なんならおれの仲間にしてもいいぜ?」
「・・・以前に他の冒険者と組んだときに、そいつが高ランクの魔物を倒して、儲けは山分けだった」
「そりゃ、運がよかったな。で?」
「なにが?」
「仲間になって口座の暗証番号を教えるか、仲間にならずに痛い目にあってから教えるか、どっちがいい?」
男は腰から抜いた短剣をこれ見よがしに見せつける。
「どちらも断る。お前らみたいな反吐の出る連中と仲間になるくらいなら死んだほうがマシだ」
「なら死ぬか」
「うあっ!」
ふとももが短剣で深く切り裂かれる。
「おうおう、かなり血がでてんなあ。このままだと死んじまうぜ。でもおれは優しいからチャンスをやる。お前が暗証番号を言えば治してやる」
回復の魔法石を手で転がしながらおどけるように男は言った。
痛みで額にあぶら汗が浮かぶ。
「はあっ、はっ」
「ほら早く言え。死ぬぞ」
「教えたところで、殺すつもりだろうが・・・。さっさとやれよ」
「ふん。じゃあ、もういい」
自分の胸に短剣が突き刺さる。
男が自分を地面に放り捨てると盗賊たちは森の奥へと去って行った。
盗賊たちがいなくなった後、どこからともなく黒猫があらわれる。
「まったく、お主を死なぬ身にしたのは易々と殺されるためではないのだぞ。もう少しねばったらどうじゃ」
「・・・」
「聞いておるのか、ユータ」
「・・・聞いてるよ、シアル」
自分は眼をあけると自分に話しかける黒猫、シアルに返事をした。
体を起こし、木にもたれて座る。胸や足の傷はすでに治っているから痛みはない。
しかし、死ぬのは何回やっても慣れないな。精神的にきつい。
「自分だって死にたくて死んでるわけじゃない。今回は相手が悪かった。・・・いや、自分の見る眼がなかったな」
最初、盗賊たちにあったとき彼らは普通の冒険者のようにほがらかだった。自分はまったく警戒せず彼らに近づき、あっという間に縛られ荷物を盗られてしまった。
「次はひっかかるでないぞ」
「ああ、気をつける。それはそうと、シアルならあいつらがどこに行ったか分かるよな?荷物をとり返しに行こう」
「うむ。任せるがよい」
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