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第1章 引越先は訳ありでした
3.扉の向こう
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気を取り直して……
「ミント、よくやった。これで中の安全性は確認できたと思うが、そもそも光の先はどうなっている?」
「すぐそこに、部屋があるよ?」
「部屋?」
「そう。今までみたいにエレベーターの前じゃなくて部屋になっていたよ」
1つのエレベータに各フロア2戸という贅沢な作りのため、玄関を出ると、そこはエレベータと、お隣さんの玄関があるはずなのだが、想定通り、それは無いようだ。そのままどこかに転送されるのかとも思っていたが、まだ屋内とは思わなかった。
「ありがとう。グッドジョブだ!」
次は俺自身で確認する番だ。
「お父さん、行ってくる。とりあえずユイカはここで待っていてくれ。あと、念のため命綱代わりにバスタオルを持って出るので、合図したらお父さんの事、引っ張ってくれ」
「オッケー」
娘はホッペの所でOKマークを作り、バスタオルの反対側を持ってくれた。
「ひとえ、浩太、ちょっと行ってくる。心配しないで待っていてくれ」
「「はーい、いってらっしゃーい」」
仕事に行く時と変わらないくらいの普段通りの返事が来る。
自分の心情としては、最悪、死ぬかもしれないくらいの覚悟を持って挑もうとしているのだが、すでにミントが出入りしているので、家族の反応はイマイチ。妻も息子もリビングから出てこない。俺だけなのかな……真剣に異世界にビビってるの。
「じゃあ、逝ってくる!」
言葉に別の意味も込めて、光の中にそっと右足を入れる。
光の先に地面がある事を確認し、そのままゆっくり上半身を差し入れる。顔が通る瞬間、緊張と恐怖を抑え込むために気合を入れる。
「うおりゃー! ……あれ」
頭を入れた瞬間も、虹色の光は何の抵抗もなく、ミントが言っていた部屋が視界に入る。視界の先には丸太で組まれた長方形の薄暗い部屋。体を出している場所はドアの大きさに、玄関と同じような虹色の光があり、部屋の中では、この明かりが唯一の光源。ちょうど反対側に木の扉があるが、窓は無い。現在、左足だけを玄関に残し、残りは異世界へ。頭を出したり、入れたり……虹色の光には厚みがなく、すぐそこがもう一つの部屋になっていた。
3LDKの我が家が4LDKに上位互換。わーい。
「とりあえず、この中は大丈夫そう。ミントの言うとおり部屋があったよ。あと、ドアがあったのでもう少し先まで確認してみるので、ちょっと待ってて」
そう家族に声をかけ、薄暗い部屋へ戻り、反対側のドアに手をかける。扉は外に開くようになっていた。俺は、恐る恐る……まずは数センチ、ドアを開ける。部屋の中に外の光が差し込む。目が慣れるのを待って、隙間から外を覗く。足元は白い石畳、その先に見える景色は背の低い雑草と青い空。見えている範囲では情報が少ない。もう少しだけ隙間を広げ、ゆっくりと頭を出して辺りを見回す。
どうやら、俺がいるのは、細長い稜線の上のようだ。目の前の石畳は、すぐ先で階段となって下の方へ続いている。その両脇は崖だ。階段の幅は自動車が通れるくらいあるので、ふざけたりしない限り落ちる心配は無いだろう。
安全そうなので、思い切って外にでる。
稜線の右側は海。左側は林になっている。稜線に沿って階段が続いており、先の方で左に緩やかに曲がっておりその先は林の中に入っているように見える。林を抜けた先には、かすかに集落らしき家の影や塀が見える。
「人がいるのか……? 誰かは住んでそうだな」
振り返ると今出てきたログハウス風の小さな小屋が見える。
小屋の左右は断崖絶壁。稜線の一番高い部分ギリギリに建てられた小屋のようだ。小屋の大きさは、明らかに今出てきたはずの薄暗い部屋の分しか大きさが無い。本来なら小屋の後ろに家の分の建物が無いといけないのだが、あの虹色の光の向こうはどこかに転移してしまっているのか、不可視の状態になっているのかもしれない。
そこまで確認して家の中へ戻り、状況を説明する。
「大丈夫そうなら、みんなで行きましょう。ちょっと待ってて、外に出てもいいように着替えるから。あなたも、ユイカも、浩太も着替えなさい。はい、準備する!」
妻の一言で、子供達も動き出す。
なんだか、散歩に行くノリだな。一人で緊張していた自分が馬鹿みたいだ……
-----------
妻と娘が出かける準備をしている間、浩太と二人で、薄暗い部屋の中に、キャンプ道具から電池式のLEDランプを中央に設置し、テーブルと椅子も置いてみた。その後、クローゼットからリュックを出し、リュックの中に懐中電灯、ペットボトルの水、アーミーナイフ、それに学生の頃に剣道の段審査で利用した小太刀を護身用に詰め込む。
ついでに俺も、ベランダから感じる外の温度に合わせて、春先くらいの格好でまとめる。冷や汗をかいたので、体を軽く拭き、髭を剃り、歯も磨きました。妻はメイクもばっちり。異世界の住人に出会ったとしても恥ずかしくないね。
「よし、行こうか。ミントは会話ができるし、もうリードはいらないよな?」
「ちゃんと言われた通りに出来るから大丈夫だよ」
さて、行きますか……
まさに外に出るドアに手をかけようとした時……
ドンドンドン!
外から少し強めのノックの音がした。
「ミント、よくやった。これで中の安全性は確認できたと思うが、そもそも光の先はどうなっている?」
「すぐそこに、部屋があるよ?」
「部屋?」
「そう。今までみたいにエレベーターの前じゃなくて部屋になっていたよ」
1つのエレベータに各フロア2戸という贅沢な作りのため、玄関を出ると、そこはエレベータと、お隣さんの玄関があるはずなのだが、想定通り、それは無いようだ。そのままどこかに転送されるのかとも思っていたが、まだ屋内とは思わなかった。
「ありがとう。グッドジョブだ!」
次は俺自身で確認する番だ。
「お父さん、行ってくる。とりあえずユイカはここで待っていてくれ。あと、念のため命綱代わりにバスタオルを持って出るので、合図したらお父さんの事、引っ張ってくれ」
「オッケー」
娘はホッペの所でOKマークを作り、バスタオルの反対側を持ってくれた。
「ひとえ、浩太、ちょっと行ってくる。心配しないで待っていてくれ」
「「はーい、いってらっしゃーい」」
仕事に行く時と変わらないくらいの普段通りの返事が来る。
自分の心情としては、最悪、死ぬかもしれないくらいの覚悟を持って挑もうとしているのだが、すでにミントが出入りしているので、家族の反応はイマイチ。妻も息子もリビングから出てこない。俺だけなのかな……真剣に異世界にビビってるの。
「じゃあ、逝ってくる!」
言葉に別の意味も込めて、光の中にそっと右足を入れる。
光の先に地面がある事を確認し、そのままゆっくり上半身を差し入れる。顔が通る瞬間、緊張と恐怖を抑え込むために気合を入れる。
「うおりゃー! ……あれ」
頭を入れた瞬間も、虹色の光は何の抵抗もなく、ミントが言っていた部屋が視界に入る。視界の先には丸太で組まれた長方形の薄暗い部屋。体を出している場所はドアの大きさに、玄関と同じような虹色の光があり、部屋の中では、この明かりが唯一の光源。ちょうど反対側に木の扉があるが、窓は無い。現在、左足だけを玄関に残し、残りは異世界へ。頭を出したり、入れたり……虹色の光には厚みがなく、すぐそこがもう一つの部屋になっていた。
3LDKの我が家が4LDKに上位互換。わーい。
「とりあえず、この中は大丈夫そう。ミントの言うとおり部屋があったよ。あと、ドアがあったのでもう少し先まで確認してみるので、ちょっと待ってて」
そう家族に声をかけ、薄暗い部屋へ戻り、反対側のドアに手をかける。扉は外に開くようになっていた。俺は、恐る恐る……まずは数センチ、ドアを開ける。部屋の中に外の光が差し込む。目が慣れるのを待って、隙間から外を覗く。足元は白い石畳、その先に見える景色は背の低い雑草と青い空。見えている範囲では情報が少ない。もう少しだけ隙間を広げ、ゆっくりと頭を出して辺りを見回す。
どうやら、俺がいるのは、細長い稜線の上のようだ。目の前の石畳は、すぐ先で階段となって下の方へ続いている。その両脇は崖だ。階段の幅は自動車が通れるくらいあるので、ふざけたりしない限り落ちる心配は無いだろう。
安全そうなので、思い切って外にでる。
稜線の右側は海。左側は林になっている。稜線に沿って階段が続いており、先の方で左に緩やかに曲がっておりその先は林の中に入っているように見える。林を抜けた先には、かすかに集落らしき家の影や塀が見える。
「人がいるのか……? 誰かは住んでそうだな」
振り返ると今出てきたログハウス風の小さな小屋が見える。
小屋の左右は断崖絶壁。稜線の一番高い部分ギリギリに建てられた小屋のようだ。小屋の大きさは、明らかに今出てきたはずの薄暗い部屋の分しか大きさが無い。本来なら小屋の後ろに家の分の建物が無いといけないのだが、あの虹色の光の向こうはどこかに転移してしまっているのか、不可視の状態になっているのかもしれない。
そこまで確認して家の中へ戻り、状況を説明する。
「大丈夫そうなら、みんなで行きましょう。ちょっと待ってて、外に出てもいいように着替えるから。あなたも、ユイカも、浩太も着替えなさい。はい、準備する!」
妻の一言で、子供達も動き出す。
なんだか、散歩に行くノリだな。一人で緊張していた自分が馬鹿みたいだ……
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妻と娘が出かける準備をしている間、浩太と二人で、薄暗い部屋の中に、キャンプ道具から電池式のLEDランプを中央に設置し、テーブルと椅子も置いてみた。その後、クローゼットからリュックを出し、リュックの中に懐中電灯、ペットボトルの水、アーミーナイフ、それに学生の頃に剣道の段審査で利用した小太刀を護身用に詰め込む。
ついでに俺も、ベランダから感じる外の温度に合わせて、春先くらいの格好でまとめる。冷や汗をかいたので、体を軽く拭き、髭を剃り、歯も磨きました。妻はメイクもばっちり。異世界の住人に出会ったとしても恥ずかしくないね。
「よし、行こうか。ミントは会話ができるし、もうリードはいらないよな?」
「ちゃんと言われた通りに出来るから大丈夫だよ」
さて、行きますか……
まさに外に出るドアに手をかけようとした時……
ドンドンドン!
外から少し強めのノックの音がした。
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