異世界にお引越し! - 訳あり物件でした -

でもん

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第4章 オーレンセ

45.フェロル村への帰還

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「そういえば、フェロル村の子供達は何をさせられてたんだろう?」

 本人達に聞こえないように、リリィに小声で聞いてみた。
 性的なご奉仕とかだと、一生の心の傷になりかねない。
 子供達がユイカの年齢だったとすると、あの場でファビオを生かして帰した事を後悔するレベルだ。

「それが……村へ戻る前に確認しておいた方がいいと思って、今朝、子供達を集めて少し話を聞きました」

 リリィも気になってたんだね。

「ただ、どうやら特に何をされたと言う事もなく、ファビオ様が寝付くまで、周りに座っていただけのようです」
「え、たったそれだけ?」
「はい、ファビオ様からのお話も特になく、ただ、眠りに付くのをじっと待って、眠りについたら、別の部屋に移動して、そこで寝るだけの生活だったみたいで……食事も比較的良いものを提供されていたようでしたし、特に不自由はなかったと……」

 俺たちの後ろを歩いていたナバレッテが口を挟む。

「日中はアニア隊の方で面倒を見ていましたが、特に乱暴な扱いを受ける様子もなかったので、大丈夫かと思います。アニア隊も隊長のアニア以外は普通の軍人ですし、住民に手を出す様な不届き者はいないでしょう」

 この世界の軍人は軍紀がしっかりしているのだろうか。
 しかし、ファビオの奴、何か特殊な性癖を持っているのか? 12-14歳の子供に見守れられて安眠とか、理解に苦しむ。何はともあれ、子供達が傷ついていないようで、よかった。

----------

 聖地カルボノへの移動は順調だった。
 こちらの人数が多いという事もあったのだろうが、少し離れた場所に何度か牛が出たが、向こうから近づいてくる事はなかった。

 聖地の入り口の前で、俺はナバレッテへこの後の予定を説明する。

「それじゃぁ、フェロル村へ子供達をここから送ります」
「え、ここからですか?」

 何も説明していなかったので、ナバレッテ達が驚く。

「はい、ここから私達であればフェロル村へ移動が可能なんです」
「おおー」 

「ただ、皆さんを聖地の中へご案内する事は出来ないので、申し訳有りませんが、ここで1日ほど、待機いただけないでしょうか」

「わかりました、入り口付近で野営をさせていただきます。何かあれば洞窟の中へ逃げ込むので、大丈夫でしょう」

「よろしくお願いします、それじゃ、子供達をこちらに連れてきてください」

 ナバレッテが、フェルロ村の子供達を連れてくる。

「それじゃ、おじさんと一緒にフェロル村に帰ろう」

 そう言って、光のカーテンの前まで案内する。
 
「先に入っているわね」

 そう言って、ひとえとユイカ、浩太、ミントが中に入る。

「順番に2人ずつ入ります。私の横に並んで目をつぶってください。私がいいと言うまで、絶対目を開けないようにしてくださいね」

 背の高い男の子と、顔にそばかすがある赤毛の女の子が、少し緊張した面持ちで俺の隣に並ぶ。

「はい、目をつぶって」

 2人ともぎゅっと目を閉じる。とても素直だ。
 ナバレッテもそうだが、フェロル村の子供達も、できるだけ、この中我が家についての情報は秘匿しておきたい。

「腰を抱えますので、慌てないでください」

 娘と同じくらいの年齢とはいえ、知らないおじさんが腰を抱き寄せるなんて、日本にいたら通報される事案だ。ちゃんと断らないとね。そう思いながら、腰をしっかりと抱き寄せる。

「それじゃ歩き出します。一緒についてきて」

 光のカーテンを一緒に潜る。特に何の抵抗感もなく、玄関に入る。

「その場で反対側を向いてください。目は開けないようにね」

 そう言って、腰を持って軽く回す。2人はそれに合わせて向きを変える。
 俺も回れ右をし、

「はい、また歩き出します」

 もう一度、光のカーテンを潜る。
 今度は軽い抵抗があり、脳内に文字列がイメージとして浮かんでくる。

<<遷移先を選択してください 1.gw_oxigeno_01, 2.gw_carbono_01 >>

 頭の中で、1を選択する。
 すぐさま、抵抗はなくなり、そのまま、フェロル村の聖地にある小屋に入る。

「はい、目を開けていいよ」

「え、こ、ここは?」

 子供達は聞いていたとはいえ、びっくりしているようだ。

「フェロル村の近くにある聖地の小屋だよ」
「は、はい。知っています。お父さんと一度、訪れた事があります」

「外を見てみて」
「はい」

 ドアを開ける。

「間違いなく、フェロル村の聖地です。村が見えます!」

 喜んでくれて何よりです。

「じゃあ、ここでこのまま待っていてください。他の子達も連れてきます」

 そう言って、玄関に戻る。
 戻ったついでに、リビングへ声をかける。

「ひとえー、小屋の中の子供達にお茶でも出してあげてー」
「はーい」

 ナバレッテ達の所へ戻ると、

「本当に、光のカーテンを潜れるんですね」
「はい……あれ、信じていませんでした?」
 
「救世主様とはお聞きしていましたし、疑っていた訳では無いのですが、自分の目で見ると、やはり驚きます。これで、全くの疑いなく、皆様を王都までお連れできます」

 やっと信じてくれたようだ。良かったよ。

「信じてもらえて何よりです。それでは、次の子は……はい、行きましょう」

 こうして、俺はもう2回、往復し、最後にチコとリリィを連れて玄関へ戻った。

----------

「チコはどうする?」
「このまま、ここでお待ちしていてもよろしいでしょうか」

 チコがそう言ったので、リビングに連れて行き、人数分の「折れない傘」をひとえに出してもらった。俺が持ち出した1本も合わせ、4本、すでに家にはあったのだが、追加の4本まではすんなり出てくれた。日を跨ぐと、人数分は出せるのかな?

「じゃぁ、フェロル村へ戻ります。途中、スライムが増えているので、これを使ってください」

 と、絶対折れないと評判の傘を手渡し、使い方を教える。
 何かあれば、リリィに対応をしてもらおう。

 死に戻って、家族を迎えに出発したのが一昨日。
 ほんの一昨日の出来事なんだが、小屋を出て見えた景色は随分久しぶりな気がする。それだけ濃密な2日間だったんだな。

 階段を降り林に入ると、早速スライムの洗礼がある。

「リリィ!」

 リリィのすぐ後ろを歩いていた女の子が悲鳴をあげる。

「うりゃ!」

 スライムを、リリィが殴りつける。
 すると、リリィに触れた瞬間、スライムが爆散する。

「へっ?」

 子供達が、口を大きく開けて、固まる。

「大丈夫、スライムなんてどうって事ないから」

 満面の笑みを浮かべて、子供達を安心させる。

「すごいや! リリィ、本当は強かったんだね」
「昨日、すぐ飲み込まれちゃっていたから、弱いのかなって思ってた」

「ガーン」

 リリィが、昭和世代のような感じでショックを受けていた。
 昨日の『夜のモノ』は、リリィが倒したんだけどなぁ……可哀想に。

 その後も、リリィに当たって爆散したり、傘にあたり跳ね返った所をリリィに殴られ爆散したりと、スライムが、俺の知っていたスライムっぽく雑魚キャラと成り果て、特にトラブルもなく、林の道を抜けた。

「はい、このままフェロル村まで行っちゃいましょう!」

 それから30分。
 本当に何事もなく、フェロル村に到着した。

----------

 リリィが大きな声で開門を要求すると、門はすぐ開いた。
 門を開けてくれたのは初老の男性で、あとからルカスの父だとリリィに教えてもらった。ルカスの父が村の中央まで俺たちが戻った事を伝えに行き、少し待つと、村長が全速力で走ってきた……

「救世主様、リリアナ様、よくご無事で」
「はい、お陰様で無事に戻る事ができました」

「でも、なんで裏門から? 正門から南へ向かったはずなのに……」
「そこは救世主って事で……」
「わ、わかりました」

「あと、子供達もお連れしました」
「はい、ありがと……」

「ヘマ! ヘマー!」
「マイテ! よく無事で!」

 遠くから、子供達の両親だろう。何人もの村人が、これまた全速力で走ってきて、子供達を抱きしめた。さらに、その後ろから、どんどん村人が集まってくる。

「ありがとうございます。救世主様、本当にありがとうございます」
「あ、私は本当に何もしていません、感謝ならリリアナ様に……」

 面倒なので、リリィを生贄に差し出す。

「リリアナ様、本当に感謝を。フェロル村は、リリアナ様に忠誠を……」

 とうとう、村長以下、集まった面々が膝を付き、頭を垂れる。

「あ、いや、そんな、困ります。確かに私は王族ですが、できれば、今まで通り、リリィ……と」

 とりあえず、この村としては一件落着。よかったな。

「村長……」
「はい」

 俺は最後の事務処理と村長に路銀として貰っていた金額と同額の金貨を渡す。

「本当に助かりました。おかげで私も家族と合流する事ができました」
「いや、これは子供達を救っていただいた報酬として差し上げたもので……」
「大丈夫です。色々あって、必要経費が全部捻出できたので、不要になりました」

 返すと言うより、いらなくなったという事を強調する。

「あと、カサルさん」

 神の社の僧侶、禿頭のカサルさんにもお礼を伝え、

「刀については、このまま戴いてしまってもよろしいでしょうか? 必要があれば、お金を支払いますが……」
「いえ、それはそのままお持ちください。きっと救世主様に使っていただくために、あの刀はあったのだと思います」
「わかりました、大切に使わせていただきます」

 主に、ひとえが使う事になりそうだけど。

 その後、情報共有にと、村の人たちに、この2日間の話を簡単に説明する。ただ、ファビオとアニアの最後の悪あがきについては、割愛しておく。無駄な争いに巻き込みたくないし。

「そうですか、『夜のモノ』が出ましたか……」

「はい、ただオーレンセの場合、門を開けてしまったのが問題だったようです。魔物の出現頻度もかなり上昇しているようですので、くれぐれも外出の際はお気をつけください」

「ご忠告、ありがとうございます」

「私たちも、王都には向かいますが、また戻って来ますので、その時は宜しくお願いします」
「はい、今後ともよろしくおねがいします」

 こうして、俺は、たった2日間ではあったが、この村からの依頼であった子供達をファビオ達から救出し連れ帰るというクエストを終了した。家族と合流するついで・・・だったし、冒険者ギルドも出て来ない。その上、経験値も報酬も手に入らない冒険だったが、俺は生まれて初めて、異世界を相手に、冒険をした……そんな満足感を密かに感じていた。

 あ、チコについては、ルカスの父と村長に、うちで預かる旨、了解を取ったので、もう大丈夫。これで浩太も安心して、Boy meets girl の道を邁進できるんじゃないかな。 
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