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第6章 Call your name
68.リリアナ・ヒメノ
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「ママ、行くよ!」
「オーケー!」
ひとえのトランシーバーからユイカの声が響く。
ひとえが腕を上げると、外壁から王宮屋上へライトが当たる。
その光で、リリィに気がついていなかった人々も、光の先で踊るリリィの姿に気がつく。やがて騎士が、兵士が、市民が、リリィだけを見つめ流ようになっていった。
「な、何だ、何をする気だ……おい! 止めろ! 止めろ!」
マシアスが必死に叫んでいるが、音楽に打ち消され、誰も動かない。座り込んでいるファビオも顔だけを後ろに向け、歪んだ顔でリリィを凝視している。
「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」
「これは……ユイカの声か?」
今度は、曲のリズムに合わせ、ユイカの声が広場中、響き渡る。すると……
「「「「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」」」」
広場の中からも、複数の声がこれに応えるように広場中で響き始めた。
「こ、これは……」
「ロラさんのお父さんが抱える騎士団に協力してもらったの」
そして……
♪
さあ、立ち上がれ、今!
♪
広場中にリリィの声が響いた。この曲は確か……動画サイトの歌い手さんのアルバム曲? 娘が滅茶苦茶良い曲だからと無理矢理聞かされていた……確か……「Call your name」!
♪
遠く響く 鐘の音を背に
君は歩く いつも一人で
流れる涙を 力に変えて
さあここで 問いかけるんだ
一人じゃないさ、ほら
Call your name, call your name to stand here.
Because I believe that you still fight.
Call your name, call your name to stand here.
You, because I’m sure there is surely the force. I believe.
♪
アップテンポのリズムに乗って、リリィが歌い切る。間奏が続き……
「「「「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」」」」
「お義父さん、私もやっていいですか?」
「いいよ」
チコだけでなく、広場に集まっていた兵士や騎士、市民も声を出し始めた。
「これは……」
「ふふ、ユイカの作戦、成功!」
ユイカのアイドル好き……役に立つじゃん!
そして、間奏が終わり……
♪
出会い、別れ 繰り返す日々
君は歌う 愛の歌を
流れる涙よ 笑顔に代われ
さあここで 届かせるんだ
まだ、終わりはしない
Call your name, call your name to stand here.
Because I believe that you still fight.
Call your name, call your name to stand here.
You, because I’m sure there is surely the force. I believe.
♪
2番をリリィが歌った。するとリリィの両サイドに……
「あれは……ロラさんか! あと、フェロル村の子供達? え? エレナ? イネスさん?」
「そう、ユイカが集めちゃったの、多分、ギリギリまで特訓していたはず」
バラバラと屋上の上に人が出てきて……リリィと一緒に、踊ってるねぇ……
「お義父さん、私も行きたい」
「いいわ、チコ。待ってなさい」
ひとえが誰かに合図を送ると……巨漢の甲冑を着込んだ男が走ってやってきた。
「すみません、この子もお願いします」
「わかりました!」
「ユイカ、チコもそっちに行くわ! オーバー」
「オーケイ、間奏をつなぐね!」
巨漢の男はチコを抱き上げ、広場を迂回するように走って行った。
「今のは?」
「ロラのお兄さん」
どうりで大きい。
ダン!
突然、音楽が鳴り止む。だが、すぐにユイカの声が広場に響きわたる。
「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」
その声に合わせて屋上にいた全員が頭上に手を挙げ、リズムをとって拍手をする……それはやがて広場中に拡がり、
「「「「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」」」」
熱狂的な叫びと拍手は、やがて群衆が一つの生き物にもなったような一体感を生み出した。
「チコ、到着! 最後、いくわよ!」
ユイカの声がトランシーバーから聞こえ、音楽が再び始まった。屋上にチコが並び、リリィの横に立つ。
それは、少しスローなテンポ。静かな音楽、そこに乗るリリィの囁くような歌声、両サイドに立つチコやロラ達は、拳を天に掲げ、リズムを取る。
♪
If not forget your dreams ,
your voice will surely receive .
I also stand here ,
I will continue to cry and believe in you
♪
そして、音楽は盛り上がり、リリィは叫び、拳を天に突き出す。
♪
さあ、立ち上がれ、今!
Call your name, call your name to stand here.
Because I believe that you still fight.
Call your name, call your name to stand here.
You, because I’m sure there is surely the force. I believe.
♪
激しく、そしてどこか切ないリリィの歌が終わり、音楽は後奏に入る。
「あなた、走るわよ」
「え?」
俺は突然、ひとえに腕を掴まれ走らされた。俺を取り囲んでいた騎士は、腑抜けのように、全く動かない。走りながら、屋上を見上げるとリリィとユイカがこちらを見ている。
「ママ、降りるわ!」
そう言って、リリィとユイカが飛び降りた。
王宮の両サイドから、浩太のミントが寄ってくる。
音楽が鳴り止み、静寂が戻る。
飛び降りたリリィはすぐさま、玄関の正面に立ち、その後ろに俺たち家族が並んだ。目の前には女王陛下が立っている。リリィは一度振り返り、俺の姿を確認すると、静かに跪く。リリィの目は今までと違い、力強さが感じられる。
そして、リリィは前を向き、静まり返った広場の隅々まで通るような大きな声で、高らかに宣言する。
「陛下、お待たせいたしました。リリアナ・ヒメノ、たった今聖地より救世主様を連れ戻りました!」
「オーケー!」
ひとえのトランシーバーからユイカの声が響く。
ひとえが腕を上げると、外壁から王宮屋上へライトが当たる。
その光で、リリィに気がついていなかった人々も、光の先で踊るリリィの姿に気がつく。やがて騎士が、兵士が、市民が、リリィだけを見つめ流ようになっていった。
「な、何だ、何をする気だ……おい! 止めろ! 止めろ!」
マシアスが必死に叫んでいるが、音楽に打ち消され、誰も動かない。座り込んでいるファビオも顔だけを後ろに向け、歪んだ顔でリリィを凝視している。
「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」
「これは……ユイカの声か?」
今度は、曲のリズムに合わせ、ユイカの声が広場中、響き渡る。すると……
「「「「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」」」」
広場の中からも、複数の声がこれに応えるように広場中で響き始めた。
「こ、これは……」
「ロラさんのお父さんが抱える騎士団に協力してもらったの」
そして……
♪
さあ、立ち上がれ、今!
♪
広場中にリリィの声が響いた。この曲は確か……動画サイトの歌い手さんのアルバム曲? 娘が滅茶苦茶良い曲だからと無理矢理聞かされていた……確か……「Call your name」!
♪
遠く響く 鐘の音を背に
君は歩く いつも一人で
流れる涙を 力に変えて
さあここで 問いかけるんだ
一人じゃないさ、ほら
Call your name, call your name to stand here.
Because I believe that you still fight.
Call your name, call your name to stand here.
You, because I’m sure there is surely the force. I believe.
♪
アップテンポのリズムに乗って、リリィが歌い切る。間奏が続き……
「「「「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」」」」
「お義父さん、私もやっていいですか?」
「いいよ」
チコだけでなく、広場に集まっていた兵士や騎士、市民も声を出し始めた。
「これは……」
「ふふ、ユイカの作戦、成功!」
ユイカのアイドル好き……役に立つじゃん!
そして、間奏が終わり……
♪
出会い、別れ 繰り返す日々
君は歌う 愛の歌を
流れる涙よ 笑顔に代われ
さあここで 届かせるんだ
まだ、終わりはしない
Call your name, call your name to stand here.
Because I believe that you still fight.
Call your name, call your name to stand here.
You, because I’m sure there is surely the force. I believe.
♪
2番をリリィが歌った。するとリリィの両サイドに……
「あれは……ロラさんか! あと、フェロル村の子供達? え? エレナ? イネスさん?」
「そう、ユイカが集めちゃったの、多分、ギリギリまで特訓していたはず」
バラバラと屋上の上に人が出てきて……リリィと一緒に、踊ってるねぇ……
「お義父さん、私も行きたい」
「いいわ、チコ。待ってなさい」
ひとえが誰かに合図を送ると……巨漢の甲冑を着込んだ男が走ってやってきた。
「すみません、この子もお願いします」
「わかりました!」
「ユイカ、チコもそっちに行くわ! オーバー」
「オーケイ、間奏をつなぐね!」
巨漢の男はチコを抱き上げ、広場を迂回するように走って行った。
「今のは?」
「ロラのお兄さん」
どうりで大きい。
ダン!
突然、音楽が鳴り止む。だが、すぐにユイカの声が広場に響きわたる。
「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」
その声に合わせて屋上にいた全員が頭上に手を挙げ、リズムをとって拍手をする……それはやがて広場中に拡がり、
「「「「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」」」」
熱狂的な叫びと拍手は、やがて群衆が一つの生き物にもなったような一体感を生み出した。
「チコ、到着! 最後、いくわよ!」
ユイカの声がトランシーバーから聞こえ、音楽が再び始まった。屋上にチコが並び、リリィの横に立つ。
それは、少しスローなテンポ。静かな音楽、そこに乗るリリィの囁くような歌声、両サイドに立つチコやロラ達は、拳を天に掲げ、リズムを取る。
♪
If not forget your dreams ,
your voice will surely receive .
I also stand here ,
I will continue to cry and believe in you
♪
そして、音楽は盛り上がり、リリィは叫び、拳を天に突き出す。
♪
さあ、立ち上がれ、今!
Call your name, call your name to stand here.
Because I believe that you still fight.
Call your name, call your name to stand here.
You, because I’m sure there is surely the force. I believe.
♪
激しく、そしてどこか切ないリリィの歌が終わり、音楽は後奏に入る。
「あなた、走るわよ」
「え?」
俺は突然、ひとえに腕を掴まれ走らされた。俺を取り囲んでいた騎士は、腑抜けのように、全く動かない。走りながら、屋上を見上げるとリリィとユイカがこちらを見ている。
「ママ、降りるわ!」
そう言って、リリィとユイカが飛び降りた。
王宮の両サイドから、浩太のミントが寄ってくる。
音楽が鳴り止み、静寂が戻る。
飛び降りたリリィはすぐさま、玄関の正面に立ち、その後ろに俺たち家族が並んだ。目の前には女王陛下が立っている。リリィは一度振り返り、俺の姿を確認すると、静かに跪く。リリィの目は今までと違い、力強さが感じられる。
そして、リリィは前を向き、静まり返った広場の隅々まで通るような大きな声で、高らかに宣言する。
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