異世界にお引越し! - 訳あり物件でした -

でもん

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第6章 Call your name

67.デビュー

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===== Hitoe =====

 昨日の夕方戻ってきたノベナの前の野営地で私はトランシーバーを片手に合図を待っていた。そこへユイカから連絡が入る。

「ママ、ごめーん! 少し遅くなったけど、準備オッケー! カウントダウンで行くよ! オーバー!」
「了解、気をつけてね。10分でそっちまで行くから! オーバー!」
「はーい、それじゃ5からね! 5、4、3、2……」

 トランシーバーから大音量の音が響き渡った。

「前進!」

 その音に合わせ、ナバレッテに指示を出す。
 野営地で寛いでいるように見せていたナバレッテの部隊とロラの騎士団が一斉に門に向かって走り出した。私も走りながら周りに指示を出す。

「予定通り、車を確保次第、投稿しなさい!」
「了解です! 奥様!」

 こちらの動きに数瞬遅れて、ノベナ前で展開していた兵士達も動き出した。だが、どうも動きが鈍い。

 結局、300mはあった彼我の距離を詰めたタイミングでも、敵側は準備ができていなかった。そして、一人の兵士だけが先頭を走る私に向かってきて、極端にゆっくりした速度で剣を振り下ろしてきた。さすがにこれはおかしいわね。

「救世主様、門の内側の乗り物はそのままになっています。こちら側の兵士は薬で動きを鈍らせてありますのでご安心を……」

 立ち止まり、振り下ろす剣をじっと見つめていると、その兵士はそう言い残し、

「うわーっ」

 と叫んで、勝手に転がってしまった。どうやら味方はロラさんの家だけじゃないみたいね。

「このまま門の中へ入るわ! ナバレッテ、門の内側で待機!」
「はい!」

 門の中に入ると、先日停めた車が門の横の塀に沿って、先ほどの兵士が言う通り、そのまま置いてあった。

 私は車に飛び乗る。
 鍵はカズトが持って行ってしまっていたので、スペアキーを自宅に戻った際に買っておいた。あの神達が準備したので心配だったが、これで……

「よし!」

 一発でエンジンがかかった!

 キキー!

 タイヤを軋ませながら車の方向を変える。

「ナバレッテさん! 後は頼みます!」
「はい! 王宮までは、ひたすらこの道をまっすぐです!」

 私はアクセルを全開に踏み込んだ。

 多くの市民が王宮に集まっているのか、人通りが全くない。ノベナの門からアクセルを全開に走っていたら、すぐ次の門がやってきた。門は開門され、周りに人の気配は……あ、騎士が二人門の両サイドに……二人の騎士は剣を胸元にあて、私に騎士の礼を送ってくれた。ロラが手配してくれたモラン家のものだろう。

 次の門でも、その次の門でも同様の光景が続いた……

===== Main =====

 広場に鳴り響いたのは、音楽だった。
 まるでライブ会場のような大音量でアップテンポの音楽が鳴り響く。

 ドラム、ギター、ベース、キーボード……これはどう考えても、俺たちの世界の音楽だろう……どこか聞いたことがある曲だから間違いない。

「お義父さん、これは!」
「たぶん、ひとえ達だ!」

 チコが俺の耳元で叫ぶ。そのくらいじゃないと聞き取れない。周りではあまりの事に腰を抜かすもの、耳を塞ぐもの……

「なんだ! これは何だ! マシアス! マシアス!」

 ファビオも喚いている。マシアスも呆然と辺りを見回している!

 ダン!

 数分にわたり鳴り響いた音楽も、最後にドラムの音が鳴り響き、静寂を取り戻した。

「あ、終わった?」

 耳を塞いでいた人達も耳から手を離す。だが、そう思ったのも束の間、また大音量で次の曲がかかった。

「おい! これを終わらせろ!」

 ファビオがそばにいた騎士に指示を出す。

「は、はい! お前達、すぐこの音を終わらせろ!」

 指示を出された騎士は周りのものにもその指示を伝えたが、全員、オロオロしてどうしたら良いのか分かっていない。ファビオの部下だけでなく、その周りでも兵士や騎士がウロウロ動き始めていた。そして……

 突然、俺の身体が後ろから誰かに抱きすくめられる。

「お待たせ」
 
 刀を片手にした最愛の妻がそこにいた。

----------

 ひとえの存在はすぐ周りの騎士達も気がつく。

「あ、ど、どこから!」
「そこの門から……」

 ひとえが差す方向は人垣が割れており、その奥に懐かしの車が止まっている。

「お、おい、こいつも捕らえろ!」

 音楽が鳴り響く中、ファビオの指示で騎士が剣を抜き襲いかかるが……ひとえは、その剣を破壊し、刀で甲冑を切り裂いた。血が出ていないので、身体には達していないようだが……これを見て、騎士達が慌てて下がる。

 その様子を確認したあと、ひとえはファビオを睨みつけ一歩近づく……

「ヒィ……」

 ファビオは後ろに数歩下がり、そのまま座り込んでしまった。股間の辺りがはっきりと解るほど、湿ってきた。その姿を一瞥してひとえはトランシーバーを取り出した。

「ユイカ、こっちは終わったわ オーバー」

===== Yuika =====

 ママから連絡が入った。いよいよね。
 私は今流れている音楽の音を徐々に絞り込む……

「リリィ、いいわね」
「はい!」

 そして、私は次の曲を流し始め、浩太に指で合図を送った。

===== Kota =====

 僕はお姉ちゃんの合図を確認し、屋上から地面を見る。

「ミント、やるよ!」
「わかった!」

 僕とミントはお互い王宮の端と端に移動し、用意していた垂れ幕を持って……

「怖くない……怖くない……怖くない……怖くない!」

 王宮の屋上から飛び降りた。

===== Main =====

 ひとえがユイカに送った合図で曲が一度静かになり、3曲目となる曲が流れ始めた。そしてこれまでと違うのは……

「何だアレは……」

 王宮の屋上から玄関の両サイドに2枚の大きい白い幕が垂れ下がった。その先端をミントと浩太が持っている。あいつら、幕を持って屋上から飛び降りやがったな。そして、今度は屋上に縦2メートルくらいの白い横断幕が上がる。その中央には……

「リリィか?」

 そこには音楽に合わせテンポを取るリリィの姿があった。
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