57 / 59
8.エピローグ
(5)
しおりを挟む
*
客室の廊下の床も、さっきまでのレストランやフロントとは違う色合いではあるが、ふかふかと気持ちのいいカーペットになっていた。
「ここみたいだな」
亮也が予約してくれていた部屋につくと、ルームキーを通してドアを開けて中に入る。
ルームキーのカードを入り口入ってすぐのキーケースに差し込めば、照明で照らされた広々とした部屋が視界に飛び込んだ。
キングサイズのダブルベッドに、座り心地の良さそうなソファー、大型のテレビ。
「うわぁ~!」
そして私は思わず窓の方へ駆け寄り、目の前に広がる光景に見入っていた。
入り口から入った先、正面に見える窓からは、私たちの地元の夜景を堪能することができる。
亮也のマンションの部屋から見えるきらびやかな都会の夜景とはまた違い、都会ほど眩しくはないものの幻想的な空間を作り出している。
「気に入った?」
「うん。とっても」
私に続いて窓の方へと歩いてくる亮也にそうこたえるのと同時に、私は背後から亮也に抱きしめられていた。
「それなら良かった。夜はまだ始まったばかりだし、どうする? これから」
そう聞かれて、思わずドキンと胸が飛び跳ねた。
「ど、どうって……?」
平然を装って亮也の方へ振り返ろうとするも、さっきも視界に入ったキングサイズのベッドが今度は異様なくらいに存在感を増して視界に入ってきて、余計にドキドキさせられる。
亮也には深い意味はなかったのかもしれないけれど、思わず私はこのあとの展開を考えてしまった。
私が高校生の頃は、亮也とはキスまではしていた記憶はあるものの、その先には進んでいなかった。
私の記憶が戻ってからも、ずっと亮也は忙しくしていたこともあって、想いを通わせたとはいえなかなかそんな雰囲気にはならなかった。
だから、こうして大人になって恋人としてゆっくり二人で過ごす夜というのは、実は今夜が初めてなのだ。
うわぁ、どうしよう。考えれば考えるほど緊張してくるよ……。
「紗和……?」
「は、はい……っ」
私がドキドキし過ぎて固まってしまっていたからだろう。
不思議そうにかけられた亮也の声に、過剰なくらいに反応してしまった。
そんな私を見て、おかしそうに笑う亮也。
「可愛い。何、期待してるの?」
「……え、っと。そういうんじゃ、なくて……」
「そういうのって?」
色っぽい声で囁かれると同時に私の顎を持ち上げられて、至近距離で見つめ合う。
そして、次の瞬間には私の唇は亮也のそれによって塞がれていた。
何となくだけど私の考えていたことは亮也にはお見通しで、それをわかってて聞いてきてるんだろうと思った。
本当にこういうときだけ亮也は意地悪だ。普段はすごく優しいのに。
「怒らないでよ。俺も、紗和と同じ気持ちだから」
「も、もう……っ!」
唇が離れた瞬間に囁かれた言葉に、思わず頬が熱くなる。
けれど、すぐにまた私の唇は塞がれてしまった。
少し唇が離れる度に吸い付くように繰り返される口づけを何度も繰り返しているうちに、私の思考はいとも簡単に奪われてしまう。
それはだんだんと触れ合うだけではもどかしくなってきて、深いものへと変わっていった。
キスに頭が溶かされそうになったところで、亮也は唇を離した。
「俺、そろそろ止まらなくなりそうだけど、シャワー浴びたい?」
「あ……うん」
このまま亮也とその先まで進んでしまうのかなと思ったけれど、できるならシャワーは浴びたい。
一日動き回ったあとだし……。
「じゃあ、先、浴びてきていいよ」
「う、うん……」
目の前にはいつも以上に色っぽい亮也の顔があって、先程までの濃厚なキスを思い返してすごく恥ずかしくなってしまった。
*
シャワーを浴びたあと、大きなベッドの端に座って夜景を見ながら亮也のことを待っていると、少しして私とお揃いのバスローブを身にまとった亮也が浴室から戻ってきた。
亮也が私のすぐ隣に腰を下ろしたことで、触れてなくてもシャワーで上昇した亮也の体温が私にまで伝わってくる。
亮也の手に右手を重ねると、私はまだ馴れない感触のある左手の薬指を私たちの目の前にかざす。
「綺麗……」
夕陽に照らされる思い出の観覧車の中で、亮也からもらったキラリと輝くダイヤの指輪だ。
亮也に身体を預けると、亮也もそんな私に寄りかかってくる。
「亮也、今日は本当にありがとう。すごく幸せな日になったよ。いつの間にこんなに用意してくれてたの?」
私の記憶が戻ってからまだ二週間が過ぎたところだ。
しかもその間、亮也の仕事はてんこ盛りだったというのに、これだけのデートを企画して、予約も入れて、さらには婚約指輪まで用意してくれていたんだ。
とてもじゃないけれど、たった二週間で一から用意したとは思えない。
客室の廊下の床も、さっきまでのレストランやフロントとは違う色合いではあるが、ふかふかと気持ちのいいカーペットになっていた。
「ここみたいだな」
亮也が予約してくれていた部屋につくと、ルームキーを通してドアを開けて中に入る。
ルームキーのカードを入り口入ってすぐのキーケースに差し込めば、照明で照らされた広々とした部屋が視界に飛び込んだ。
キングサイズのダブルベッドに、座り心地の良さそうなソファー、大型のテレビ。
「うわぁ~!」
そして私は思わず窓の方へ駆け寄り、目の前に広がる光景に見入っていた。
入り口から入った先、正面に見える窓からは、私たちの地元の夜景を堪能することができる。
亮也のマンションの部屋から見えるきらびやかな都会の夜景とはまた違い、都会ほど眩しくはないものの幻想的な空間を作り出している。
「気に入った?」
「うん。とっても」
私に続いて窓の方へと歩いてくる亮也にそうこたえるのと同時に、私は背後から亮也に抱きしめられていた。
「それなら良かった。夜はまだ始まったばかりだし、どうする? これから」
そう聞かれて、思わずドキンと胸が飛び跳ねた。
「ど、どうって……?」
平然を装って亮也の方へ振り返ろうとするも、さっきも視界に入ったキングサイズのベッドが今度は異様なくらいに存在感を増して視界に入ってきて、余計にドキドキさせられる。
亮也には深い意味はなかったのかもしれないけれど、思わず私はこのあとの展開を考えてしまった。
私が高校生の頃は、亮也とはキスまではしていた記憶はあるものの、その先には進んでいなかった。
私の記憶が戻ってからも、ずっと亮也は忙しくしていたこともあって、想いを通わせたとはいえなかなかそんな雰囲気にはならなかった。
だから、こうして大人になって恋人としてゆっくり二人で過ごす夜というのは、実は今夜が初めてなのだ。
うわぁ、どうしよう。考えれば考えるほど緊張してくるよ……。
「紗和……?」
「は、はい……っ」
私がドキドキし過ぎて固まってしまっていたからだろう。
不思議そうにかけられた亮也の声に、過剰なくらいに反応してしまった。
そんな私を見て、おかしそうに笑う亮也。
「可愛い。何、期待してるの?」
「……え、っと。そういうんじゃ、なくて……」
「そういうのって?」
色っぽい声で囁かれると同時に私の顎を持ち上げられて、至近距離で見つめ合う。
そして、次の瞬間には私の唇は亮也のそれによって塞がれていた。
何となくだけど私の考えていたことは亮也にはお見通しで、それをわかってて聞いてきてるんだろうと思った。
本当にこういうときだけ亮也は意地悪だ。普段はすごく優しいのに。
「怒らないでよ。俺も、紗和と同じ気持ちだから」
「も、もう……っ!」
唇が離れた瞬間に囁かれた言葉に、思わず頬が熱くなる。
けれど、すぐにまた私の唇は塞がれてしまった。
少し唇が離れる度に吸い付くように繰り返される口づけを何度も繰り返しているうちに、私の思考はいとも簡単に奪われてしまう。
それはだんだんと触れ合うだけではもどかしくなってきて、深いものへと変わっていった。
キスに頭が溶かされそうになったところで、亮也は唇を離した。
「俺、そろそろ止まらなくなりそうだけど、シャワー浴びたい?」
「あ……うん」
このまま亮也とその先まで進んでしまうのかなと思ったけれど、できるならシャワーは浴びたい。
一日動き回ったあとだし……。
「じゃあ、先、浴びてきていいよ」
「う、うん……」
目の前にはいつも以上に色っぽい亮也の顔があって、先程までの濃厚なキスを思い返してすごく恥ずかしくなってしまった。
*
シャワーを浴びたあと、大きなベッドの端に座って夜景を見ながら亮也のことを待っていると、少しして私とお揃いのバスローブを身にまとった亮也が浴室から戻ってきた。
亮也が私のすぐ隣に腰を下ろしたことで、触れてなくてもシャワーで上昇した亮也の体温が私にまで伝わってくる。
亮也の手に右手を重ねると、私はまだ馴れない感触のある左手の薬指を私たちの目の前にかざす。
「綺麗……」
夕陽に照らされる思い出の観覧車の中で、亮也からもらったキラリと輝くダイヤの指輪だ。
亮也に身体を預けると、亮也もそんな私に寄りかかってくる。
「亮也、今日は本当にありがとう。すごく幸せな日になったよ。いつの間にこんなに用意してくれてたの?」
私の記憶が戻ってからまだ二週間が過ぎたところだ。
しかもその間、亮也の仕事はてんこ盛りだったというのに、これだけのデートを企画して、予約も入れて、さらには婚約指輪まで用意してくれていたんだ。
とてもじゃないけれど、たった二週間で一から用意したとは思えない。
14
あなたにおすすめの小説
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。
俺様系和服社長の家庭教師になりました。
蝶野ともえ
恋愛
一葉 翠(いつは すい)は、とある高級ブランドの店員。
ある日、常連である和服のイケメン社長に接客を指名されてしまう。
冷泉 色 (れいぜん しき) 高級和食店や呉服屋を国内に展開する大手企業の社長。普段は人当たりが良いが、オフや自分の会社に戻ると一気に俺様になる。
「君に一目惚れした。バックではなく、おまえ自身と取引をさせろ。」
それから気づくと色の家庭教師になることに!?
期間限定の生徒と先生の関係から、お互いに気持ちが変わっていって、、、
俺様社長に翻弄される日々がスタートした。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
溺愛彼氏は消防士!?
すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。
「別れよう。」
その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。
飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。
「男ならキスの先をは期待させないとな。」
「俺とこの先・・・してみない?」
「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」
私の身は持つの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。
※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
そのイケメンエリート軍団の異色男子
ジャスティン・レスターの意外なお話
矢代木の実(23歳)
借金地獄の元カレから身をひそめるため
友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ
今はネットカフェを放浪中
「もしかして、君って、家出少女??」
ある日、ビルの駐車場をうろついてたら
金髪のイケメンの外人さんに
声をかけられました
「寝るとこないないなら、俺ん家に来る?
あ、俺は、ここの27階で働いてる
ジャスティンって言うんだ」
「………あ、でも」
「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は…
女の子には興味はないから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる