初恋*幼なじみ~歪に絡み合う想いの四重奏~

美和優希

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*第3章*

困惑のキス(2)

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「ちょうど健くんが来た直後くらいだったかしら。健くんも来てるよって真理恵ちゃんに言ったんだけどね」

「二人の邪魔したら悪いかな、って思って」


 お母さんの言葉に続けて言われた真理恵の言葉に、ドキリとする。


 もう、真理恵ったら!

 お母さんには恥ずかしくて、まだ健と付き合ってる、とまでは話してないのに!


 見ると、真理恵はニヤニヤと意地悪く笑ってこちらを見ている。


「そういや、健は?」

「今上で寝てる」

「は? 何あいつ、未夢の部屋に寝に来たの!?」

「そういうわけじゃないと思うよ」


 こっちは遠慮してやったのに、という真理恵の心の声が聞こえて来そうだ。


「きっと疲れてるのよ。健くんのお母さんも、年末年始は忙しいって言ってたし、何ならまた泊まってもらったらいいじゃない。じゃあ、お母さんは邪魔になるし、洗濯物でも片付けてくるわ」


 ふふふ、と笑いながら去っていくお母さんは、よっぽど真理恵と話して楽しかったのか、見てわかるくらいに上機嫌だった。


「未夢もドーナツ食べる?」


 真理恵は箱からドーナツを取り出して、新しいお皿に乗せてこちらに渡してくれる。きっと真理恵が手土産で持ってきてくれたものなのだろう。


「ありがとう」


 プレーンのオールドファッションドーナツに、ハニーシロップのかかったものだ。

 お母さんの使っていた食器を端に寄せて、私も同じ紅茶を入れると、真理恵の向かいの席に座る。


「あ、この際言っとくけど、未夢のお母さん、未夢と健のこと知ってるみたいだったよ」

「えぇえっ!?」


 な、なんで!?

 どうしてバレちゃったんだろう。

 何も悪いことをしているわけではないのに、途端にいたずらが見つかった子どものようにソワソワとしてしまう。


「そりゃ、見てても明白じゃん。私も和人も遠慮して来てないのに対して、明らかに健だけ異様に未夢の家に出入りしてるんだから」

「えー」


 確かにそうだ。真理恵はこうしてちょくちょく来てくれるけれど、和人は私が健と付き合いはじめた頃からパタリと来なくなった。

 それ自体は寂しいことだけど、これで良かったのかな、と思う部分もある。


「まっ、そうじゃなくても知ってたみたいよ。健から聞いたらしいから」

「えぇえっ!?」


 何それ! それこそ聞いてない!

 いつの間に健はそんな話をお母さんとしていたのだろう?


「健はそういうところはちゃんとしてるからね。でも、未夢と付き合ってるって知ってて、健に泊まってもらえばいいって言う未夢のお母さんの発言には、さすがに驚いたよ」

「そ、そう……?」

「あはは! 未夢らしい反応ありがとう。その反応からすると、まだ健はそこまでしてないってことね」

「?」

「いいのいいの。こっちの話。あー、こりゃ健も相当頑張らないと」


 真理恵はひとしきり笑うと、食べかけだったドーナツを食べて、紅茶を一口飲む。


「真理恵は、和人とどう?」


 二人の間に流れる空気から、私は自然とそう尋ねられていた。

 同時に、和人のことを口にしても落ち着いていられる自分に、確実に前に進めてることを実感できて、内心ホッとする。


「どう、なんだろうね。上手くいってるんじゃない?」

「……え?」


 だけど、少しまゆを下げて、寂しそうに言う真理恵に思わず胸がざわついた。


 まさか、上手くいってない、とか?

 でも、ついこの前のクリスマスの時点では、キスしてたじゃん。


「やだな。そんな顔しないでよ、大丈夫だから! ちょっと最近和人と会えてないから、不安になってるだけ」

「そうなんだ。冬休みとはいえ、和人は部活もあるもんね」


 真理恵は小さく笑うと、今度は何かを思い出したように口を開いた。


「そうそう、今年の年越しはどうする?」


 あまりに突然の切り替えに驚くものの、いつもの真理恵に戻ったことに内心ホッとする。

 年越しは、毎年私たち四人は私の部屋で過ごして、翌日の元旦の午前中にみんなで初詣に行くのが恒例だ。


「もうすぐだもんね、真理恵たちはどうするの?」

「健が何て言うかわからないけど、私と和人は年越しは今までと同じように越したいなって思ってるよ」

「そうなの?」

「うん。お互いに付き合い出してからはさ、何だかんだで前みたいに過ごすことなくなっちゃったな、って思ってて。この前のクリスマスのときも、私が言い出したとはいえ、最後は別行動だったし」

「わかった、健には私から話しておくね」


「いいよ」


 そのとき、真理恵とは違う低い声が返ってきて、声の聞こえた方へとふり向く。

 するといつからそこにいたのか、このリビングダイニングの入り口のところに、健が壁にもたれるように立っていたのだ。


「俺もそれ、賛成な。年越しくらい、たまには昔みたいにみんなで盛り上がろうぜ!」

「じゃあ、決定ね! そうと決まれば、和人に連絡しておかなきゃ」


 真理恵は嬉しそうにスマホを操作する。
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