33 / 61
*第3章*
困惑のキス(2)
しおりを挟む
「ちょうど健くんが来た直後くらいだったかしら。健くんも来てるよって真理恵ちゃんに言ったんだけどね」
「二人の邪魔したら悪いかな、って思って」
お母さんの言葉に続けて言われた真理恵の言葉に、ドキリとする。
もう、真理恵ったら!
お母さんには恥ずかしくて、まだ健と付き合ってる、とまでは話してないのに!
見ると、真理恵はニヤニヤと意地悪く笑ってこちらを見ている。
「そういや、健は?」
「今上で寝てる」
「は? 何あいつ、未夢の部屋に寝に来たの!?」
「そういうわけじゃないと思うよ」
こっちは遠慮してやったのに、という真理恵の心の声が聞こえて来そうだ。
「きっと疲れてるのよ。健くんのお母さんも、年末年始は忙しいって言ってたし、何ならまた泊まってもらったらいいじゃない。じゃあ、お母さんは邪魔になるし、洗濯物でも片付けてくるわ」
ふふふ、と笑いながら去っていくお母さんは、よっぽど真理恵と話して楽しかったのか、見てわかるくらいに上機嫌だった。
「未夢もドーナツ食べる?」
真理恵は箱からドーナツを取り出して、新しいお皿に乗せてこちらに渡してくれる。きっと真理恵が手土産で持ってきてくれたものなのだろう。
「ありがとう」
プレーンのオールドファッションドーナツに、ハニーシロップのかかったものだ。
お母さんの使っていた食器を端に寄せて、私も同じ紅茶を入れると、真理恵の向かいの席に座る。
「あ、この際言っとくけど、未夢のお母さん、未夢と健のこと知ってるみたいだったよ」
「えぇえっ!?」
な、なんで!?
どうしてバレちゃったんだろう。
何も悪いことをしているわけではないのに、途端にいたずらが見つかった子どものようにソワソワとしてしまう。
「そりゃ、見てても明白じゃん。私も和人も遠慮して来てないのに対して、明らかに健だけ異様に未夢の家に出入りしてるんだから」
「えー」
確かにそうだ。真理恵はこうしてちょくちょく来てくれるけれど、和人は私が健と付き合いはじめた頃からパタリと来なくなった。
それ自体は寂しいことだけど、これで良かったのかな、と思う部分もある。
「まっ、そうじゃなくても知ってたみたいよ。健から聞いたらしいから」
「えぇえっ!?」
何それ! それこそ聞いてない!
いつの間に健はそんな話をお母さんとしていたのだろう?
「健はそういうところはちゃんとしてるからね。でも、未夢と付き合ってるって知ってて、健に泊まってもらえばいいって言う未夢のお母さんの発言には、さすがに驚いたよ」
「そ、そう……?」
「あはは! 未夢らしい反応ありがとう。その反応からすると、まだ健はそこまでしてないってことね」
「?」
「いいのいいの。こっちの話。あー、こりゃ健も相当頑張らないと」
真理恵はひとしきり笑うと、食べかけだったドーナツを食べて、紅茶を一口飲む。
「真理恵は、和人とどう?」
二人の間に流れる空気から、私は自然とそう尋ねられていた。
同時に、和人のことを口にしても落ち着いていられる自分に、確実に前に進めてることを実感できて、内心ホッとする。
「どう、なんだろうね。上手くいってるんじゃない?」
「……え?」
だけど、少しまゆを下げて、寂しそうに言う真理恵に思わず胸がざわついた。
まさか、上手くいってない、とか?
でも、ついこの前のクリスマスの時点では、キスしてたじゃん。
「やだな。そんな顔しないでよ、大丈夫だから! ちょっと最近和人と会えてないから、不安になってるだけ」
「そうなんだ。冬休みとはいえ、和人は部活もあるもんね」
真理恵は小さく笑うと、今度は何かを思い出したように口を開いた。
「そうそう、今年の年越しはどうする?」
あまりに突然の切り替えに驚くものの、いつもの真理恵に戻ったことに内心ホッとする。
年越しは、毎年私たち四人は私の部屋で過ごして、翌日の元旦の午前中にみんなで初詣に行くのが恒例だ。
「もうすぐだもんね、真理恵たちはどうするの?」
「健が何て言うかわからないけど、私と和人は年越しは今までと同じように越したいなって思ってるよ」
「そうなの?」
「うん。お互いに付き合い出してからはさ、何だかんだで前みたいに過ごすことなくなっちゃったな、って思ってて。この前のクリスマスのときも、私が言い出したとはいえ、最後は別行動だったし」
「わかった、健には私から話しておくね」
「いいよ」
そのとき、真理恵とは違う低い声が返ってきて、声の聞こえた方へとふり向く。
するといつからそこにいたのか、このリビングダイニングの入り口のところに、健が壁にもたれるように立っていたのだ。
「俺もそれ、賛成な。年越しくらい、たまには昔みたいにみんなで盛り上がろうぜ!」
「じゃあ、決定ね! そうと決まれば、和人に連絡しておかなきゃ」
真理恵は嬉しそうにスマホを操作する。
「二人の邪魔したら悪いかな、って思って」
お母さんの言葉に続けて言われた真理恵の言葉に、ドキリとする。
もう、真理恵ったら!
お母さんには恥ずかしくて、まだ健と付き合ってる、とまでは話してないのに!
見ると、真理恵はニヤニヤと意地悪く笑ってこちらを見ている。
「そういや、健は?」
「今上で寝てる」
「は? 何あいつ、未夢の部屋に寝に来たの!?」
「そういうわけじゃないと思うよ」
こっちは遠慮してやったのに、という真理恵の心の声が聞こえて来そうだ。
「きっと疲れてるのよ。健くんのお母さんも、年末年始は忙しいって言ってたし、何ならまた泊まってもらったらいいじゃない。じゃあ、お母さんは邪魔になるし、洗濯物でも片付けてくるわ」
ふふふ、と笑いながら去っていくお母さんは、よっぽど真理恵と話して楽しかったのか、見てわかるくらいに上機嫌だった。
「未夢もドーナツ食べる?」
真理恵は箱からドーナツを取り出して、新しいお皿に乗せてこちらに渡してくれる。きっと真理恵が手土産で持ってきてくれたものなのだろう。
「ありがとう」
プレーンのオールドファッションドーナツに、ハニーシロップのかかったものだ。
お母さんの使っていた食器を端に寄せて、私も同じ紅茶を入れると、真理恵の向かいの席に座る。
「あ、この際言っとくけど、未夢のお母さん、未夢と健のこと知ってるみたいだったよ」
「えぇえっ!?」
な、なんで!?
どうしてバレちゃったんだろう。
何も悪いことをしているわけではないのに、途端にいたずらが見つかった子どものようにソワソワとしてしまう。
「そりゃ、見てても明白じゃん。私も和人も遠慮して来てないのに対して、明らかに健だけ異様に未夢の家に出入りしてるんだから」
「えー」
確かにそうだ。真理恵はこうしてちょくちょく来てくれるけれど、和人は私が健と付き合いはじめた頃からパタリと来なくなった。
それ自体は寂しいことだけど、これで良かったのかな、と思う部分もある。
「まっ、そうじゃなくても知ってたみたいよ。健から聞いたらしいから」
「えぇえっ!?」
何それ! それこそ聞いてない!
いつの間に健はそんな話をお母さんとしていたのだろう?
「健はそういうところはちゃんとしてるからね。でも、未夢と付き合ってるって知ってて、健に泊まってもらえばいいって言う未夢のお母さんの発言には、さすがに驚いたよ」
「そ、そう……?」
「あはは! 未夢らしい反応ありがとう。その反応からすると、まだ健はそこまでしてないってことね」
「?」
「いいのいいの。こっちの話。あー、こりゃ健も相当頑張らないと」
真理恵はひとしきり笑うと、食べかけだったドーナツを食べて、紅茶を一口飲む。
「真理恵は、和人とどう?」
二人の間に流れる空気から、私は自然とそう尋ねられていた。
同時に、和人のことを口にしても落ち着いていられる自分に、確実に前に進めてることを実感できて、内心ホッとする。
「どう、なんだろうね。上手くいってるんじゃない?」
「……え?」
だけど、少しまゆを下げて、寂しそうに言う真理恵に思わず胸がざわついた。
まさか、上手くいってない、とか?
でも、ついこの前のクリスマスの時点では、キスしてたじゃん。
「やだな。そんな顔しないでよ、大丈夫だから! ちょっと最近和人と会えてないから、不安になってるだけ」
「そうなんだ。冬休みとはいえ、和人は部活もあるもんね」
真理恵は小さく笑うと、今度は何かを思い出したように口を開いた。
「そうそう、今年の年越しはどうする?」
あまりに突然の切り替えに驚くものの、いつもの真理恵に戻ったことに内心ホッとする。
年越しは、毎年私たち四人は私の部屋で過ごして、翌日の元旦の午前中にみんなで初詣に行くのが恒例だ。
「もうすぐだもんね、真理恵たちはどうするの?」
「健が何て言うかわからないけど、私と和人は年越しは今までと同じように越したいなって思ってるよ」
「そうなの?」
「うん。お互いに付き合い出してからはさ、何だかんだで前みたいに過ごすことなくなっちゃったな、って思ってて。この前のクリスマスのときも、私が言い出したとはいえ、最後は別行動だったし」
「わかった、健には私から話しておくね」
「いいよ」
そのとき、真理恵とは違う低い声が返ってきて、声の聞こえた方へとふり向く。
するといつからそこにいたのか、このリビングダイニングの入り口のところに、健が壁にもたれるように立っていたのだ。
「俺もそれ、賛成な。年越しくらい、たまには昔みたいにみんなで盛り上がろうぜ!」
「じゃあ、決定ね! そうと決まれば、和人に連絡しておかなきゃ」
真理恵は嬉しそうにスマホを操作する。
0
あなたにおすすめの小説
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
隣の夫婦 ~離婚する、離婚しない、身近な夫婦の話
紫ゆかり
恋愛
オムニバス形式です。
理解し合って結婚したはずの梓、同級生との再会が思わぬことになる雅美、年下の夫のかつての妻に引け目を感じる千晴、昔の恋の後悔から前向きになれない志織。
大人の女性のストーリーです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる