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*第4章*
不穏の影(3)
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私と和人の家の近くまで来たときだった。
「何で和人が未夢と一緒にいるの?」
どこからともなく真理恵の声が聞こえて、思わずビクリと肩を震わせた。
声の聞こえた方へ視線を向けると、目の前から人影がこちらに歩いてくるのが見える。
ちょうど逆光になっていたためすぐには相手の顔まで確認できなかったけれど、やっぱり真理恵だった。
真理恵の声が聞こえたときに、とっさに和人の手の中から手を引っこ抜いたけれど、彼女の表情は険しいままだ。
さっき聞こえた声もいつもの真理恵よりもずっと刺々しい感じがしたのも、きっと気のせいじゃないだろう。
このままじゃ、和人が要らぬ誤解をかけられてしまう……!
「真理恵、違うの! さっき商店街にノートを買いに行ったとき、男の人に絡まれてた私を、和人が助けてくれたの。それで、そのまま和人と一緒に帰ってきただけで……」
「二人仲良く手を繋いで?」
「それは……」
すぐに和人から手を離したつもりだったけど、真理恵に見られてしまっていたようだ。
幼い頃によく手を繋いでいたことと今私が和人と手を繋ぐこと、同じ手を繋ぐことでも、その意味が全く違うものだということに気づいていたはずなのに、どうして和人の手を離せなかったのだろう。
決して私と和人の関係が変わったわけではないのに、それを上手く伝える言葉が見つからない。
下手に弁解しすぎると、余計に怪しく聞こえてしまう。
「真理恵、やめろよ。未夢は悪くない。これは俺らの問題なんだから、二人で話そう」
私のそばを離れて、和人は真理恵の頭に手を置く。
こういうときの真理恵は、怒って和人の手をはね除けるイメージがあった。
だけど、違った。
真理恵は泣いていた。
真理恵のそばに行った和人の制服の上着をきゅっとつかんで、苦しそうに声も出さずに泣いていた。
「ごめんね、真理恵……」
和人のことを好きになって。
真理恵の気持ちも考えずに和人と手を繋いで、悲しませてしまった。
「未夢、ごめんな。悪いけど、先に帰ってもらえるかな。ここまで帰ってきてたら大丈夫だろ?」
私と和人の家はすぐそばだ。
さっき男性に絡まれたばかりの私を、気づかってくれてるんだと思う。
何気なく繋いだ手を離さずにいてくれたのも、きっと私を安心させるためだったんだろう。
こんなときまで私の心配をさせてしまうなんて、何だか申し訳なくなった。
「……わかった。ありがとう。ごめんね、二人とも」
今は和人には真理恵のそばにいて、二人にできてしまった溝を埋めてほしい。
原因となった私がそんなことを思うなんて、変な話かもしれないけれど、やっぱり二人には笑顔でいてほしい。
私は逃げるように背を向けると、足早に家までの道を歩いた。
私の想いは、大切な二人を傷つけるしかできなくて、私まで泣けてきた。
泣くのは私だけで良かったはずなのに、真理恵のことまで泣かせてしまった。
家の門をくぐるとき、ちらりと遠目に見える和人と真理恵の姿を見ると、暗がりの中、和人が真理恵を抱きしめているように見えた。
少しこぼした涙が、今度は止まらなくなるほどにあふれだした。
「何で和人が未夢と一緒にいるの?」
どこからともなく真理恵の声が聞こえて、思わずビクリと肩を震わせた。
声の聞こえた方へ視線を向けると、目の前から人影がこちらに歩いてくるのが見える。
ちょうど逆光になっていたためすぐには相手の顔まで確認できなかったけれど、やっぱり真理恵だった。
真理恵の声が聞こえたときに、とっさに和人の手の中から手を引っこ抜いたけれど、彼女の表情は険しいままだ。
さっき聞こえた声もいつもの真理恵よりもずっと刺々しい感じがしたのも、きっと気のせいじゃないだろう。
このままじゃ、和人が要らぬ誤解をかけられてしまう……!
「真理恵、違うの! さっき商店街にノートを買いに行ったとき、男の人に絡まれてた私を、和人が助けてくれたの。それで、そのまま和人と一緒に帰ってきただけで……」
「二人仲良く手を繋いで?」
「それは……」
すぐに和人から手を離したつもりだったけど、真理恵に見られてしまっていたようだ。
幼い頃によく手を繋いでいたことと今私が和人と手を繋ぐこと、同じ手を繋ぐことでも、その意味が全く違うものだということに気づいていたはずなのに、どうして和人の手を離せなかったのだろう。
決して私と和人の関係が変わったわけではないのに、それを上手く伝える言葉が見つからない。
下手に弁解しすぎると、余計に怪しく聞こえてしまう。
「真理恵、やめろよ。未夢は悪くない。これは俺らの問題なんだから、二人で話そう」
私のそばを離れて、和人は真理恵の頭に手を置く。
こういうときの真理恵は、怒って和人の手をはね除けるイメージがあった。
だけど、違った。
真理恵は泣いていた。
真理恵のそばに行った和人の制服の上着をきゅっとつかんで、苦しそうに声も出さずに泣いていた。
「ごめんね、真理恵……」
和人のことを好きになって。
真理恵の気持ちも考えずに和人と手を繋いで、悲しませてしまった。
「未夢、ごめんな。悪いけど、先に帰ってもらえるかな。ここまで帰ってきてたら大丈夫だろ?」
私と和人の家はすぐそばだ。
さっき男性に絡まれたばかりの私を、気づかってくれてるんだと思う。
何気なく繋いだ手を離さずにいてくれたのも、きっと私を安心させるためだったんだろう。
こんなときまで私の心配をさせてしまうなんて、何だか申し訳なくなった。
「……わかった。ありがとう。ごめんね、二人とも」
今は和人には真理恵のそばにいて、二人にできてしまった溝を埋めてほしい。
原因となった私がそんなことを思うなんて、変な話かもしれないけれど、やっぱり二人には笑顔でいてほしい。
私は逃げるように背を向けると、足早に家までの道を歩いた。
私の想いは、大切な二人を傷つけるしかできなくて、私まで泣けてきた。
泣くのは私だけで良かったはずなのに、真理恵のことまで泣かせてしまった。
家の門をくぐるとき、ちらりと遠目に見える和人と真理恵の姿を見ると、暗がりの中、和人が真理恵を抱きしめているように見えた。
少しこぼした涙が、今度は止まらなくなるほどにあふれだした。
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