初恋*幼なじみ~歪に絡み合う想いの四重奏~

美和優希

文字の大きさ
44 / 61
*第4章*

不穏の影(2)

しおりを挟む
「でもまぁ、無事で良かった」


 瞬間、私の身体の前に回されたままだった和人の腕にほんの少しの力が加わって、本当に軽くだけど和人に一瞬抱きしめられたような気がした。

 それからすぐに和人は私から身を離した。


「じゃあ、帰ろうか。送ってくよ」

「うん」


 そして、和人は私の手を取って歩き出した。


 和人はちょうど部活帰りだったようだ。

 帰り道でもある商店街の前を通ったときに、偶然私の姿が見えたらしく、心配して来てくれたんだそうだ。


「で、何でこんな時間にこんなところに一人でいたの? 健は?」

「健は今日はバイト。ノートを切らしちゃって、ちょっと外が暗くなってきてたけど買いに出たの」

「そういや、今日か。あいつのバイト」


 どういうわけか私の手は和人の手に握られていて、異様に緊張する。

 昔は普通のことだったけど、少なからず私の和人を見る目が変わってしまったからだろう。

 それに真理恵と和人が付き合いだしてからは、全く和人に触れることってなくなっていたから、罪悪感に似た感情も浮かび上がってくる。


「あ、あのさ、和人。手、なんだけど……」

 
 和人もきっと昔の名残で何となく私と手を繋いでるんだろう。手を繋いでいることを指摘されて、まるでうっかりしていたとばかりの表情を浮かべた。


「え? あ……。嫌?」

「嫌じゃ、ないよ……。でも、」

「嫌じゃないならいいじゃん。たまには」


 え、そういうものなの?

 でも、そんな風に言われてしまったら、私から和人の手を離せなくなってしまった。

 たまにはいいかもって、私も思ってしまったから。


 和人の考えてることは、たまによくわからない。

 この前の年越しのときだって……あ!


 今は和人と二人きりだ。

 今なら、あの年越しの夜のことを和人に聞いてみても良いかもしれない。


 ずっと和人に聞くべきかどうか迷っていたけれど、私が最近気にしすぎておかしくなってるから、この際事実をはっきりさせてもいいのかもしれない。


「あのさ……」

「ん?」

「この前の年越しの夜のことなんだけど、和人、私に何かした?」

「え……?」


 和人は、少し驚いたように目を開いて私を見る。

 もしかして、聞き方がまずかったかな?


「や、和人が変なことしたとか思ってるんじゃないよ! ただあの日、私、眠りが浅かったみたいで、夢の中の出来事かそうでないのかを確認したいっていうか、何て言うか……」


 ああ、もう、これじゃあ自分でも何言ってるのかわからないよ……!

 だけど、和人はそんな私を見てフッと口元を緩める。


「なんだ、そういうこと。大丈夫、何もしてないから」

「え、そうなの?」

「何? 未夢は俺に何かしてほしかったの?」


 私が思わず聞き返した言葉に、和人は意地悪い笑みを浮かべる。


「そういうわけじゃ、ないもん……」


 さらにクククと笑う和人に、まるでからかわれているみたい。

 こんなことになるなら、聞くんじゃなかった。

 恥ずかしいだけじゃん……。


 肌に当たる風は冷たいのに、私の顔は火照って熱い。

 これも和人のせいだ。


 商店街から広い国道の歩道を歩いてちょうど私と和人の会話が途切れた頃、私たちの住む住宅地へと続く細い道に入った。


 いつの間にか辺りはすっかり暗くなっていて、各家の門灯や電信柱の明かりだけで照らされていた。


 何となくお互いに無言になってしまったけれど、いざとなると何を話していいかわからない。

 今まででも、和人と二人でいるときにお互いに何も話してない時間って絶対あったし、今までは大して気にしていなかった。


 だけど、今日は無言の時間が異様に気になって仕方ない。

 きっとそれは、私が和人のことを意識してるからなのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛するということ

緒方宗谷
恋愛
幼馴染みを想う有紀子と陸の物語

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

隣の夫婦 ~離婚する、離婚しない、身近な夫婦の話

紫ゆかり
恋愛
オムニバス形式です。 理解し合って結婚したはずの梓、同級生との再会が思わぬことになる雅美、年下の夫のかつての妻に引け目を感じる千晴、昔の恋の後悔から前向きになれない志織。 大人の女性のストーリーです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...