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*第4章*
不穏の影(1)
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三学期が始まって、早くも一週間が過ぎるけれど、私の気持ちは浮かないままだった。
「うぅ~! 寒っ!」
家の近くの商店街にある文房具屋を出ると、昼間出ていた太陽もすっかり西に沈み、星がポツポツと見えはじめていた。
一月半ばなんだから、寒くて当たり前と言われるかもしれないけれど、あまりに寒いのは身体に堪える。
普段は外が暗くなる時間帯に買い物に出ることは滅多にないんだけど、今日は家で学校の宿題をしていたときにノートを使いきってしまった。
いつもは余分に買ってあるはずなのに、今日に限って完全に切らしてしまっていたんだ。
家までは歩いても十分程度。
完全に真っ暗になってしまう前には帰りたい。
かなり早歩きで進むものの、商店街から抜けようとしたところで、誰かに腕をつかまれて引き留められてしまった。
「……え?」
「嬢ちゃん、一人? 案内してほしいところがあるんだけど、いいかな?」
ふり返ると、栗色ヘアーで派手なアクセサリーを身にまとった二十代くらいの男の人が私の手をつかんでいる。
道に迷っているのか、片手には地図らしきものもあった。
「はい、私でよければ……!」
一瞬、何となく怖そうな見た目に怯みかけたけれど、困ってるなら力になりたい。
私の言葉を聞いて、男性は表情を明るくする。
「マジで~? じゃあちょっとついてきてよ」
「え、あ、あの……っ」
だけど、途端に男性はどういうわけか私の手首をつかんで、私をグイグイと引っ張っていく。
この人、道に迷ってたんだよね?
なのに、何で私が一方的に連れて行かれてるの!?
「あの、どちらに行かれるんですか?」
男性の意図することが読めなくて、思いきって聞いてみると、男性はニヤリとした笑みをこちらに向けた。
「楽しいところだよ。そんなに警戒しなくて大丈夫だから」
「ひゃっ」
その瞬間、男性に腰に手を回されて、思わず震え上がった。
どうしよう……。怖いよ……っ!
そのときだった。
背後から目の前の男性とは違う誰かにグイと肩をつかまれて、私の身体は後ろに傾いた。
「……っ!?」
誰かの身体に背中からぶつかる感触。
私の前に回される、男の人の腕。
もしかして、健?
そんなはずはない。だって、今日のこの時間は、健はバイトのはずだから。
だったら、誰──?
「こいつに気安く触んな」
見えない誰かの存在に、再び恐怖に似た感情があったけれど、低く怒気を含んだ声は私もよく知っている声で、フッと身体の力が抜けていくのを感じた。
「何だ、お前。俺はな、この嬢ちゃんに道案内をだな……」
「道案内が必要なら、俺が代わりにします。別に彼女にこだわる理由はないですよね?」
「ちっ。もういい、彼氏が近くにいたのなら他当たるわ」
男性は吐き捨てるように言うと、そそくさと夜の街の中へと消えていった。
彼氏、っていうわけでもなかったんだけどな……。
でもこの場においては、そう思ってもらえて助かった。
「……ありがとう、和人」
未だに私の身体の前に回されたままの腕に手を添えて、私は背後にいる和人の方へふり返った。
「別に。ってか、未夢も何フラフラあんな変なのについていこうとしてんだよ」
「ご、ごめん……。道案内頼まれて、案内しようとしたら、ああなって……」
和人、やっぱりすごく怒ってるよ。
それだけ私のことを心配してくれたということなのだろう。
確かに私も警戒心に欠けていたところがあったから、怒られても仕方がない。
「まぁ、そこが未夢の良いところでもあるんだろうけどさ。未夢はイイ人過ぎるんだよ」
はぁ、と和人はため息を吐き出すと、少しホッとしたように表情を緩めた。
「うぅ~! 寒っ!」
家の近くの商店街にある文房具屋を出ると、昼間出ていた太陽もすっかり西に沈み、星がポツポツと見えはじめていた。
一月半ばなんだから、寒くて当たり前と言われるかもしれないけれど、あまりに寒いのは身体に堪える。
普段は外が暗くなる時間帯に買い物に出ることは滅多にないんだけど、今日は家で学校の宿題をしていたときにノートを使いきってしまった。
いつもは余分に買ってあるはずなのに、今日に限って完全に切らしてしまっていたんだ。
家までは歩いても十分程度。
完全に真っ暗になってしまう前には帰りたい。
かなり早歩きで進むものの、商店街から抜けようとしたところで、誰かに腕をつかまれて引き留められてしまった。
「……え?」
「嬢ちゃん、一人? 案内してほしいところがあるんだけど、いいかな?」
ふり返ると、栗色ヘアーで派手なアクセサリーを身にまとった二十代くらいの男の人が私の手をつかんでいる。
道に迷っているのか、片手には地図らしきものもあった。
「はい、私でよければ……!」
一瞬、何となく怖そうな見た目に怯みかけたけれど、困ってるなら力になりたい。
私の言葉を聞いて、男性は表情を明るくする。
「マジで~? じゃあちょっとついてきてよ」
「え、あ、あの……っ」
だけど、途端に男性はどういうわけか私の手首をつかんで、私をグイグイと引っ張っていく。
この人、道に迷ってたんだよね?
なのに、何で私が一方的に連れて行かれてるの!?
「あの、どちらに行かれるんですか?」
男性の意図することが読めなくて、思いきって聞いてみると、男性はニヤリとした笑みをこちらに向けた。
「楽しいところだよ。そんなに警戒しなくて大丈夫だから」
「ひゃっ」
その瞬間、男性に腰に手を回されて、思わず震え上がった。
どうしよう……。怖いよ……っ!
そのときだった。
背後から目の前の男性とは違う誰かにグイと肩をつかまれて、私の身体は後ろに傾いた。
「……っ!?」
誰かの身体に背中からぶつかる感触。
私の前に回される、男の人の腕。
もしかして、健?
そんなはずはない。だって、今日のこの時間は、健はバイトのはずだから。
だったら、誰──?
「こいつに気安く触んな」
見えない誰かの存在に、再び恐怖に似た感情があったけれど、低く怒気を含んだ声は私もよく知っている声で、フッと身体の力が抜けていくのを感じた。
「何だ、お前。俺はな、この嬢ちゃんに道案内をだな……」
「道案内が必要なら、俺が代わりにします。別に彼女にこだわる理由はないですよね?」
「ちっ。もういい、彼氏が近くにいたのなら他当たるわ」
男性は吐き捨てるように言うと、そそくさと夜の街の中へと消えていった。
彼氏、っていうわけでもなかったんだけどな……。
でもこの場においては、そう思ってもらえて助かった。
「……ありがとう、和人」
未だに私の身体の前に回されたままの腕に手を添えて、私は背後にいる和人の方へふり返った。
「別に。ってか、未夢も何フラフラあんな変なのについていこうとしてんだよ」
「ご、ごめん……。道案内頼まれて、案内しようとしたら、ああなって……」
和人、やっぱりすごく怒ってるよ。
それだけ私のことを心配してくれたということなのだろう。
確かに私も警戒心に欠けていたところがあったから、怒られても仕方がない。
「まぁ、そこが未夢の良いところでもあるんだろうけどさ。未夢はイイ人過ぎるんだよ」
はぁ、と和人はため息を吐き出すと、少しホッとしたように表情を緩めた。
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