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*第4章*
解放-真理恵Side-(5)
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「いいよ、健。そんなに怒らなくても」
「真理恵も変なところ遠慮すんなよ。和人が悪いんだから、俺からもガツンと言ってやる」
「だからいいって。もう、和人のことは解放してあげようと思ってるから」
「……解放?」
一瞬、健は目をぱちくりとさせる。
ちょっと、わかりにくい言い方だったかな?
「和人と別れようかなって思う。和人の本心に気づいたときは、それでも和人は私と付き合ってるから気にしないようにしてたし、そばにいられたらいいって思ってたんだけどね」
そばにいられたらそれでいい、なんて、本当に綺麗事だ。
実際にそばにいられるのが普通になったら、やっぱり彼女なんだから愛されたいって気持ちがうまれてしまう。
だけど現実はそうはいかなくて、板挟み状態だ。
これで終わりだなんて認めたくない気持ちがある反面、私自身も限界だったんだと思う。
「そうか……」
目の前に見える健の表情は、とても困惑しているようだった。
きっと、私が重い話を聞かせてしまったからなのだろう。
「やだな、健までしんみりしないでよ」
「真理恵はそれでいいの?」
「うーん、私ももう疲れちゃったんだよね。こんな状態のまま付き合い続けても私も和人も幸せになれないし、和人のことを縛り付けてるのも可哀想かなって」
最近、ずっと考えていたことだ。
結局和人にとって、私は好きになれるように努力しないといけない存在でしかない。しかも、私と付き合っていながらずっと未夢のことを見ていた和人が、これから先、努力したところで私のことを好きになるとは思えない。
恋愛感情なんて、本人の意思でコントロールできるものではないのだから。
本当に、恋愛って残酷だ。
「付き合ってるのだって結局は私の自己満足でしかないと思うし、和人はやっぱり辛そうにしてるように見えるからさ」
「そうか、真理恵がそう思うならそれが一番なんだろうな」
少し考え込むようにうつむいた健を見て、何だか申し訳ない気持ちになる。
バイトで疲れていただろうに、私に遭遇したばっかりに健のことまで巻き込んでしまったのだから。
「なによ、あんたまでそんな暗い雰囲気にならないでよ」
「や。そういうわけじゃないんだけどな……」
さっきから落ち着きなく、健は視線をさ迷わせている。いつもの健と様子が違うのは一目瞭然だ。
何かを迷っているようにも見えるけれど、一体どうしたと言うのだろう?
少し心配になって健のことを見ていると、小さく息を吐き出して健は私を見た。
「なぁ、真理恵から見てさ、俺と付き合い始めてからの未夢ってどう?」
ふざけた様子もなく真剣な面持ちは、とても普段の健とは別人のようで、もしかして未夢とのことで悩んでいるのかと心配になる。
「どう? ってあんたたちはうらやましいくらいにラブラブじゃない」
だけど、こっちからしてみれば、何に悩んでいるのかまるで検討がつかない。
いつ見ても健に溺愛されている未夢がうらやましかったし、私と和人もあんな風になれたらなって、いつも思ってた。
「そうか? まぁ、未夢はごまかすのが上手いからな」
「何々、未夢と何かあったの!? まさかあんたたちまで上手くいってないの?」
その言葉に健は力なく笑うだけで、直後にはいつもの調子に戻った健に、私の話に戻されてしまった。
「何もねーよ。ってか、俺らの話は今はどうでもいいんだよ。真理恵は和人とこれからどうするにせよ、後悔ないようにしろよな」
「あんたに言われなくてもわかってるって」
「何だよ、人が心配してやってんのに。まぁ、これ以上和人が真理恵に心ないことして傷つけてくるようだったら、本気で俺からも殴り込みに行ってやるから言ってくれよな」
健はハハハと笑って、私の飲み干したココアの缶を受けとると、自分の分と一緒にゴミ箱へと入れてくれた。
「さ、帰るか。あまり遅くなると、真理恵んとこの両親が仕事終わって帰ってきたときに、真理恵が帰ってなくて心配するだろうし」
「親は今日は遅いはずだから心配しないで。……でも、寒いから帰ろっか」
私の両親は二人とも完全シフト制のホームセンターに勤務している。
今日は二人とも閉店の二十二時まで勤務のはずだから、時間ならまだ余裕があった。
「おう」
健に話を聞いてもらっただけなのに、すごく気持ちがスッキリして前向きな気持ちになれている。
きっと、話している間に私の考えがある程度まとまったのもあるのだろう。
「ねぇ、健? 未夢とは上手くいってないの?」
さっきは話してくれなかったけど、やっぱり気になって前を歩く健に問いかける。
「……どうなんだろうな。まぁ、また俺の中でこたえがでたら、真理恵にも話すよ」
「?」
健が何かに悩んでいるのは確かだった。
だけどこのときの私は、健と未夢はすっかり上手くいってるんだと思っていて、全くもってその内容は想像つかなかった。
だから、あとで健の決意を聞かされたときには本当に驚かされることになったのだった。
そしてこの日の夜、私は改めて和人と会って、独りよがりな関係に終止符を打った。
「真理恵も変なところ遠慮すんなよ。和人が悪いんだから、俺からもガツンと言ってやる」
「だからいいって。もう、和人のことは解放してあげようと思ってるから」
「……解放?」
一瞬、健は目をぱちくりとさせる。
ちょっと、わかりにくい言い方だったかな?
「和人と別れようかなって思う。和人の本心に気づいたときは、それでも和人は私と付き合ってるから気にしないようにしてたし、そばにいられたらいいって思ってたんだけどね」
そばにいられたらそれでいい、なんて、本当に綺麗事だ。
実際にそばにいられるのが普通になったら、やっぱり彼女なんだから愛されたいって気持ちがうまれてしまう。
だけど現実はそうはいかなくて、板挟み状態だ。
これで終わりだなんて認めたくない気持ちがある反面、私自身も限界だったんだと思う。
「そうか……」
目の前に見える健の表情は、とても困惑しているようだった。
きっと、私が重い話を聞かせてしまったからなのだろう。
「やだな、健までしんみりしないでよ」
「真理恵はそれでいいの?」
「うーん、私ももう疲れちゃったんだよね。こんな状態のまま付き合い続けても私も和人も幸せになれないし、和人のことを縛り付けてるのも可哀想かなって」
最近、ずっと考えていたことだ。
結局和人にとって、私は好きになれるように努力しないといけない存在でしかない。しかも、私と付き合っていながらずっと未夢のことを見ていた和人が、これから先、努力したところで私のことを好きになるとは思えない。
恋愛感情なんて、本人の意思でコントロールできるものではないのだから。
本当に、恋愛って残酷だ。
「付き合ってるのだって結局は私の自己満足でしかないと思うし、和人はやっぱり辛そうにしてるように見えるからさ」
「そうか、真理恵がそう思うならそれが一番なんだろうな」
少し考え込むようにうつむいた健を見て、何だか申し訳ない気持ちになる。
バイトで疲れていただろうに、私に遭遇したばっかりに健のことまで巻き込んでしまったのだから。
「なによ、あんたまでそんな暗い雰囲気にならないでよ」
「や。そういうわけじゃないんだけどな……」
さっきから落ち着きなく、健は視線をさ迷わせている。いつもの健と様子が違うのは一目瞭然だ。
何かを迷っているようにも見えるけれど、一体どうしたと言うのだろう?
少し心配になって健のことを見ていると、小さく息を吐き出して健は私を見た。
「なぁ、真理恵から見てさ、俺と付き合い始めてからの未夢ってどう?」
ふざけた様子もなく真剣な面持ちは、とても普段の健とは別人のようで、もしかして未夢とのことで悩んでいるのかと心配になる。
「どう? ってあんたたちはうらやましいくらいにラブラブじゃない」
だけど、こっちからしてみれば、何に悩んでいるのかまるで検討がつかない。
いつ見ても健に溺愛されている未夢がうらやましかったし、私と和人もあんな風になれたらなって、いつも思ってた。
「そうか? まぁ、未夢はごまかすのが上手いからな」
「何々、未夢と何かあったの!? まさかあんたたちまで上手くいってないの?」
その言葉に健は力なく笑うだけで、直後にはいつもの調子に戻った健に、私の話に戻されてしまった。
「何もねーよ。ってか、俺らの話は今はどうでもいいんだよ。真理恵は和人とこれからどうするにせよ、後悔ないようにしろよな」
「あんたに言われなくてもわかってるって」
「何だよ、人が心配してやってんのに。まぁ、これ以上和人が真理恵に心ないことして傷つけてくるようだったら、本気で俺からも殴り込みに行ってやるから言ってくれよな」
健はハハハと笑って、私の飲み干したココアの缶を受けとると、自分の分と一緒にゴミ箱へと入れてくれた。
「さ、帰るか。あまり遅くなると、真理恵んとこの両親が仕事終わって帰ってきたときに、真理恵が帰ってなくて心配するだろうし」
「親は今日は遅いはずだから心配しないで。……でも、寒いから帰ろっか」
私の両親は二人とも完全シフト制のホームセンターに勤務している。
今日は二人とも閉店の二十二時まで勤務のはずだから、時間ならまだ余裕があった。
「おう」
健に話を聞いてもらっただけなのに、すごく気持ちがスッキリして前向きな気持ちになれている。
きっと、話している間に私の考えがある程度まとまったのもあるのだろう。
「ねぇ、健? 未夢とは上手くいってないの?」
さっきは話してくれなかったけど、やっぱり気になって前を歩く健に問いかける。
「……どうなんだろうな。まぁ、また俺の中でこたえがでたら、真理恵にも話すよ」
「?」
健が何かに悩んでいるのは確かだった。
だけどこのときの私は、健と未夢はすっかり上手くいってるんだと思っていて、全くもってその内容は想像つかなかった。
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