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*最終章*
素直になりなさい(2)
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「うっわ、和人! まさかお前一人だけ抜け駆けして未夢のチョコ味見しようとしてただろ?」
「してねぇって! お前と一緒にするな!」
そう言う健は、今の間に焼き上がったらしいガトーショコラのはしっこをほんの少し真理恵にもらったようだった。
健の口の端っこに、黒くガトーショコラがついている。
「俺は食うのは明日のお楽しみに取っとくからいいんだよ」
「はいはい。じゃあ和人は、ガトーショコラのはし切れはいらない、ってことで良いね?」
真理恵の言葉に、和人は少しムッとした表情をしたけれど、今更言葉を覆すなんてことはしないようだ。
真理恵と和人。
別れた当初こそ、全然口すら利いてないように見えてものすごく心配した。
だけどそれも本当に最初だけで、徐々に以前のように戻って、今ではそんな心配をしてたのが嘘のようだ。
本当にいろいろあったけれど、今年もいつもと変わらないバレンタインを迎えられそうで本当に良かった。
狭いキッチンに私たち四人。
うるさく騒ぐ様子を見て、いつまでもこんな日が続けばいいと思った。
そして、次の日、バレンタインの放課後がやってくる。
この日は、和人が部活から帰ってくる十八時過ぎ頃に私の部屋にみんなが集まる約束になっていた。
だけど、肝心の十八時をまわっても、健も和人も来る気配がなかった。
「来ないね~。二人ともどうしちゃったんだろう?」
和人は部活が延びてるのかな?
健はバイトは休みって言ってたし、毎年異様に早くからうちに来てたから、余計にどうしたのか気になってしまう。
一方で、真理恵は二人がなかなか来ないことを気にならないのか、特にそれには全く気に留める様子もなく口を開いた。
「さぁ、そのうち来るんじゃない? それより、未夢はどうするの?」
「え、どうって何の話?」
「何とぼけたこと言ってるのよ。和人よ、和人。好きなんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
確かに真理恵に和人のことが好きだとは話したけど、何だか真理恵とはこの話題は話しづらい。
だって、真理恵だって和人のことを好きだったのに……。
「言っとくけど、私はもう和人のことはただの幼なじみとしか思ってないから、遠慮しなくていいからね」
「え? えぇえっ!?」
そ、そうなの!?
っていうか、私の考えてること真理恵にバレてるし……。
「そんなに驚くこと!? いつまでも想ってたって仕方ないからやめたの。だから未夢は気にしないで。むしろ今は、早く二人くっつけって思ってるくらいだし」
「そ、そんなの無理だよ……」
まず第一、和人は私のことはただの幼なじみとしか思ってない。
それに、和人には好きな人がいるって、真理恵が言ってたんじゃん……。
「そう言ってられるのも、今のうち……」
~♪ ~~♪ ~♪
そのときスマホの着信音が鳴って、真理恵が履いていたズボンからスマホを取り出す。
「あ、健からだ!」
画面には確かに“二宮健”と表示されていて、真理恵は画面をタップして、その電話をハンズフリーに切り替えた。
「?」
だけど、真理恵はスマホをまるで私に聞かせるようにこちらに向けたのだ。
健も特にこちらに何か言ってくるでもなく、空気の音なのかザワザワという雑音が大きく聞こえているだけだった。
「真理恵……? 健、どうしたの?」
すると、真理恵は口元に人さし指を立ててこう言った。
「まぁ、大人しく聞いてなよ」
そうしていると、ザワザワという雑音に混ざって健の声が少し小さく聞こえた。
『おい、黙ってたってわかんねーだろ。お前がそんなんじゃ、また俺が未夢のこと奪うぞ?』
……え? 健?
思わぬ会話の内容に、思わず目をぱちくりさせる。
最近では全く感じさせない、私と付き合ってた頃のような健の雰囲気だった。
『や。待て。それはやめろ』
『だったら、ウジウジしてないで行動に移せよ。未夢のこと、好きなんだろ?』
ドクンと心臓が跳ね上がりそうになる。
真理恵の方を見ると、ニヤニヤと二人の会話の行方を見守っているように見えた。
『ああ、好きだよ。だけど、それとこれとは話が別だろ』
そして、次に聞こえた和人の声に、息が止まりそうになった。
え、えぇえっ!?
す、好き!?
あ、でも、好きでも幼なじみの好きかもしれないし?
それに、こんな盗み聞きみたいなことをして、好きだと聞かされてもどうしていいかわからない。
「してねぇって! お前と一緒にするな!」
そう言う健は、今の間に焼き上がったらしいガトーショコラのはしっこをほんの少し真理恵にもらったようだった。
健の口の端っこに、黒くガトーショコラがついている。
「俺は食うのは明日のお楽しみに取っとくからいいんだよ」
「はいはい。じゃあ和人は、ガトーショコラのはし切れはいらない、ってことで良いね?」
真理恵の言葉に、和人は少しムッとした表情をしたけれど、今更言葉を覆すなんてことはしないようだ。
真理恵と和人。
別れた当初こそ、全然口すら利いてないように見えてものすごく心配した。
だけどそれも本当に最初だけで、徐々に以前のように戻って、今ではそんな心配をしてたのが嘘のようだ。
本当にいろいろあったけれど、今年もいつもと変わらないバレンタインを迎えられそうで本当に良かった。
狭いキッチンに私たち四人。
うるさく騒ぐ様子を見て、いつまでもこんな日が続けばいいと思った。
そして、次の日、バレンタインの放課後がやってくる。
この日は、和人が部活から帰ってくる十八時過ぎ頃に私の部屋にみんなが集まる約束になっていた。
だけど、肝心の十八時をまわっても、健も和人も来る気配がなかった。
「来ないね~。二人ともどうしちゃったんだろう?」
和人は部活が延びてるのかな?
健はバイトは休みって言ってたし、毎年異様に早くからうちに来てたから、余計にどうしたのか気になってしまう。
一方で、真理恵は二人がなかなか来ないことを気にならないのか、特にそれには全く気に留める様子もなく口を開いた。
「さぁ、そのうち来るんじゃない? それより、未夢はどうするの?」
「え、どうって何の話?」
「何とぼけたこと言ってるのよ。和人よ、和人。好きなんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
確かに真理恵に和人のことが好きだとは話したけど、何だか真理恵とはこの話題は話しづらい。
だって、真理恵だって和人のことを好きだったのに……。
「言っとくけど、私はもう和人のことはただの幼なじみとしか思ってないから、遠慮しなくていいからね」
「え? えぇえっ!?」
そ、そうなの!?
っていうか、私の考えてること真理恵にバレてるし……。
「そんなに驚くこと!? いつまでも想ってたって仕方ないからやめたの。だから未夢は気にしないで。むしろ今は、早く二人くっつけって思ってるくらいだし」
「そ、そんなの無理だよ……」
まず第一、和人は私のことはただの幼なじみとしか思ってない。
それに、和人には好きな人がいるって、真理恵が言ってたんじゃん……。
「そう言ってられるのも、今のうち……」
~♪ ~~♪ ~♪
そのときスマホの着信音が鳴って、真理恵が履いていたズボンからスマホを取り出す。
「あ、健からだ!」
画面には確かに“二宮健”と表示されていて、真理恵は画面をタップして、その電話をハンズフリーに切り替えた。
「?」
だけど、真理恵はスマホをまるで私に聞かせるようにこちらに向けたのだ。
健も特にこちらに何か言ってくるでもなく、空気の音なのかザワザワという雑音が大きく聞こえているだけだった。
「真理恵……? 健、どうしたの?」
すると、真理恵は口元に人さし指を立ててこう言った。
「まぁ、大人しく聞いてなよ」
そうしていると、ザワザワという雑音に混ざって健の声が少し小さく聞こえた。
『おい、黙ってたってわかんねーだろ。お前がそんなんじゃ、また俺が未夢のこと奪うぞ?』
……え? 健?
思わぬ会話の内容に、思わず目をぱちくりさせる。
最近では全く感じさせない、私と付き合ってた頃のような健の雰囲気だった。
『や。待て。それはやめろ』
『だったら、ウジウジしてないで行動に移せよ。未夢のこと、好きなんだろ?』
ドクンと心臓が跳ね上がりそうになる。
真理恵の方を見ると、ニヤニヤと二人の会話の行方を見守っているように見えた。
『ああ、好きだよ。だけど、それとこれとは話が別だろ』
そして、次に聞こえた和人の声に、息が止まりそうになった。
え、えぇえっ!?
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