初恋*幼なじみ~歪に絡み合う想いの四重奏~

美和優希

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*最終章*

変わらないもの(1)

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 しんと静まり返った私の部屋。

 さっきまでのにぎやかさがまるで嘘のようだ。


 ドキドキと胸を打つ鼓動が速い。


「未夢」


 不意打ちで和人に名前を呼ばれて、思わずビクりと反応した。


「ごめんな、巻き込んでしまって」

「う、ううん……。私だって、悪いんだし」


 だってこれは、私と和人への罰だって真理恵も言ってたくらいだ。


「や。悪いのは俺だから……さ」


 そして、和人は少し言いづらそうにしながら、言葉を続けた。


「……さっきの真理恵にかかってきた電話、聞いたんだよな?」

「うん……」

「あれ、嘘じゃないから」

「……え?」


 電話越しに聞こえてきたのは、健と和人の言い合うような会話。

 私のことを好きだとこたえてくれた、和人の声。


「俺、子どもの頃から、ずっと未夢のことが好きだったんだ。物心ついた頃から、ただの幼なじみとして見たことなんて一度もなかった」

「えぇえっ!?」


 子どもの頃から、ずっと……!?


「そりゃ驚くわな。ついこの前まで俺は、真理恵と付き合ってたんだもんな」


 他に好きな子がいるのに、和人は真理恵と付き合っていた。

 まさか真理恵が言ってた“和人の好きな子”って、私のことだったの……!?

 そう考えると、私のせいで真理恵を傷つけることになったんだと思って、罪悪感が一気にわき上がる。


「引いただろ。俺らの仲をこじらせるようなことをして、真理恵のことも傷つけた。下手すれば、俺ら四人の仲だって壊れてもおかしくないようなことを俺はしたんだ」


 そうなのかもしれない。

 だけど、それには和人なりの理由があったはずだ。


 それに私だって和人のことを好きな気持ちを消せないまま健と付き合っていたんだから、人のことは言えない。


「……和人だけが悪いんじゃないよ」


 だから、そんなに一人で自分のことを責めないでほしい。


「でも……」

「私もそうだったの!」


 思いきって声に出すと、和人は少し驚いたように私を見る。


「私も本当は和人のことが好きだった。だけど自分の気持ちに気づいたときには和人は真理恵の好きな人で、この気持ちを封印しようとした。だけど、真理恵と付き合う和人を見ていると、辛くて耐えられなくて……救いの手を差し出してくれた健と付き合ってたの」


 人が聞いたらなんて思うだろう?

 理由はともかく、これが私のしてきたことだ。

 そんな私に、和人のことをとやかく言う資格はない。


 改めて口にすると、なんて自分は弱くてずるい人間かと思ってしまう。


「……は? いや、ちょっと待て。健に別れたって聞いたときから何かおかしいなとは思ってたけれど、未夢は健のことを好きだったんじゃないの?」

「正直、付き合ってた間は、健のことを好きだと思っていた時期もあったよ。だけど、ダメだったの。同じ幼なじみなのに、私の中の和人への“好き”って気持ちには全然敵わなくて、結局上手くいかなかった」

「……んだよ、やっぱり俺が悪いんじゃん。健に押し倒されてる未夢を見たとき、てっきり俺、勘違いしてたんだ」


 和人が言うには、健に押し倒される私を見て、私と健が両思いなんだと思ったんだそうだ。

 さらに、あの頃の私は、真理恵の気持ちを知って自然と和人と距離をおいてしまっていたところがあったから、それもあって私の気持ちが和人に向くことはないと思ったらしい。


 そんなとき、真理恵に告白されて、和人なりにみんなが幸せになる方法を考えて、真理恵と付き合う道を選んだ。

 四人の関係を壊したくなかったから。

 あのときの和人が、私たちの仲を守るために精一杯考えてたどり着いた結果だったんだ。

 だけど……。


「最初からただの勘違いで、ダサすぎだろ、俺。結局未夢のことも散々傷つけてたんだろ?」


 全てを話してくれた和人は、罪悪感の入り交じった顔で私を見てくる。


 確かに私たちは、選択を間違ってしまったのかもしれない。

 仕方ない、なんて生ぬるい言葉なのかもしれない。


 だけど、過去のどの選択においても、きっと私も和人も自分なりに必死だったんだ。

 きっと、健と真理恵だってそうだったんだと思う。


 結果がどうであろうと、あのときの私たちなりに一生懸命考えて進んできた結果が今なんだ。


 恋って、もっと綺麗で華やかなものだと思ってた。

 だけど、実際はとても難しい。


 一度好きになってしまったら、その気持ちを抑えるのは難しくて、それだけでも自分のことで手一杯。

 だけど、周りとの調和も大事にしたくて……。


 みんな、根本的にあるものは同じだったのに、たくさん傷つけ合ってすれ違った。

 そして、気づいたときには私たちの想いは歪に絡み合っていたんだ。
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