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第2章
夏祭りの舞台(4)
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「ってか、俺のこと知らなかったんかよ。一応、隣のクラスだったんだけど」
アイスコーヒーをストローで混ぜながら表情をほとんど変えずにじとりとこちらを見るのは、ベース担当の北原 瑛司くん。
さっき柳澤くんに教えてもらって知ったんだけど、北原くんは同じ高校かつ同じ学年だったみたい。
「ご、ごめんね……」
うぅぅ。いくら北原くんの見た目が大人っぽいからって、同級生だったことすら気づけなかっただなんて、何だか申し訳ない。
「ハハッ。委員長らしいや」
そう明るく笑い飛ばしてくれるのは、柳澤くん。
「ってか奏ちゃん。この子の雰囲気見ててなんとなく思ったけど、もしかして惚れたのは奏ちゃんから?」
そんなことを言うのは、ドラム担当の栗色ヘアーの男子、増川 駿先輩。
増川先輩と、キーボードの新島 咲先輩は、この春私たちの高校を卒業した卒業生だったらしい。
「ま、そうだけど。ってか駿ちゃん、そんなこと聞くもんじゃないから!」
増川先輩にムッとした表情を浮かべて言う、柳澤くん。
そうだけど、って……。
私も結構早くから、柳澤くんのことを好きになったように思ってたんだけどな……。
柳澤くんの話によると、この四人は小さい頃からの幼なじみだったらしい。
北原くんのお家は、実はこの喫茶店バロンの裏に当たるそうで、柳澤くん以外の自宅はみんなこの近くなんだそうだ。
そしてなんとこの喫茶店は、北原くんのお父さんが経営しているらしく、さっきのおじさん店員は北原くんのお父さんだったみたい。
「俺も少し前まではこの近所に住んでたんだけど、俺が中学のとき、途中で今の家に引っ越したんだ」
今まで私が塾ばっかりで放課後一緒に帰ることがなかったせいであまり詳しくなかったけど、高校まで柳澤くんは自転車通学だ。
駅で言うと、この近くの駅から二駅ほど離れているらしい。
「練習はいつもここの上の空き部屋を使わせてもらってるんだ」
二階建てのこの喫茶店。
二階は主に喫茶店の従業員の休憩室として使ってるらしいんだけど、二部屋ある二階の使わない方の部屋を貸してもらってるんそうだ。
元々喫茶店になる前はライブハウスだったらしいこの建物は、防音も充分されてるんだそうだ。
「それに俺、夏休み中の昼間はここでバイトもさせてもらってるんだ。だから本当に夏休みの間、俺はほとんどここにいる感じになるからさ、委員長も来れそうなときはいつでも来てよ」
ふわりと優しい笑みを浮かべる柳澤くん。
柳澤くん、バイトしてたんだ……。
それで夏休みになってから忙しそうにしてたんだね。
公立の進学校として知られる私たちの学校は、原則バイト禁止で、長期休暇中のみ例外的に許可が降りた場合のみしかバイトはできないことになっている。
だから、バイトをしているって聞いただけで、ものすごく柳澤くんが大人に見えた。
「いいの……?」
私がここに来ても、柳澤くんはバイトをしてるか、バンドの練習をしてるかってことなんだよね……?
迷惑にならないのかな……?
「うん。まぁバイト中は忙しかったらあまり話せないかもしれないけど、練習中なら全く気にしないで! こんなのだけど、みんな良い奴らだし。何たって、委員長はこのWild Wolfのリーダー、柳澤奏真の彼女なんだから」
だけど、柳澤くんはそんな私の心配も払拭するような明るい笑みでそう告げた。
今、柳澤くんが言った通り、実はWild Wolfのリーダーは柳澤くんなんだそうだ。
柳澤くんの言葉に、思わずトクンと胸が温かい鼓動を奏でる。
彼女、だなんて。思いがけない一言でも、柳澤くんの声で聞かせてもらう度に幸せな気持ちになる。
「ちょっと、こんなのって言い方、酷くない?」
さっきの柳澤くんの言葉にそう突っ込むのは、新島先輩の高い声。
「咲姉、ごめんって!」
そんな新島先輩と柳澤くんのやり取りに思わずクスリと笑った。
Wild Wolfのステージを見れただけじゃなく、こうしてWild Wolfのメンバーの人たちに柳澤くんの彼女として紹介してもらえるなんて……。
思いもかけない出来事だったけれど、また少し、柳澤くんとの距離が縮まったような気がしていた。
アイスコーヒーをストローで混ぜながら表情をほとんど変えずにじとりとこちらを見るのは、ベース担当の北原 瑛司くん。
さっき柳澤くんに教えてもらって知ったんだけど、北原くんは同じ高校かつ同じ学年だったみたい。
「ご、ごめんね……」
うぅぅ。いくら北原くんの見た目が大人っぽいからって、同級生だったことすら気づけなかっただなんて、何だか申し訳ない。
「ハハッ。委員長らしいや」
そう明るく笑い飛ばしてくれるのは、柳澤くん。
「ってか奏ちゃん。この子の雰囲気見ててなんとなく思ったけど、もしかして惚れたのは奏ちゃんから?」
そんなことを言うのは、ドラム担当の栗色ヘアーの男子、増川 駿先輩。
増川先輩と、キーボードの新島 咲先輩は、この春私たちの高校を卒業した卒業生だったらしい。
「ま、そうだけど。ってか駿ちゃん、そんなこと聞くもんじゃないから!」
増川先輩にムッとした表情を浮かべて言う、柳澤くん。
そうだけど、って……。
私も結構早くから、柳澤くんのことを好きになったように思ってたんだけどな……。
柳澤くんの話によると、この四人は小さい頃からの幼なじみだったらしい。
北原くんのお家は、実はこの喫茶店バロンの裏に当たるそうで、柳澤くん以外の自宅はみんなこの近くなんだそうだ。
そしてなんとこの喫茶店は、北原くんのお父さんが経営しているらしく、さっきのおじさん店員は北原くんのお父さんだったみたい。
「俺も少し前まではこの近所に住んでたんだけど、俺が中学のとき、途中で今の家に引っ越したんだ」
今まで私が塾ばっかりで放課後一緒に帰ることがなかったせいであまり詳しくなかったけど、高校まで柳澤くんは自転車通学だ。
駅で言うと、この近くの駅から二駅ほど離れているらしい。
「練習はいつもここの上の空き部屋を使わせてもらってるんだ」
二階建てのこの喫茶店。
二階は主に喫茶店の従業員の休憩室として使ってるらしいんだけど、二部屋ある二階の使わない方の部屋を貸してもらってるんそうだ。
元々喫茶店になる前はライブハウスだったらしいこの建物は、防音も充分されてるんだそうだ。
「それに俺、夏休み中の昼間はここでバイトもさせてもらってるんだ。だから本当に夏休みの間、俺はほとんどここにいる感じになるからさ、委員長も来れそうなときはいつでも来てよ」
ふわりと優しい笑みを浮かべる柳澤くん。
柳澤くん、バイトしてたんだ……。
それで夏休みになってから忙しそうにしてたんだね。
公立の進学校として知られる私たちの学校は、原則バイト禁止で、長期休暇中のみ例外的に許可が降りた場合のみしかバイトはできないことになっている。
だから、バイトをしているって聞いただけで、ものすごく柳澤くんが大人に見えた。
「いいの……?」
私がここに来ても、柳澤くんはバイトをしてるか、バンドの練習をしてるかってことなんだよね……?
迷惑にならないのかな……?
「うん。まぁバイト中は忙しかったらあまり話せないかもしれないけど、練習中なら全く気にしないで! こんなのだけど、みんな良い奴らだし。何たって、委員長はこのWild Wolfのリーダー、柳澤奏真の彼女なんだから」
だけど、柳澤くんはそんな私の心配も払拭するような明るい笑みでそう告げた。
今、柳澤くんが言った通り、実はWild Wolfのリーダーは柳澤くんなんだそうだ。
柳澤くんの言葉に、思わずトクンと胸が温かい鼓動を奏でる。
彼女、だなんて。思いがけない一言でも、柳澤くんの声で聞かせてもらう度に幸せな気持ちになる。
「ちょっと、こんなのって言い方、酷くない?」
さっきの柳澤くんの言葉にそう突っ込むのは、新島先輩の高い声。
「咲姉、ごめんって!」
そんな新島先輩と柳澤くんのやり取りに思わずクスリと笑った。
Wild Wolfのステージを見れただけじゃなく、こうしてWild Wolfのメンバーの人たちに柳澤くんの彼女として紹介してもらえるなんて……。
思いもかけない出来事だったけれど、また少し、柳澤くんとの距離が縮まったような気がしていた。
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