秘密の恋人は鬼上司!?~ウソから始まるSweet Love~

美和優希

文字の大きさ
6 / 75
1.この姿で気に入られても困りますから……!

(6)

しおりを挟む
「そこまで無理無理言うなよ。さすがの俺も傷つく」

 そして本郷さんは、ぶんぶんと全力で首を振ってお断りする私の頭の後ろに大きな手を添えると、私の耳に口元を近づけて、囁くように言った。


「すぐにとは言わねぇよ。でも、近い将来、お前を俺のものにしてみせる」

 勝手なことを言われているのに、甘美な声色に思わずびくりと身体を跳ねさせてしまう。


「行くぞ」

 私から離れると、本郷さんは私の手首を引いた。


「行く、って、どこに……!?」

「駅に決まってんだろ? お前、方角からしても駅に向かってたんじゃなかったの?」

「そ、そうですけど……」

「それとも、ラブホにでも連れて行かれると思ったか?」

「そ、そそそそんなこと、思うわけないじゃないですか!」

「ハハっ。そんなムキになるなよな」


 再びお腹を抱えて、本郷さんはおかしそうに笑い出す。

 これ、絶対、私で楽しんでるよ……!


「まぁ、いずれな。お楽しみはとっておきたい派なんでね」

 ちょ……っ!

 私が目をぱちくりとさせてる間にも、本郷さんは私の手を引いて駅の方へと連れていく。


「次のお前の空いてる日は、いつだ?」

「? 今週の木曜日です」

 仕事のお休みの日を聞かれてるんだよね?


「その次は?」

「来週の火曜日です」

 私の勤めているドラッグストアでは、基本的に年中無休のため、土日は特に休みづらい。


「バラバラだな」

「……すみません」

「仕方ねぇか。そういう俺も小売りで働いてるから、基本的にはバラバラだしな、休み。美容師も土日は休めねぇもんな」


 そうだった……!

 何気なく私自身のお休みの日をこたえてたけど、今の私は、梨緒だ。


「じゃあ、来週の月曜の夜、お前の仕事終わりは何時だ?」

「十八時、ですけど……」

 でも、梨緒の姿とはいっても中身は私なんだし、ここは適当に私の予定をこたえておいたら良いのかな……?

 梨緒の予定まで正確に覚えてないし。


「じゃあ、来週の月曜の十九時にこの駅のこの場所、来れるか?」

「来れないことも、ないですけど……」

 え、一体、どういうこと……?


「来れるんだな? じゃあ、来週の月曜の十九時にここで待ってる」

「へ……?」

 月曜の十九時に、ここで、待ってる……?


「えぇえっ!? そ、それはちょっと……」

「なんだよ、今来れるって言っただろ?」

「い、言いましたけど……」


 何気なく誘導尋問にこたえるように、そう言ってしまった私も悪いけどさ……。

 自分のバカさ加減に泣けてくる。


「どうせその次の日は休みなんだから、ちょっと付き合え」

「で、でも……」

「くれぐれも忘れるなよ、じゃあな」


 私が今更のように断ろうとしても、本郷さんは全く聞く耳を持ってくれない。

 本郷さんは一人でそう決めてしまうと、私が利用する方とは違う方の改札口の中へと消えていってしまった。

 ここの駅は、二つの路線が乗り換えられる駅になっているんだ。


 ど、どうしよう……。

 だって、あんな約束を取り付けられてしまって、私、来週も梨緒にならないといけないってことなんだよね……?

 そんなの、無理だよ……!


 慌ててカバンからスマホを取り出すけれど、思い返してみても私は本郷さんと連絡先を交換した覚えはない。

 もちろん、山口さんや菊地さんとも交換していないのだけれど。


 でもこれじゃあ、本郷さんと全く連絡が取れないじゃない!

 白鳥さんや澤田さんは聞いたのかもしれないけれど、わざわざ梨緒に聞いてもらうのもな……。

 今日の二人を見る感じ、何となく二人は梨緒をおとしめようとしていたように見えたし、それは避けたかった。

 特にあの二人の目当てが本郷さんだっただけに。


 ああ、もう、どうしよう。

 本郷さん、もしかしなくても、山口さんや菊地さん以上に厄介かもしれない……。

 もう本郷さんの姿は見えないけれど、私は彼の消えていった改札口をしばらく呆然と眺めていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完】経理部の女王様が落ちた先には

Bu-cha
恋愛
エブリスタにて恋愛トレンドランキング4位 高級なスーツ、高級な腕時計を身に付け ピンヒールの音を響かせ歩く “経理部の女王様” そんな女王様が落ちた先にいたのは 虫1匹も殺せないような男だった・・・。 ベリーズカフェ総合ランキング4位 2022年上半期ベリーズカフェ総合ランキング53位 2022年下半期ベリーズカフェ総合ランキング44位 関連物語 『ソレは、脱がさないで』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高4位 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高2位 『大きなアナタと小さなわたしのちっぽけなプライド』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位 『初めてのベッドの上で珈琲を』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位 『“こだま”の森~FUJIメゾン・ビビ』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 17位 私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。 伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。 物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

処理中です...