8 / 75
2.お相手は、まさかの鬼上司!?
(2)
しおりを挟む
「はい。引き継ぎのために、あと何日かは池野店長が来られる日もあるみたいですが、今日から新しい店長が来られてます」
「そうなんだ。小梅ちゃんは、新しい店長には会ったの? どんな人だった?」
人事異動はその都度、リストが送られてくる。以前、池野店長の異動が発表されたときに見たとはいえ、全くもって記憶にない。
とにかく、他店舗の知らない店長だったってことしか覚えてない。
「若くて、わりと男前な、黒いフレームのメガネをかけた人でした」
「そうなんだ」
“わりと男前な”と説明してくれる小梅ちゃんの頬は、少し赤く染まっている。
もしかして、結構カッコイイ人だった、とかなのかな?
なんとなく小梅ちゃんの可愛い姿が見られてほっこりしていると、彼女の視線が事務室の入り口の方へと向けられた。
「高倉さん……、あの人です!」
開けっぱなしになっていた事務室のドアの向こうに見えるのは、開店前の薄暗い店舗。
その先で、パートの人、二、三人と何かしらの話をしている、丈の短い白衣姿の細身の男性が見えた。
「あ、……」
小梅ちゃんが小さく声を出したのと同じタイミングで、新店長がこちらを向いた。
小梅ちゃんの説明通り、黒いフレームのメガネをかけた、歳の近そうな男性だ。
新店長はこちらの方へと歩いてくると、ペコリと頭を下げた。
「はじめまして。今日からこちらの店舗に異動になった、本郷司です」
「……あぁっ!」
本郷司!
昨日一度会っただけだし、今日はメガネもかけてるし服装も違うから、すぐには気づけなかった。
でも、確かにメガネの奥に見える顔は、昨日も見た本郷さんの顔だ。
「高倉さん、お知り合いですか?」
「えっ、い、いや。す、すみません。高倉奈緒です。よろしくお願いします」
私の反応に驚いたように聞いてきた小梅ちゃんの声に、すっかり我に返った。
慌てて挨拶を返すけれど、目の前の本郷さんは、やっぱり不審そうな顔をしている。
「よろしく。まさか高倉さんも正社員?」
「は、はい……」
「そうか。前任の池野店長ほど緩くないから。覚悟しておいて」
「はい。……すみません」
「じゃあ、朝礼始めるので、皆さん事務室に集まってください」
ど、どどどどどうしよう……。
これ、絶対初対面から目をつけられたってやつだよね?
もちろんそれも大変だけど、もっと重大なことがある。
昨日、私は梨緒の姿で本郷さんに会っている上に、来週にはまた本郷さんと会う約束まで取り付けられてしまっているんだ。
幸いにも、私が昨日梨緒として本郷さんと会っていたことには、本郷さんは気づいてなさそうだけど……。
名前も一緒だし、見れば見るほど昨日の本郷さんだし、他人の可能性はかなり低いと思う。
だからといって、本郷さんに私の正体をバラすなんて、怖くてできないよ。
何でよりにもよって新店長が……。
世間は狭いと嘆きながら、私もしぶしぶと朝礼の輪の中に入った。
朝礼が終わり、それぞれの持ち場につく。
開店時刻の9時が来ると、まばらにお客様が流れ込む店内。
うちのドラッグストアは、調剤併設型ドラッグストアと言われるタイプのお店だ。
住宅地の真ん中にある郊外型のドラッグストアは、子どもからお年寄りまで、幅広い年齢のお客様が訪れる。
入り口からすぐのところに小さな調剤室があり、薬剤師さんによって、処方箋のお薬の調剤をはじめとした業務が行われている。
その他のフロア部分では、市販薬や化粧品、健康食品や食料品等、多種多様の商品を扱っている。
調剤薬局業務もあるのに、常駐の薬剤師が小梅ちゃんのみなのは、それほど月の処方箋枚数が多くないかららしい。
小梅ちゃんがお休み等でいないときは、他店の薬剤師さんが応援に来てくれている。
そんな感じに、主に調剤室業務は、小梅ちゃん。
その他のフロア業務は、店長、次長、私の正社員三人と、ビューティー担当のパートさん一人と、一般のパートさんが三人、バイトが三人でこの店舗は回っている。
「そうなんだ。小梅ちゃんは、新しい店長には会ったの? どんな人だった?」
人事異動はその都度、リストが送られてくる。以前、池野店長の異動が発表されたときに見たとはいえ、全くもって記憶にない。
とにかく、他店舗の知らない店長だったってことしか覚えてない。
「若くて、わりと男前な、黒いフレームのメガネをかけた人でした」
「そうなんだ」
“わりと男前な”と説明してくれる小梅ちゃんの頬は、少し赤く染まっている。
もしかして、結構カッコイイ人だった、とかなのかな?
なんとなく小梅ちゃんの可愛い姿が見られてほっこりしていると、彼女の視線が事務室の入り口の方へと向けられた。
「高倉さん……、あの人です!」
開けっぱなしになっていた事務室のドアの向こうに見えるのは、開店前の薄暗い店舗。
その先で、パートの人、二、三人と何かしらの話をしている、丈の短い白衣姿の細身の男性が見えた。
「あ、……」
小梅ちゃんが小さく声を出したのと同じタイミングで、新店長がこちらを向いた。
小梅ちゃんの説明通り、黒いフレームのメガネをかけた、歳の近そうな男性だ。
新店長はこちらの方へと歩いてくると、ペコリと頭を下げた。
「はじめまして。今日からこちらの店舗に異動になった、本郷司です」
「……あぁっ!」
本郷司!
昨日一度会っただけだし、今日はメガネもかけてるし服装も違うから、すぐには気づけなかった。
でも、確かにメガネの奥に見える顔は、昨日も見た本郷さんの顔だ。
「高倉さん、お知り合いですか?」
「えっ、い、いや。す、すみません。高倉奈緒です。よろしくお願いします」
私の反応に驚いたように聞いてきた小梅ちゃんの声に、すっかり我に返った。
慌てて挨拶を返すけれど、目の前の本郷さんは、やっぱり不審そうな顔をしている。
「よろしく。まさか高倉さんも正社員?」
「は、はい……」
「そうか。前任の池野店長ほど緩くないから。覚悟しておいて」
「はい。……すみません」
「じゃあ、朝礼始めるので、皆さん事務室に集まってください」
ど、どどどどどうしよう……。
これ、絶対初対面から目をつけられたってやつだよね?
もちろんそれも大変だけど、もっと重大なことがある。
昨日、私は梨緒の姿で本郷さんに会っている上に、来週にはまた本郷さんと会う約束まで取り付けられてしまっているんだ。
幸いにも、私が昨日梨緒として本郷さんと会っていたことには、本郷さんは気づいてなさそうだけど……。
名前も一緒だし、見れば見るほど昨日の本郷さんだし、他人の可能性はかなり低いと思う。
だからといって、本郷さんに私の正体をバラすなんて、怖くてできないよ。
何でよりにもよって新店長が……。
世間は狭いと嘆きながら、私もしぶしぶと朝礼の輪の中に入った。
朝礼が終わり、それぞれの持ち場につく。
開店時刻の9時が来ると、まばらにお客様が流れ込む店内。
うちのドラッグストアは、調剤併設型ドラッグストアと言われるタイプのお店だ。
住宅地の真ん中にある郊外型のドラッグストアは、子どもからお年寄りまで、幅広い年齢のお客様が訪れる。
入り口からすぐのところに小さな調剤室があり、薬剤師さんによって、処方箋のお薬の調剤をはじめとした業務が行われている。
その他のフロア部分では、市販薬や化粧品、健康食品や食料品等、多種多様の商品を扱っている。
調剤薬局業務もあるのに、常駐の薬剤師が小梅ちゃんのみなのは、それほど月の処方箋枚数が多くないかららしい。
小梅ちゃんがお休み等でいないときは、他店の薬剤師さんが応援に来てくれている。
そんな感じに、主に調剤室業務は、小梅ちゃん。
その他のフロア業務は、店長、次長、私の正社員三人と、ビューティー担当のパートさん一人と、一般のパートさんが三人、バイトが三人でこの店舗は回っている。
1
あなたにおすすめの小説
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完】経理部の女王様が落ちた先には
Bu-cha
恋愛
エブリスタにて恋愛トレンドランキング4位
高級なスーツ、高級な腕時計を身に付け
ピンヒールの音を響かせ歩く
“経理部の女王様”
そんな女王様が落ちた先にいたのは
虫1匹も殺せないような男だった・・・。
ベリーズカフェ総合ランキング4位
2022年上半期ベリーズカフェ総合ランキング53位
2022年下半期ベリーズカフェ総合ランキング44位
関連物語
『ソレは、脱がさないで』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高4位
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高2位
『大きなアナタと小さなわたしのちっぽけなプライド』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位
『初めてのベッドの上で珈琲を』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位
『“こだま”の森~FUJIメゾン・ビビ』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 17位
私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。
伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。
物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる