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5.お前が無事ならそれでいい。
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*
「さっきは社長が失礼なことを言ってすまなかった」
しげたん社長が帰られたあと、倉庫で在庫整理をしていると、本郷店長がコンパクトに折り畳んで数個重ねたオリコンを持って入ってきた。
「え!? い、いえ……」
確かにビックリはしたけれど、きっとしげたん社長も冗談で言っただけだと思うし、本郷店長が謝ることでもないと思う。
申し訳なさそうに言ってくる本郷店長に、こちらが恐縮してしまう。
「そうか。なら、いいんだが。やっぱり冗談でも、ああいう発言は気分悪くする社員もいるからな。社長にもそういう発言は控えてもらうように、俺からまた伝えとく」
「は、はい……」
私が作業を終えて事務室に戻ると、ちょうど次長の田中さんが休憩を取っていた。
「おっ、高倉ちゃんお疲れさん!」
「お疲れさまです」
次長は、ガツガツと大きめのお弁当からご飯を掻き込むように食べている。
これは、次長の奥さんの手作り弁当らしい。
「しげたん社長来はったとき、社長に絡まれたんやってな」
「絡まれた、というか、抜き打ちの接客チェックを受けたっていう感じですね……」
「でも、しげたん社長、高倉ちゃんのこと相当気に入ったみたいやったで?」
「そうなんですか……?」
確かに、良かったとは言ってもらえたけど……。
「ああ、親身になって高倉ちゃんなりにいろいろ考えてくれたって、喜んではったわ。なんやうちの息子の嫁にもらいたいとまで言うてたで?」
その瞬間、水分補給で口にしたペットボトルのお茶を、危うく吹き出しそうになった。
本郷店長の嫁の次は、社長の息子の嫁ですか!
っていうか……。
「社長って、息子さんいたんですね……」
「みたいやな。俺も今日初めて知ったわ」
まぁ、奥さんもいるみたいだし、息子さんがいること自体は、そんなに驚くほどのことでもないんだけどね。
「玉の輿狙いで、息子さんの嫁になるのもええかもしれへんで?」
クククと冗談めかして笑う次長。
「そんな、私には無理ですよ。私は平々凡々としたお相手で充分です」
そこで、倉庫へと続く扉から本郷店長が戻ってきて、思わず次長も私も口を慎んだ。
だけど、本郷店長は特にこちらを気に留める様子もなく、店長机に置いてあるパソコンに向かって何か作業を始めたようだった。
「ほな、高倉ちゃん。このあとレジ頑張ってな」
「はい。ありがとうございます。じゃあフロアの方に戻りますね」
次長には、きっと私が事務室を出るタイミングを逃したように見えたのだろう。
私は次長の言葉に背中を押されるようにして、事務室をあとにした。
*
しげたん社長の視察から五日が過ぎて、早くも三月が終わろうとしている。
なんだか、しげたん社長に“本郷店長の嫁に”だなんて言われたからか、あれから余計に意識してしまうようになってしまった。
まぁ、次長には“息子の嫁に”と言ってたみたいだし、特に深い意味はなかったんだろうけど。
意識してるのは、きっと私一人だけ。
本郷店長は、しげたん社長が帰られたあとに申し訳なかったと社長の代わりに謝ってきただけで、特に今までと大きく変わらなかったのだから。
本郷店長がお休みの今日は、私のシフトは早上がりで十六時までだった。
そのため今夜は、梨緒の姿で本郷店長と会う予定になっていた。
梨緒としての私の予定は、自分の本当のシフトをもとに改ざんしたウソシフトを本郷店長に教えている。
それほど頭のよくない私が、本当の私のシフトとウソシフトの二つを管理するのは、結構頭を使う。
これも自業自得なんだけれど。
お昼過ぎのピークを過ぎて、開店から居てくれてるパートさんから、閉店まで居てくれるパートさんへと、社員の顔ぶれも徐々に変化する。
「さっきは社長が失礼なことを言ってすまなかった」
しげたん社長が帰られたあと、倉庫で在庫整理をしていると、本郷店長がコンパクトに折り畳んで数個重ねたオリコンを持って入ってきた。
「え!? い、いえ……」
確かにビックリはしたけれど、きっとしげたん社長も冗談で言っただけだと思うし、本郷店長が謝ることでもないと思う。
申し訳なさそうに言ってくる本郷店長に、こちらが恐縮してしまう。
「そうか。なら、いいんだが。やっぱり冗談でも、ああいう発言は気分悪くする社員もいるからな。社長にもそういう発言は控えてもらうように、俺からまた伝えとく」
「は、はい……」
私が作業を終えて事務室に戻ると、ちょうど次長の田中さんが休憩を取っていた。
「おっ、高倉ちゃんお疲れさん!」
「お疲れさまです」
次長は、ガツガツと大きめのお弁当からご飯を掻き込むように食べている。
これは、次長の奥さんの手作り弁当らしい。
「しげたん社長来はったとき、社長に絡まれたんやってな」
「絡まれた、というか、抜き打ちの接客チェックを受けたっていう感じですね……」
「でも、しげたん社長、高倉ちゃんのこと相当気に入ったみたいやったで?」
「そうなんですか……?」
確かに、良かったとは言ってもらえたけど……。
「ああ、親身になって高倉ちゃんなりにいろいろ考えてくれたって、喜んではったわ。なんやうちの息子の嫁にもらいたいとまで言うてたで?」
その瞬間、水分補給で口にしたペットボトルのお茶を、危うく吹き出しそうになった。
本郷店長の嫁の次は、社長の息子の嫁ですか!
っていうか……。
「社長って、息子さんいたんですね……」
「みたいやな。俺も今日初めて知ったわ」
まぁ、奥さんもいるみたいだし、息子さんがいること自体は、そんなに驚くほどのことでもないんだけどね。
「玉の輿狙いで、息子さんの嫁になるのもええかもしれへんで?」
クククと冗談めかして笑う次長。
「そんな、私には無理ですよ。私は平々凡々としたお相手で充分です」
そこで、倉庫へと続く扉から本郷店長が戻ってきて、思わず次長も私も口を慎んだ。
だけど、本郷店長は特にこちらを気に留める様子もなく、店長机に置いてあるパソコンに向かって何か作業を始めたようだった。
「ほな、高倉ちゃん。このあとレジ頑張ってな」
「はい。ありがとうございます。じゃあフロアの方に戻りますね」
次長には、きっと私が事務室を出るタイミングを逃したように見えたのだろう。
私は次長の言葉に背中を押されるようにして、事務室をあとにした。
*
しげたん社長の視察から五日が過ぎて、早くも三月が終わろうとしている。
なんだか、しげたん社長に“本郷店長の嫁に”だなんて言われたからか、あれから余計に意識してしまうようになってしまった。
まぁ、次長には“息子の嫁に”と言ってたみたいだし、特に深い意味はなかったんだろうけど。
意識してるのは、きっと私一人だけ。
本郷店長は、しげたん社長が帰られたあとに申し訳なかったと社長の代わりに謝ってきただけで、特に今までと大きく変わらなかったのだから。
本郷店長がお休みの今日は、私のシフトは早上がりで十六時までだった。
そのため今夜は、梨緒の姿で本郷店長と会う予定になっていた。
梨緒としての私の予定は、自分の本当のシフトをもとに改ざんしたウソシフトを本郷店長に教えている。
それほど頭のよくない私が、本当の私のシフトとウソシフトの二つを管理するのは、結構頭を使う。
これも自業自得なんだけれど。
お昼過ぎのピークを過ぎて、開店から居てくれてるパートさんから、閉店まで居てくれるパートさんへと、社員の顔ぶれも徐々に変化する。
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