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5.お前が無事ならそれでいい。
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特に大きな問題もなく、売り場の商品の前出しをしながら、十六時が近づいて来たときだった。
切羽詰まったような表情で、次長の田中さんが私のもとへと駆け足でやって来た。
「高倉ちゃん、今日このあと空いてる?」
「え……?」
「いや、な。いつも十六時から入ってもろとるバイトの小谷くんやねんけどな、学校の都合で十八時にしか来られへんようになったらしいねん」
「え、そうなんですか!?」
小谷くんは、いつも夕方から閉店まで週五日入ってくれている大学生だ。
今日、私が抜けたあとのフロア側のシフトは、次長と小谷くんともう一人のパートさんといった、人数カツカツの状態だ。
調剤室側まで見ると、小梅ちゃんも閉店までいるメンバーには入っているけれど、夕方の時間帯は午後診の患者様の処方箋が混み合って忙しいらしく、フロア側の業務まではお願いしづらい。
さらに、閉店の二十時にかけて再びお客様のピークを迎えることを考えると、十六時からの二時間、小谷くんがいないのは痛手が大き過ぎる。
「せやねん。夕方のピークが十八時までに来てしもたら、俺ら二人でなんて回らへんわ。せっかく今日は高倉ちゃん、はよ帰れるのにこんなこと頼むのも酷やねんけどな、少しだけ手伝ってもらえへんやろうか?」
本郷店長との約束は、十八時にここの店舗と梨緒の働くお店のちょうど中間にある以前も待ち合わせた駅前だ。
街にもなってるその駅前で待ち合わせて、夜ご飯でも行こうかっていう話になっていたんだ。
小谷くんのシフトの穴埋めをしていたら、確実に遅刻してしまう。
「もう、予定入れてしもうとるならええで。そんときは、どうなるかわからへんけど、俺らで何とかしようと思うし……」
いつもの私なら、即答して残ることにしている。
だけど、今日は即答して残ると言えなかった。
だからなのか、不自然に空いた間に、次長が申し訳なさそうにそう言ってくれた。
次長の困った表情を見て、ハッと気づく。
私が、今、一瞬迷っていたことに。
残業をするんじゃなくて、早く梨緒の姿で本郷店長に会いたいと思っている自分が少しでもいたことに。
普通に考えれば、仕事や日常生活といった、高倉奈緒としての生活を優先させるべきなのだ。
いつまでも梨緒の姿で本郷店長に会うことを続けられるわけがないのだから。
「……いえ、大丈夫です。小谷くんは十六時からメインレジでしたよね? 私が入ります」
十六時前。
急いで事務室へと戻り、カバンをあさる。
時間通りに行けなくなってしまった以上、本郷店長に連絡しとかなければならない。
「……ない」
ところが朝、ちゃんと入れたと思っていたのに、私のスマホがカバンの中に入っていなかったのだ。
本郷店長への連絡手段は、常に携帯のメール機能を使用している。
それなのにスマホがないなんて、どうやって本郷店長に連絡したらいいのだろう……?
今日は空席の店長机に目を向ける。
そこにヒラリと貼られた緊急連絡先。
その欄には、本郷店長の携帯電話の番号が書かれている。
梨緒の姿でも、一応教えてもらっている電話番号。
だけど、私のスマホの番号は高倉奈緒として本郷店長に提出した番号と同じだから、携帯では電話はしない主義だと言い訳して、一度もかけたことはない。
切羽詰まったような表情で、次長の田中さんが私のもとへと駆け足でやって来た。
「高倉ちゃん、今日このあと空いてる?」
「え……?」
「いや、な。いつも十六時から入ってもろとるバイトの小谷くんやねんけどな、学校の都合で十八時にしか来られへんようになったらしいねん」
「え、そうなんですか!?」
小谷くんは、いつも夕方から閉店まで週五日入ってくれている大学生だ。
今日、私が抜けたあとのフロア側のシフトは、次長と小谷くんともう一人のパートさんといった、人数カツカツの状態だ。
調剤室側まで見ると、小梅ちゃんも閉店までいるメンバーには入っているけれど、夕方の時間帯は午後診の患者様の処方箋が混み合って忙しいらしく、フロア側の業務まではお願いしづらい。
さらに、閉店の二十時にかけて再びお客様のピークを迎えることを考えると、十六時からの二時間、小谷くんがいないのは痛手が大き過ぎる。
「せやねん。夕方のピークが十八時までに来てしもたら、俺ら二人でなんて回らへんわ。せっかく今日は高倉ちゃん、はよ帰れるのにこんなこと頼むのも酷やねんけどな、少しだけ手伝ってもらえへんやろうか?」
本郷店長との約束は、十八時にここの店舗と梨緒の働くお店のちょうど中間にある以前も待ち合わせた駅前だ。
街にもなってるその駅前で待ち合わせて、夜ご飯でも行こうかっていう話になっていたんだ。
小谷くんのシフトの穴埋めをしていたら、確実に遅刻してしまう。
「もう、予定入れてしもうとるならええで。そんときは、どうなるかわからへんけど、俺らで何とかしようと思うし……」
いつもの私なら、即答して残ることにしている。
だけど、今日は即答して残ると言えなかった。
だからなのか、不自然に空いた間に、次長が申し訳なさそうにそう言ってくれた。
次長の困った表情を見て、ハッと気づく。
私が、今、一瞬迷っていたことに。
残業をするんじゃなくて、早く梨緒の姿で本郷店長に会いたいと思っている自分が少しでもいたことに。
普通に考えれば、仕事や日常生活といった、高倉奈緒としての生活を優先させるべきなのだ。
いつまでも梨緒の姿で本郷店長に会うことを続けられるわけがないのだから。
「……いえ、大丈夫です。小谷くんは十六時からメインレジでしたよね? 私が入ります」
十六時前。
急いで事務室へと戻り、カバンをあさる。
時間通りに行けなくなってしまった以上、本郷店長に連絡しとかなければならない。
「……ない」
ところが朝、ちゃんと入れたと思っていたのに、私のスマホがカバンの中に入っていなかったのだ。
本郷店長への連絡手段は、常に携帯のメール機能を使用している。
それなのにスマホがないなんて、どうやって本郷店長に連絡したらいいのだろう……?
今日は空席の店長机に目を向ける。
そこにヒラリと貼られた緊急連絡先。
その欄には、本郷店長の携帯電話の番号が書かれている。
梨緒の姿でも、一応教えてもらっている電話番号。
だけど、私のスマホの番号は高倉奈緒として本郷店長に提出した番号と同じだから、携帯では電話はしない主義だと言い訳して、一度もかけたことはない。
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