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6.敵意を向けられても困るのですが。
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本郷店長と夜の水族館に行く日がやって来た。
その日の仕事が終わると、私は海の近くの駅まで来ていた。
この日、本郷店長よりも一時間早く上がった私は、一時間早くついた待ち合わせの駅で、梨緒に化けていく。
だんだん、このメイクにも慣れてきたような気がする。
鏡に映るのは、栗色のウェーブのロングヘアに、アイラインやつけまつ毛をきっちりと施した、梨緒の姿の私。
梨緒がしてくれるほど上手くはないけど、私から見てもこの顔は、梨緒のものだ。
服は今回も梨緒から借りたロングスカートと、首もとが大きく開いたブラウスを着る。
これらの道具は、職場の店舗の近くの駅のロッカーに突っ込んでいたものだ。
今日はリバーシブルのカバンで通勤していたため、そのカバンを裏返す。
そして、高倉奈緒としてさっきまで着ていた服はそれほどかさばらなかったので、カバンの奥底に眠らせた。
これで、準備完了。
ドキドキしながら待ち合わせの場所に立ったときには、約束の時間の十分前だった。
「悪い。待たせたな」
約束の時間の五分前に、本郷店長は私の目の前に現れた。
「いえ、早く着いただけなので、大丈夫です」
「そうか。じゃあ、行くか」
その瞬間、本郷店長の大きな手が、私の指を絡め取る。
「あ、あの……」
「あ? 何だ」
「そ、その、手……」
「手がどうかしたか?」
天然なのかわざとやってるのか、私と手を繋いだまま、その手を顔の近くまで持ってきて、本郷店長はまじまじと見つめる。
「な、なんでもないです」
何だか余計に恥ずかしくなってしまって、私はうつむいてしまった。
「ハハっ。悪い悪い、ちょっとからかっただけだよ。いいだろ? 仮にもお前と付き合ってんだし。ってか、いつも手繋いでるじゃねぇか」
確かにその通りなんだけど、私が本郷店長を完全に意識しだしてしまったからなのか、今日はいつもみたいに平常心を保つのが難しい。
本郷店長は悪びれもなくおかしげに笑うと、私の手を引いて歩き始めた。
歩いて五分弱でたどり着いた、水族館。
先週からこの水族館では、春のシーズン企画として、館内のライトアップがされている。
ほんのりと薄暗い館内。
青色にライトアップされた水槽内を泳ぐ魚たち。
「わぁぁ……!」
幻想的なその姿に、思わず感嘆の声が漏れてしまう。
「気に入ったか?」
「え、は、はい。夜の水族館は初めて来たんですけど、すごく素敵ですね」
「なんとなくお前の雰囲気から、こういうところ好きそうだなと思って連れてきたけど、正解だったな」
「……はい。って、うわっ」
本郷店長から再び水槽内へと視線を戻すと、目の前をまるで貼り付くように泳いでいく魚。
あまりにドアップで見えたその光景に、思わずあとずさると、トンと私の肩は優しく抱き留められた。
「おっと、危ねぇ。今のは、エイだな。かなり大きい奴だったな」
「そ、そそそそう、ですね……」
私の背中から感じる、本郷店長の温もり。
本郷店長は、ただ驚いてフラついた私を支えてくれただけ。
だから、これ自体は事故みたいなものなのに、私の背中に触れる本郷店長の熱にドキドキが加速する。
本郷店長と夜の水族館に行く日がやって来た。
その日の仕事が終わると、私は海の近くの駅まで来ていた。
この日、本郷店長よりも一時間早く上がった私は、一時間早くついた待ち合わせの駅で、梨緒に化けていく。
だんだん、このメイクにも慣れてきたような気がする。
鏡に映るのは、栗色のウェーブのロングヘアに、アイラインやつけまつ毛をきっちりと施した、梨緒の姿の私。
梨緒がしてくれるほど上手くはないけど、私から見てもこの顔は、梨緒のものだ。
服は今回も梨緒から借りたロングスカートと、首もとが大きく開いたブラウスを着る。
これらの道具は、職場の店舗の近くの駅のロッカーに突っ込んでいたものだ。
今日はリバーシブルのカバンで通勤していたため、そのカバンを裏返す。
そして、高倉奈緒としてさっきまで着ていた服はそれほどかさばらなかったので、カバンの奥底に眠らせた。
これで、準備完了。
ドキドキしながら待ち合わせの場所に立ったときには、約束の時間の十分前だった。
「悪い。待たせたな」
約束の時間の五分前に、本郷店長は私の目の前に現れた。
「いえ、早く着いただけなので、大丈夫です」
「そうか。じゃあ、行くか」
その瞬間、本郷店長の大きな手が、私の指を絡め取る。
「あ、あの……」
「あ? 何だ」
「そ、その、手……」
「手がどうかしたか?」
天然なのかわざとやってるのか、私と手を繋いだまま、その手を顔の近くまで持ってきて、本郷店長はまじまじと見つめる。
「な、なんでもないです」
何だか余計に恥ずかしくなってしまって、私はうつむいてしまった。
「ハハっ。悪い悪い、ちょっとからかっただけだよ。いいだろ? 仮にもお前と付き合ってんだし。ってか、いつも手繋いでるじゃねぇか」
確かにその通りなんだけど、私が本郷店長を完全に意識しだしてしまったからなのか、今日はいつもみたいに平常心を保つのが難しい。
本郷店長は悪びれもなくおかしげに笑うと、私の手を引いて歩き始めた。
歩いて五分弱でたどり着いた、水族館。
先週からこの水族館では、春のシーズン企画として、館内のライトアップがされている。
ほんのりと薄暗い館内。
青色にライトアップされた水槽内を泳ぐ魚たち。
「わぁぁ……!」
幻想的なその姿に、思わず感嘆の声が漏れてしまう。
「気に入ったか?」
「え、は、はい。夜の水族館は初めて来たんですけど、すごく素敵ですね」
「なんとなくお前の雰囲気から、こういうところ好きそうだなと思って連れてきたけど、正解だったな」
「……はい。って、うわっ」
本郷店長から再び水槽内へと視線を戻すと、目の前をまるで貼り付くように泳いでいく魚。
あまりにドアップで見えたその光景に、思わずあとずさると、トンと私の肩は優しく抱き留められた。
「おっと、危ねぇ。今のは、エイだな。かなり大きい奴だったな」
「そ、そそそそう、ですね……」
私の背中から感じる、本郷店長の温もり。
本郷店長は、ただ驚いてフラついた私を支えてくれただけ。
だから、これ自体は事故みたいなものなのに、私の背中に触れる本郷店長の熱にドキドキが加速する。
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